少年サッカーの指導に携わるようになって、10年以上が経ちます。
プロサッカー選手を目指していた大学生時代、大怪我のリハビリをしながらはじめたサッカーコーチのアルバイト、幼稚園児、小学生のサッカー大会を見たときに驚いた子どもたちへの怒声、罵声。かなり理不尽な指導がまかり通ってました。とても健全ではありませんでした。
いまもなお、理不尽な指導を見かけることが頻繁にあります。
理不尽な指導はどうやったら変えられるか、良い指導とはどんな指導かをたくさんの先輩指導者から学んできましたが、本からもたくさん学びました。
また、パパさんコーチからはどのように指導すれば良いかわからないという相談を受けることがあります。
「うちの子、全然上手くならないんです。どうすればよいですか?」という相談もよくあります。
今回は、そんな悩みを抱える人、少年サッカーに携わる人におすすめの本を15冊ご紹介します。
これらの本を読むことで、子どものサッカーの見方が変わります。
どんなスタンスで子どものサッカーを見れば良いのか、コーチの在り方、親としての在り方、そんなことを考えるきっかけになると思います。
【目次】
- 1.教えないスキル
- 2.サッカーを楽しむ心を育てて勝つ 京都精華学園高校のマネジメント術
- 3.僕らがサッカーボーイズだった頃(2)
- 4.「なんでシュートしないんだ!」では子供は育たない
- 5.サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質
- 6.競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか?
- 7.サッカーいい選手の考え方 個とチームを強くする30の方法
- 8.敗北のスポーツ学 セカンドキャリアに苦悩するアスリートの構造的問題と解決策
- 9.サッカーピラミッドの底辺から
- 10.子どもにサッカーの"本質"が伝わる本
- 11.ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする
- 12.セルジオ越後の「子育つ論」
- 13.パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方
- 14.アルゼンチンサッカーの思考力
- 15.スパイクを買いに
1.教えないスキル
スペインの名門ビジャレアルの育成年代の指導に精通する佐伯さんの著書。
世界トップレベルの育成はどのようなものか、どんな指導をしているのかがリアルに描かれています。日本の少年サッカーに関わる人はとても学びが多い一冊です。
私自身の指導を振り返ってみましょう。 試合中、わたし自身が思っていたのと違うアクションをとった選手に対し、ほぼ何も考えず声がけをしていました。 「なんで今の右出すの?左じゃないの?」 「見えなかったの?左がフリーじゃない」 そこには意図もなければ意識もありません。なぜ自分がその言葉をかけているのか。なぜ左でなければいけないのか。その選手が判断した右へのパスが、どうしてダメだったのか、わたしのメッセージに含まれる意図は皆無でした。 そんなことに気づかないまま、長年指導してきたことに気づかされるたびに、顔から火が出るような思いでした。 本当に恥ずかしかったけれど、そのたびに「いや、今この瞬間は痛みを伴うけれど、気づいてよかったのだ」と自分に言い聞かせました。
「教えないスキル」と「ふりかえり文化」が日本サッカーを変える
2.サッカーを楽しむ心を育てて勝つ 京都精華学園高校のマネジメント術
女子サッカー界に一石を投じる越智さんの著書。
ひたむきで、まっすぐな女子サッカーの子たちって、理不尽な指導も本当に一生懸命やってしまうんですよね。日本女子サッカーが世界一になった実績はとても誇れるものですが、ここまでくるのにとてもとても多くの犠牲が、不要な犠牲があったと思います。
サッカーはもっと楽しくやっていい!楽しみながら上手くなる!この本は女子サッカーのみならず、少年サッカーに携わる人も必読です。
子どもたちに「今日の部活、行きたくないな」「ダルいな」と思わせたら、指導者の負けです。これは、声を大にして言いたいです。練習の雰囲気が悪いのを「やる気がない」「たるんでいる」などと言って、子どもたちに責任転嫁するのは最悪。それは指導者の雰囲気作りが下手なだけなのです。サッカーを楽しむ心を育てて勝つ。魅力溢れるチームの作り方

3.僕らがサッカーボーイズだった頃(2)
日本を代表するサッカー選手たちの少年時代を取材した本。
