長年、育成年代の指導に携わり、国内外のサッカーを取材しながら、何十冊ものサッカーに関する書籍を読んできました。とりわけ指導に関する本は30冊以上読んでいると思います。その中で育成年代のサッカー指導者、サカママ、あるいはパパさんへおすすめの本を10冊厳選してご紹介したいと思います。
学生コーチ、地元のサッカー少年団のボランティアコーチのみならず、長年コーチとして指導されている方にも読んでほしい本が含まれています。
これからご紹介する本に書かれている大切なことが、育成年代の指導者の多くがまだまだ実践できていないからです。
書籍の一部を引用してご紹介していきます。
【目次】
- 1.サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 才能が開花する環境のつくり方
- 2.教えないスキル
- 3.生きるためのサッカー ブラジル、札幌、神戸転がるボールを追いかけて
- 4.子どもにサッカーの"本質"が伝わる本
- 5.ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする
- 6.セルジオ越後の「子育つ論」
- 7.「蹴る・運ぶ・繋がる」を体系的に学ぶ ジュニアサッカートレーニング
- 8.「なんでシュートしないんだ!」では子供は育たない
- 9.サッカー上達の科学 いやでも巧くなるトレーニングメソッド
- 10.伝わる技術 力を引き出すコミュニケーション
- 11.スペイン流サッカーライセンス講座―「育成大国」の指導者が明かす考えるトレーニング理論
- サッカーコーチ必読の話題本
- キーパーコーチにはこの一冊
1.サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質 才能が開花する環境のつくり方
元祖天才ドリブラー菊原志郎さんがいかにして生まれたかという話、ヴェルディ最強時代の育成文化の話、菊原さんが指導した子どもたちがいかにしてサッカーが上手くなったか、指導する上で大切な本質が書かれています。
育成年代の指導に携わる方は必読の一冊!
ーー夢中で試行錯誤ができる子とできない子の違いって、何でしょう?
主体性ですかね。こういう練習は、子ども同士でやるのが一番楽しいんですよね。大人がいると、どうしても大人の視線やミスを気にして伸び伸び練習できないですから。
JFAアカデミーのときは、「今日は、コーチは何も言わないよ。失敗してもいいから自分たちで考えて、仲間と力を合わせていろいろやってごらん」という「ノーコーチングデー」を設定してました。
- 作者:菊原志郎/仲山進也
- 出版社:徳間書店
- 発売日: 2019年11月30日
2.教えないスキル
スペインの名門、ビジャレアルの育成年代に携わり、Jリーグの理事として貢献していただいた佐伯夕利子さんの著書。世界的に定評のあるビジャレアルの育成を踏まえて、日本の育成年代の課題をわかりやすく伝えてくれています。ご自身の失敗談と学びが赤裸々に記されていて、指導者には耳の痛い話も多いと思いますが、とても学び大き一冊です。
試合中、わたし自身が思っていたのと違うアクションをとった選手に対し、ほぼ何も考えず声がけをしていました。
「なんで今の右出すの?左じゃないの?」
「見えなかったの?左がフリーじゃない」
そこには意図もなければ意識もありません。なぜ自分がその言葉をかけているのか。なぜ左でなければいけないのか。その選手が判断した右へのパスが、どうしてダメだったのか、わたしのメッセージに含まれる意図は皆無でした。
そんなことに気づかないまま、長年指導してきたことに気づかされるたびに、顔から火が出るような思いでした。
本当に恥ずかしかったけれど、そのたびに「いや、今この瞬間は痛みを伴うけれど、気づいてよかったのだ」と自分に言い聞かせました。
3.生きるためのサッカー ブラジル、札幌、神戸転がるボールを追いかけて
サッカーの原点が書かれた一冊です。ブラジルサッカーで育ち、日本にサッカーを伝えた伝道者の一人、松原ネルソンさんのこの本は、情報過多な現代のサッカー指導者にぜひ読んでほしい一冊。
