中村憲剛さんと佐藤寿人さんの対談本の一部をご紹介させていただきます。
素敵な内容が散りばめられているので、当ブログのテーマにマッチする面白い箇所を引用させていただきます。
第4章「なぜ日本はストライカーが育たない?」より↓
寿人
パサーのどの足にボールが入ったら出てくるか、というのはだいたいわかるもので、僕はそこばかりを見ていましたね。出てこない状態の時に走っても意味がないので。
憲剛
出し手が蹴れない状態の時は、FWは当然動き出せない。だから「出せる」という合図をわかりやすくするために、僕はしっかり止めることにこだわっていました。
ーーこれは来るというタイミングで走っても、ボールが出てこない時もありますよね。
寿人
たぶん、しっかりと止められていないんでしょうね。止められていないから、FWの動きを見れていないんです。僕はずっと出し手に要求していたのは、1回で蹴れるところにボールを止めてくれということ。言い続けることで、止められなかった選手が止められるようになるんです。その意味では、ストライカーが出し手を育てるということはあると思います。
憲剛
僕はジュニーニョに育ててもらいました。めちゃめちゃ言われましたから。なんで前を見ないのか、見れただろ、逃すなと。多少無理でもいいから出せ、とも言われました。
寿人
日本人って、ミスしたくないプレーが多いじゃないですか。でも、海外の選手はトライの数が多い。一発のパスで通っちゃえば、それで1点でしょと。
- 作者:中村 憲剛/佐藤 寿人
- 出版社:集英社
- 発売日: 2022年11月14日頃
ボールを止められていないから、前が見えない
大学時代、風間八宏氏から指導を受けた時、センターバックをやっていた私は口酸っぱく言われていたことがあります。
「まずゴールに一番近いところを見ろ、低くて速いロングボールでFWに刺せ。ボールがちゃんと止まらないと見えないだろ。トップを見て、出せなきゃトップ下、つけられなきゃボランチかサイドにボールを動かせ。」
中村憲剛さんと佐藤寿人さんが話していることは近い内容だと思います。風間さんがメディアでも止める蹴るの重要性を伝え続けていますが、これはサッカーの本質的なことなのだと思います。
ボールが止められないと、ストライカーにボールを供給できない。ストライカーもボールを的確に要求できないと自分を育てられないと。なかなか深い話だと思います。
日本人がミスしたくないプレーが多い理由
これは教育文化でもあると思います。失敗を嫌う大人が、子どもの失敗に寛容になれず、トライのハードルを上げてしまう。自分自身もそんな環境で生きてきたし、これはサッカーの指導現場でも未だに多くの場合そうだと思います。
日本で、外国人のチーム(在日の南米出身者)の一員として、日本人のチームと試合する機会があったのですが、その時に感じたことを少し。
南米出身者で構成された私のチームは、ボール扱いはあまり上手くないし走れないけれど、肝を抑えたサッカーができるというか、ずる賢く、省エネで効率よくプレーできるメンバーが多かったです。
一方で、日本人のチームはボールは我々より上手く扱えるけれど、機械的な横パスと動きが多く、FWにボールを入れるタイミングを見出せずに、失うこと(奪える)が多く、やりやすかったのを覚えています。
形をすごく大事にします。思い返せば、自分もそんなサッカーを日本で多く経験したわけですが、日本人の傾向として「ミスを過剰に回避するプレー」というのはあるのかもしれません。
ジュニアサッカーの指導でもミスに不寛容な傾向が
育成年代の大会を観に行くと、やはりミスに不寛容な声が結構聞こえてきます。
これは指導者だけでなく、応援する保護者の声を聞いていても感じることです。
サッカーだけの問題ではなくて、日本のスポーツ全体、いや教育全般このような傾向があるのではないかと思います。
社会がトライの重要性を理解してきているように、教育も、我々大人もミスに寛容に、トライしやすい環境を作っていく必要があるように思います。
- 作者:中村 憲剛/佐藤 寿人
- 出版社:集英社
- 発売日: 2022年11月14日頃