どんな少年時代を送ってプロになったのか、どんな家庭環境だったのか、どんな教育を受けてきたのか、どんな指導で上手くなったのか。とても興味深いストーリー満載です。多くのヒントが得られると思います。
「僕は怒られれば怒られるほどやらんようになるし、コーチもそれを知っていたんで、最終的にはあまりしつこくは注意されなくなった気がしますね。」と言う柿谷選手。 柿谷少年をプロの世界に導いたコーチたちも、素晴らしいですが、親御さんはどんなスタンスで見ていたのでしょうか。 コーチはこう言いました。 お父さんとお母さんが、曜一朗の様子を理解しながら、大らかに接してくれていたから、彼の場所があったのかな。中学生年代はそういう環境がすごく大事ですよね。 才能のある子どもは、親からもコーチからも期待されて、いろいろと詰め込まれてしまいがちです。多感な時期に受ける過度なプレッシャーによって潰れてしまう子どもはたくさんいます。
柿谷曜一朗の少年時代のエピソードがすごかった。天才を育んだ大人たちの話。
4.「なんでシュートしないんだ!」では子供は育たない
サッカー解説でお馴染みの宮澤ミシェルさんの著書。
子どものサッカー環境を変えないといけないと、その現場を変える為に様々なアプローチをされています。子どもにどうやってサッカーを教えるのか、いま何が問題で、どう変えないといけないのか、とてもわかりやすく書かれています。
社会がマニュアル化する中で、本来、規則性から程遠いサッカーの指導までもがマニュアル化してきました。この練習メニューが流行っている、このシステムが最先端だ、トラップはこうしなさい…。本気で取り組む遊びであるはずのサッカーが詰め込み教育になってしまい、子どもたちが受け身になってしまっているのです。礼儀正しいのはいいことですが、わたしの少年時代を思えば、ちょっと行き過ぎかな、と思うことが多々あります。これは子どもたちが無意識のうちに、大人の期待に答えようとしているからだと思います。
【保存版】サッカー指導者・コーチが絶対に読むべきおすすめの10冊
5.サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質
ヴェルディの黄金時代を支えた天才、菊原志郎さんと、楽天大学学長の仲山さんの著書。サッカーの天才とビジネスのプロが、育成の本質をテーマに語られているのですが、子どもが成長する上でどのようなプロセスを経るのか、どんなアプローチが相応しいのかが学べる本です。
サッカーがうまくなりたいという子ども自身の意志、気持ちが必要です。その上で一番大事なのは、サッカーに夢中になるということです。夢中になることができれば、つらいことや苦しいことがあっても乗り越えられます。 夢中になる為には、サッカーの面白さ、楽しみ方を知る必要があります。サッカーっていろいろな楽しみ方ができるスポーツなんです。
サッカーは教えるのではなく、夢中にさせるもの
6.競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか?
なぜ日本はサッカーで世界に勝てないのか? なぜ個人競技で勝てるのに団体スポーツ、とりわけ相手と肉体がぶつかり合いながら闘うスポーツでは勝てないのか? サッカーとはどのようなスポーツなのか。という問いがクリアになりました。この本は、どこかでじっくりと深掘りながら紹介しますが、サッカーの育成に携わる人には強くお勧めしたい。
彼らは「影響を与えるための技術」が重要であると無意識に捉えているため、「影響」に軸を置いてトレーニングを重ねている。ゲームの目的を達成するために、技術は”最”重要ではないことを知っているのだ。一方、日本サッカーは「技術を高めるために技術を高めている」ように思えてならない…
7.サッカーいい選手の考え方 個とチームを強くする30の方法
鬼木さんがトルコにいるときに何度かオンラインでお話を聞かせてもらっていたのですが、「海外の選手たちを間近で見ていると、僕たち日本人のサッカーの見方、やり方がぜんぜん違うんです。なぜだろうと思って色々調べていたら色んなことがクリアになってきました」と、サッカー以外の僕らと”彼ら”の話を長い時間していて、それが結局サッカーにつながるという本質的な話をされていたのが懐かしいのですが、この本は日本人のサッカーの捉え方を変えると思います。大げさでなくサッカー選手はもちろん、指導者必読の一冊です。

- 作者:鬼木 祐輔
- 出版社:池田書店
- 発売日: 2021年10月21日頃