「ネルソンは、とにかく『教えない』。子供たちの前で、足技を少しだけ見せて楽しませる。それで盗ませるんだ。サッカーは押しつけられるもの、苦しいものじゃないというのが彼の方針。子どもと一緒に遊ぶことを大事にして、怒ったり、厳しく指導したりとかは絶対にしなかった。でも、遊びの中に技術の到達目標はちゃんと設定していたし、ゲームの勝敗にはこだわっていた。」
「試合中に気づいたことがあると、選手を手招きして耳元でワンポイントのアドバイスをささやき、良い発想をうながす。これは指導者として相当な力量だよ。」
4.子どもにサッカーの"本質"が伝わる本
サッカーの本質は"遊び"です。その遊び場が少なくなっている子どもたちは大人の管理下以外で自由に遊べる環境がなくなっています。だからこそ、コーチは教えすぎないことが大事なのです。
都市部では、子供だけでサッカーをする、野球をするという光景はほとんど見られられなくなりました。大人がいる環境で子供が遊ぶ。こうなると自然と大人が指示を出すようになり、子供は指示を守ろうとするようになります。これでは精神が受け身になってしまって、自分で戦術やシステムを編みだそうとする姿勢は生まれません。
だからといって、いますぐ大らかだった時代に戻そうとするのも無理な話。となると大人があまり口を出さず、見守るということが大事になってくると思います。
指導者は自分が学んだことを試したくなるものですが、そうした気持ちをグッとこらえて見守ることが大事なのです。
子供たちが自分で遊びを考える、その中でルールを創り出していく。見守ることで成長を促してほしいのです。
- 作者:A・P・マリーニョ+笠野英弘
- 出版社:東邦出版
- 発売日: 2019年04月25日
5.ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする
ドイツの育成年代の指導に携わる中野吉之伴さんの著書です。日本とドイツの育成年代の指導文化の違い、日本のサッカー指導の間違っていること、どうすればよりよくしていけるかがわかりやすく書かれています。
成長段階にある子供にとって、負ける事は大きな問題ではありません。負けたことから何を学び、それを次にどう活かしていくかが大事なのです。だからといって、指導者や保護者だけが「次は勝つぞ!」と熱くなるのも問題です。例えば、試合に負けても全然悔しそうにしない子がいると、「悔しくないのか!」と怒ってしまう大人は少なくないと思います。試合に負けても全く悔しくないのは、そもそも本気でその試合に向き合っていないからでしょう。もしかしたら、まだそこまでサッカーにのめり込んでいないのかもしれません。そんな子が負けて悔しがらないからといって、「なんで悔しくないんだ!」と怒るのは筋違いですし、「もっとサッカーを好きになれ!」などと強制するのはもっと意味がありません。どうすれば子供が、もっと情熱を注いでサッカーと向き合おうとするのか。それはサッカーの魅力を真正面からずっと伝え続けていくことだと思います。
- 作者:中野吉之伴
- 出版社:ナツメ社
- 発売日: 2017年11月15日
6.セルジオ越後の「子育つ論」
辛口のセルジオさんを毛嫌いする人もいますが、セルジオさんは日本のサッカー文化を作った偉大な一人です。この本を読めばそれがよくわかります。サッカー指導に携わる全ての人に読んで欲しい本です。
私がサッカー教室で指導するとき、必ずしも全員をサッカー好きの優秀な選手に育て上げようとは思いません。教えるのは、聞きにくる子どもだけでいいと思っています。聞こうとしない子に、「なんでそっちを見てるんだ」と怒ったり、「前を向いて、行儀よくしていなさい」などと強制する必要はないと思います。
子どもは、いったん興味を持ったら、もうしつこいことこの上ない。そうなれば、多少きつく教えたり、ときにはしごいても、全部プラスになる。
だから、聞きにきた子には「教える」、聞きにこない子とは「遊ぶ」。
これを原則にしています。
7.「蹴る・運ぶ・繋がる」を体系的に学ぶ ジュニアサッカートレーニング
サッカーが上手くなるために、ひたすらリフティングを練習したり、ドリブルを練習したり、キックを練習したりと何かに偏ってしまい、体系的にサッカーを学ぶ環境がないのは日本の課題であると提示した上で、サッカーにおいて「繋がる」ことの重要性がわかりやすく書かれています。
