サッカー指導者の岩瀬健さん(大分トリニータヘッドコーチ※2023年6月時点)の著書「サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に」より引用↓
理論をピッチへ持ち込んで実践するのは当然ですが、問いたいのはその持ち込み方です。無暗に映像を使ったり、戦術ボードを使ったりと、最近は無意識のうちに選手とのコミュニケーションが、選手主導よりも指導者主導になることが多く、そうした指導者の机上での考えを言語化することが良い指導者の条件になっているような気がします。
しかし、指導者と同じようなロジックを欲しがる選手は、指導者が考えるよりも少ない。指導者の本来の役割は、選手を成長させること、チームを勝たせることです。
指導者が机上で試行錯誤を繰り返した自分の理論をそのままピッチへ持ち込んでしまうのは、もったいないと言わざるを得ません。
とことん理論を追求した上でピッチの中で伝えるのはコツ程度で十分です。自分がインプットする情報と、選手へアウトプットする情報が同じになってしまうような、言語化によるアンバランスな指導が昨今は増えているのではないかと感じます。
- 作者:岩瀬健/清水英斗
- 出版社:カンゼン
- 発売日: 2022年06月07日頃
岩瀬さんが見ている世界というのは、育成年代でも日本のトップレベルに近いところです。この話も、恐らくそんな現場の指導現場を見てのことだと思うと、指導というのは難しいなと思うのです。
どのカテゴリーにも経験の量を問わず、良い指導者はいますが、共通するのは本質を見失わず、選手主導で指導者がバランスを取れる、取ろうとする姿勢があるように思います。
勉強すればするほど、頭でっかちになってバランスが取りにくくなります。でも良い指導者というのは良い学習者でもあるように思います。
良い学習ができなければ指導者主体の指導にいつの間にか変わってしまいます。学習しない指導者、学習をやめた指導者にその傾向が強いように思いますが、良い学習ができない指導者も、その権力を悪用しがちなのではないかと思います。
指導というのは簡単ではありません。色んな個性をどのように伸ばしていくか、そこに答えはありません。だからこそ理論に頼ってしまう。偏重してしまうのもわかるからです。
歳を重ねれば、誰しも何かの指導者になる可能性があります。
私たちはよき学習者であり続けなければなりません。岩瀬さんの著書はそんな指導の原点を思い出させてくれました。また、現場のリアルが詰まっている内容でもあります。
サッカーに限らず、スポーツ指導に携わる方にぜひ読んでいただきたい本です。
- 作者:岩瀬健/清水英斗
- 出版社:カンゼン
- 発売日: 2022年06月07日頃
- 作者:Leo the football/木崎 伸也
- 出版社:KADOKAWA
- 発売日: 2023年06月02日