8.敗北のスポーツ学 セカンドキャリアに苦悩するアスリートの構造的問題と解決策
元Jリーガーで、現在はクリアソン新宿のブランド戦略に携わる井筒陸也さんの著書「敗北のスポーツ学」。タイトルの通り、サッカー選手のセカンドキャリア、スポーツの構造問題がメインテーマですが、幼少期のサッカーが人生に与える影響など、育成に携わる方にもぜひ読んでいただきたいと思いました。もし、子供がアスリートを目指すなら避けては通れないリアルが記されています。
人格より先にポジションが決まり、そのポジションに与えられたキャラクター(例えばFWだとエゴイストとか、DFだとリーダーとか)を引き受けることになります。それが逆方向的に、人格形成に影響を及ぼす
9.サッカーピラミッドの底辺から
サッカーコーチ業、指導者業の苦悩が赤裸々に綴られています。ジュニアサッカークラブの運営がいかに困難なものか、現場で情熱的に活動される指導者の方々のインタビューが多数掲載されており、それぞれのサッカーへの想い、子供たちへの想い、そして取り組みが紹介されています。この本を読むと現場の指導者の方やクラブを見る目が変わるかもしれません。
日本全国に俺みたいなのがいて、サッカー好きのおじさんがいて、その人たちが試行錯誤してそれが日本のサッカーを支えてきたと少しは自負している。なんだか人生の中心にサッカーがあったよなあ。なんで、『サッカーマガジン』を創刊号から読み始めたのか。なんでだろうね。でも、サッカーが一番楽しい。サッカーっていいよね、というしか言いようがないよね。
10.子どもにサッカーの"本質"が伝わる本
ブラジルと日本の育成を知るマリーニョさんが日本の育成年代の課題と、求められる育成を記してくれました。ブラジルで才能が生まれやすい理由、日本でいかに才能が潰されてしまっているかもわかる一冊です。
都市部では、子供だけでサッカーをする、野球をするという光景はほとんど見られられなくなりました。大人がいる環境で子供が遊ぶ。 こうなると自然と大人が指示を出すようになり、子供は指示を守ろうとするようになります。これでは精神が受け身になってしまって、自分で戦術やシステムを編みだそうとする姿勢は生まれません。 だからといって、いますぐ大らかだった時代に戻そうとするのも無理な話。となると大人があまり口を出さず、見守るということが大事になってくると思います。 指導者は自分が学んだことを試したくなるものですが、そうした気持ちをグッとこらえて見守ることが大事なのです。 子供たちが自分で遊びを考える、その中でルールを創り出していく。見守ることで成長を促してほしいのです。
【保存版】サッカー指導者・コーチが絶対に読むべきおすすめの10冊

- 作者:A・P・マリーニョ+笠野英弘
- 出版社:東邦出版
- 発売日: 2019年04月25日頃
11.ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする
サッカー大国ドイツ。やはり育成も世界トップレベルだということがよくわかる一冊でした。ドイツの育成に携わる中野さんが日本の問題とポテンシャルについてわかりやすく書いてくれています。日本の指導がいかに時代遅れであるか痛感する内容で、ドイツの育成の良い部分を取り入れることができれば日本はまだまだ良くなると思いました。指導におけるヒントもたくさん。
成長段階にある子供にとって、負ける事は大きな問題ではありません。負けたことから何を学び、それを次にどう活かしていくかが大事なのです。 だからといって、指導者や保護者だけが「次は勝つぞ!」と熱くなるのも問題です。例えば、試合に負けても全然悔しそうにしない子がいると、「悔しくないのか!」と怒ってしまう大人は少なくないと思います。 試合に負けても全く悔しくないのは、そもそも本気でその試合に向き合っていないからでしょう。もしかしたら、まだそこまでサッカーにのめり込んでいないのかもしれません。 そんな子が負けて悔しがらないからといって、「なんで悔しくないんだ!」と怒るのは筋違いですし、「もっとサッカーを好きになれ!」などと強制するのはもっと意味がありません。 どうすれば子供が、もっと情熱を注いでサッカーと向き合おうとするのか。それはサッカーの魅力を真正面からずっと伝え続けていくことだと思います。
子供にサッカーを教える前に読んでおくべき5冊
12.セルジオ越後の「子育つ論」