サッカーとは、仲間と協力しながらどう得点を奪うのか、が本質になります。仲間と協力しながらお互いに繋がり、賢く相手と駆け引きしながら、試合を進められる選手が、真の意味で、サッカーを楽しめる選手なのです。
サッカーは相手がいるスポーツであり、相手がどう対応してくるのか、よく見て、瞬時に判断するスポーツです。身につけなければいけないのは、目の前で起きたことに瞬時に反応し、相手がボールを奪おうとするアクションを回避するための技術であり、そのための動きであり、考え方です。毎回同じようなリズムのトレーニングを反復するのでは、それらを身につけることは難しいのです。
8.「なんでシュートしないんだ!」では子供は育たない
宮澤ミシェルさんは、子どもたちを指導する上で大切なことだけでなく、親が子どもにどのように関わっていくべきかということも書かれています。習い事で忙しい子どもたちの心はいつの間にか受け身になってしまいます。大切なのは子どもたちの心を見ることなのです。
社会がマニュアル化する中で、本来、規則性から程遠いサッカーの指導までもがマニュアル化してきました。この練習メニューが流行っている、このシステムが最先端だ、トラップはこうしなさい…。本気で取り組む遊びであるはずのサッカーが詰め込み教育になってしまい、子どもたちが受け身になってしまっているのです。礼儀正しいのはいいことですが、わたしの少年時代を思えば、ちょっと行き過ぎかな、と思うことが多々あります。これは子どもたちが無意識のうちに、大人の期待に答えようとしているからだと思います。
9.サッカー上達の科学 いやでも巧くなるトレーニングメソッド
本場スペインでサッカーの指導を学んだ村松さんならではの視点はとても興味深い。
日本人とスペイン人の性質の違いを踏まえて、どうのようにアプローチしてくべきなのかがわかりやすく書かれています。サッカーの奥深さがよくわかる一冊。
日本の子供たちが考えているのは、「勝つためにどうするか」よりも「巧くなるためにどうするか」。一方の指導者は、「勝つため」なら試合内容なんて関係なく、選手に罵声を浴びせてもいいと考えている人もいれば、「面白い(いい)サッカーをするため」の戦術を考えることに没頭してしまう人もいて両極端です。対照的にスペイン人にとっての戦術やスタイルは、あくまでも「勝つため」の手段でしかありません。
- 作者:村松 尚登
- 出版社:講談社
- 発売日: 2016年04月21日
10.伝わる技術 力を引き出すコミュニケーション
風間さんの指導は、選手の魅力を引き出して伸ばします。川崎フロンターレの躍進、名古屋グランパスの魅力的なサッカー。グランパスでは思うような結果が出ませんでしたが、多くの人を魅了しました。風間さんの言葉にはサッカーの本質、人間の本質が詰まっています。
ゴールするために何が必要かというと、当たり前ですが、まず、こちらがボールを持っていることです。ボールという武器を持っている間は、点を取る権利は味方にしかありません。ボールさえ持っていれば主導権を握れるのです。ではボールを持ち続けるには何が必要かというと、まずは個人の技術です。
それぞれがボールを奪われなければよいわけです。ボールを奪われないためには、相手に体を触らせないようにすること。それから相手に狙わせないこと。自分に見えて敵に見えないものを数多くつくっていくことです。
そのためにはパスもある、運ぶ技術もある。ただし徹底的に正確な技術を身につけ、さらに早く判断する習慣をつけることが必要になります。強いものにつぶされる、速いものにスピードで負ける、という概念をなくしていくのです。
- 作者:風間 八宏
- 出版社:講談社
- 発売日: 2018年02月15日
11.スペイン流サッカーライセンス講座―「育成大国」の指導者が明かす考えるトレーニング理論
目まぐるしくサッカーのトレンドは変わります。トップクラブは最新の理論を追いかけることに忙しいと思います。テクノロジーの発達とともにキャッチアップすべきことはたくさんあります。しかしながら、サッカーの本質は変わりません。普遍的な要素をいかに大切にしていくかは指導者にとって重要なことです。指導者としてどうあるべきか考えるきっかけになる一冊。