辛口で有名なセルジオ越後さんですが、私は日本のサッカー文化を育んだとても偉大な指導者だと思っています。この本はかなり前に出ている本で、いまはなかなか手に入らないですが、サッカー指導の本質、原点が記されています。5回くらい読みました。
私がサッカー教室で指導するとき、必ずしも全員をサッカー好きの優秀な選手に育て上げようとは思いません。教えるのは、聞きにくる子どもだけでいいと思っています。 聞こうとしない子に、「なんでそっちを見てるんだ」と怒ったり、「前を向いて、行儀よくしていなさい」などと強制する必要はないと思います。 子どもは、いったん興味を持ったら、もうしつこいことこの上ない。そうなれば、多少きつく教えたり、ときにはしごいても、全部プラスになる。 だから、聞きにきた子には「教える」、聞きにこない子とは「遊ぶ」。 これを原則にしています。釣りと同じで、針にかかるまで、興味を持つまで大人が待ってあげることが、小学生の段階ではいちばん大切だと思います。
子供にサッカーを教える前に読んでおくべき5冊
13.パッション 新世界を生き抜く子どもの育て方
日本の育成年代のサッカーの課題と改善方法が学べる一冊です。
サッカーをしている子どもの保護者の方々が大絶賛している本で、あるママさんはダメな指導がどのようなものかよくわかるようになったと言っていました。それだけわかりやすく書かれています。
「戦力が同じ2つのチームがあって、毎月1試合をするとしよう。Aはレギュラーしか出さない。Bは全員を出す。1年後どちらのチームが勝つと思う?」 「正解はBなんだ。驚いた人も多いんじゃないかな。うまい選手を出す方が勝てるんじゃないかって思うよね。もちろん、最初の2、3ヶ月はAが勝つよ。でも、3ヶ月、4ヶ月、半年と経つ頃には、AとBの力関係は逆転していくんだ。どうしてだろう」 「全員を出すBは、うまくなかった子たちが試合に出ることによって成長していく。チーム内でも底上げが進めば、うまい選手達も刺激になる。練習の質が高くなるんだ」 「Aはうまい選手しか試合に出ないから、レギュラーとそれ以外の選手の差は開く一方で、チームの雰囲気も悪くなる」
全員を出すことで、チームが成長する。そんな想いがサッカー文化を育んでいく。
14.アルゼンチンサッカーの思考力
アルゼンチンサッカーに精通した日本人といえば亘さん。名門ボカジュニアーズでプレー経験も持つ日本では貴重な方。アルゼンチンのサッカー文化が詳しく書かれており、日本の育成年代の指導のヒントもたくさん詰まっています。
アルゼンチンでは若年層を担当する指導者こそ、多くの引き出しを持った優秀なコーチであるべきだと考えられています。というのも、若い子は安い値段で契約できる。安く買ったダイヤの原石を将来、高く売るためには、素材が柔軟なうちに才能を引き出さなければなりません。100万円で契約した13歳の少年が7年後、3億で売れたら、彼を連れてきたスカウトと育成部の指導者は莫大な利益をクラブにもたらしたことになります。
15.スパイクを買いに
最後にご紹介するのは、少年サッカーをテーマにした小説です。
少年サッカーの現場の様子がとてもリアルで、徹底して取材されたことがわかりました。主にパパ目線でグッとくる内容ですが、この小説を読めば少年サッカーのリアルがよくわかります。面白くてすらすら読めます。
「今日のグラウンドにもいたでしょ。サッカーをするのは子供なのに、自分が夢中になって叫んでいる親が。ここへ蹴れだの、あそこにポジションをとれだの、言ってる輩 が。それを教えてしまったら子供のためにならない、というのが彼らにはわからない。」 「母親の場合は難しいですけど、父親で叫んでいるようなのがいたら、サッカーに誘い込むんです。大抵そういう男は、自分も以前はスポーツをちょっと 齧っている場合が多い。でも今は遠く離れている。サッカーを経験していたとしても、時代がちがう。」
サッカーは教える前に、一緒に遊ぶことから始めるもの 〜はらだみずき著「スパイクを買いに」を読んで〜
Kindle Unlimitedに契約すると、月額980円で200万冊読み放題となっており、サッカー系の本もかなりの数が読み放題になってますのでかなりおすすめです。
※料金はキャンペーンなどもやっているため詳細は下記をご確認ください
これまで子どものサッカーに携わる本は30冊近く読んできました。
その中で厳選した10冊です。
どうすれば子どもがサッカーを好きなるのか、もっと上手くなるのか悩んでいる人。
少年サッカーの環境に疑問を感じている人。
どうすれば少年サッカーはもっとよくなるのか考えている人。
そんな人たちにぜひ読んでいただければと思っています。