チームがどのように発展するかを最も知っているのは他でもないそのチームの指導者自身です。さらに、それぞれの選手たちがどのような選手かを知ることでより完璧に近づくことができるでしょう。そのためにも指導者が考えた練習メニューを選手たちがしっかりと実行できるように仕向けていかなければいけません。決して、目の前の選手たちの成長を見ることなく、シーズンが始まる前に立てたプランニング通りの練習を行うことが目的ではありません。プランを立て実行したら、次にそれを振り返り、さらに良くしていくことを続けなければならないのです。「目的を定めることなく行うことは、ただこなしていることと同じであり、時間の無駄である」この言葉も指導者の大事な心構えとして頭の中に置いておいてほしいと思います。
- 作者:ランデル・エルナンデス・シマル/倉本和昌
- 出版社:ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2012年02月
これらの本の中には当然トレーニングメソッドも多く書かれていますが、まずは書籍の一部を引用してご紹介させていただいた指導者として持っておくべきマインド、スタンスの部分をしっかりと理解した上で、トレーニングメソッドを学んでいただければと思います。
サッカーコーチ必読の話題本
岡ちゃんこと、岡田監督の本も2冊目以降にぜひおすすめです。
体系的にサッカーを学べる一冊です。
岡田メソッド
▼目次1章 岡田メソッドとは
2章 プレーモデルの意義と全体像
3章 共通原則
4章 一般原則
5章 個人とグループの原則
6章 専門原則
7章 ゲーム分析とトレーニング計画
8章 コーチング 9章 チームマネジメント
サッカー“ココロとカラダ”研究所
この本も非常に面白く、目から鱗の連続でした。
育成年代の指導者は読んでおくべき本です。
サッカーは持久力のスポーツ?それとも瞬発力のスポーツ?
「パーソナリティ」「チームの結束」「勝利のメンタリティ」とは?
「戦術的ピリオダイゼーション」はフィジカルとメンタルをどう扱う?
「天才少年」が偉大なプレーヤーになれないのはなぜ?
どうしてCLでは大逆転劇が頻発するのか?選手、コーチ、監督という異なる立場から
プロサッカーの現場を当事者として経験してきた
イタリア人エキスパートとの対話を通して、
この「未知の領域」を様々な角度から掘り下げ、その全体像に迫る画期的な一冊。
- 作者:片野道郎/ロベルト・ロッシ
- 出版社:ソル・メディア
- 発売日: 2019年07月12日
キーパーコーチにはこの一冊
ジョアン・ミレッ 世界レベルのGK講座
ゴールキーパーはサッカーにおいても独自性が高いポジションであり、選手育成にも専門的な知識が多く必要になるポジションである。
気づけば、J1リーグに所属するチームの守護神は半数程度が外国人GK(そのほとんどが韓国人)、そんな状況でもグラスルーツでは、
大人が子どもむかって強烈なシュートを浴びせるばかりで、育成のためのトレーニングとは程遠いのが現状だ。
このままでは、体格や身体能力的に欧米人や韓国人に劣る日本からは世界に通用するゴールキーパーは輩出されないのではないか?
そんな状況を打破するためのヒントが、この本にはつまっている。
監修は、スペイン4部の街クラブから次々をプロを輩出したのち、来日すると湘南ベルマーレのアカデミーGKプロジェクトリーダーやFC東京のトップチームでGKコーチを務めたジョアン・ミレッ氏。
体系的にまとまったジョアンのメソッドは、GK専門のコーチでなくとも必読だ。
- 作者:ジョアン・ミレッ/倉本和昌
- 出版社:カンゼン
- 発売日: 2020年01月15日
指導者の方にはぜひ、指導現場で役立ててほしいと思います。
Kindle Unlimitedに契約すると、月額980円で200万冊読み放題となっており、サッカー系の本もかなりの数が読み放題になってますのでかなりおすすめです。
※料金はキャンペーンなどもやっているため詳細は下記をご確認ください
サッカーの本質を追求する旅はつづく…