大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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全員が試合に出場する為には、マインドとそれを支える仕組みが重要。

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先日「1分も出場機会がないこどもたちの話。試合に出る機会は全員に与えられなければいけません。」の投稿を読みました。日本ではまだまだこのような現状があるのだと残念に感じましましたし、このような事は子供からサッカーの楽しみもモチベーションも成長も奪うものだと感じます。

 

私は家族4人でドイツで暮らしており在独7年超になります。子供達(息子と娘)はドイツでサッカーをしています。ドイツでは試合は全員出場が基本で普通の事として行われていますが、どうしてそれが実現できているのか。ドイツでのサッカーの環境を見て、色々な人たちと話して私が気づいたことをお伝えしたいと思います。

 

まず、ドイツ人はサッカーをする=試合と捉えていて、練習だけで終わっては意味がないというのを感じます。また、試合は楽しい=試合をしないと成長しない=試合が重要という考え方と、主体が子供にあるのを感じます。よってジュニア世代までは子供達全員に試合の出場機会を与えなければならないというマインドになっていると考えられます。しかしながらこのマインドがあれば、全員出場が可能になるかと言ったらそうではなく、それを支える仕組みも大事なんだとドイツのサッカー現場を見て感じています。あくまでも私が今まで見てきた範囲で感じた事を記していきたいと思います。

 

【目次】

 

1.子供達のレベルを合わせたチーム作りと1チームあたりの人数のコントロール

ドイツでは1つのクラブの同じ年代に複数のチームがある事があります。1つの年代の人数が多い場合、1チームの人数が多くなりすぎないようにチームを分けるのです。人数が多すぎてはコーチが指導しにくい=練習の質も落ちるからです。チームを分ける際には選手のレベルで分けます。要は一軍二軍ということです。小学校の年代でこういうやり方をするのは、もしかしたら日本ではあまり好感を持たれないかもしれませんが、非常に重要な事だとドイツに来て感じました。

 

ここで一つエピソードをお伝えしたいと思います。息子がドイツに来て初めて所属したチームのコーチはドイツサッカー協会の方でした。彼は世代別代表のコーチ、そして協会として指導者の指導もされている人間性も素晴らしい方でした。彼が言っていたことがとても印象に残っています。

 

「子供達がサッカーするにあたり重要な事は楽しむこと。それができるようにするには環境が大切になる。重要となるのはまずレベルによってチーム分けをすること=チーム内に極端にレベルが違う子が存在しないようにする事が大事。可能な限り均衡したレベルの選手でプレーをする事が重要で、それにより子供達がストレスを抱えず思いっきりプレーができる環境になるとともに成長もする。均衡したレベル=チーム内の練習中でも勝ったり負けたりがあるから楽しいしモチベーションも上がり、成長にも繋がる。

もう一つが過度なプレッシャーを子供達に与えないこと。過度なプレッシャーは子供達の楽しい気持ちの障害になる。」と。

 

ドイツに来てまずこの話を聞いたことが私にとってとても大きなことでしたし、またこのエピソードの中で日本では目が行きにくい事として「思いっきりやる=楽しくて成長に繋がる」事だと気づきました。

このレベル分けの考え方はドイツのあらゆるところで見る事ができます。年齢ではなく、能力のレベルでグループを分ける、このやり方が子供のストレス軽減だけでなくチーム内で上下関係を生むことの妨げにもなると感じています。

また、人数が少なくチームが一つしかない場合でもチーム内の練習でうまくその考え方を取り入れて行っています。人数調整でレベルを合わせたり、メンバーの組み合わせだったり、ハンデを付けたり等々、方法は色々あります。重要な事を明確にしてそれが可能な限り実践されるように思考を柔軟にしてやり方を考える、これはドイツに来て私が学んだことでもあります。

 

2.自分のレベルにあったチーム選び(上記に繋がります)

ドイツでは全員が試合に出場するといっても、必ずしも全員が全く同じ出場時間というわけではありません。

自分の出場時間が自分が望んでいるより短い=もっとプレーしたい、またはずっと試合に出られている場合でも、自分のレベルがチーム内で上で、もっと強い相手とプレーしたいと考えれば、今のチームのレベルが合ってないということで、一軍二軍の入れ替えがコーチによって行われたり、またクラブを変える=移籍をしたりします。

ドイツでは移籍はしやすい環境になっていて、選手が望めば基本的には移籍できる仕組みになっています。

自分にあったレベルのチームでプレーする重要性を多くの人が持っていて、且つ移籍もしやすい環境にあるので選手が流動的に動いていきます。すると全体で見た時にも、自然とチームがレベル別に分かれていく事になると感じています。

 

3.公式試合(リーグ戦)、練習試合、大会参加は基本的に対戦相手のレベルが均衡

チーム分けがレベルでされる=対戦相手に関しても同じ考えです。レベルができるだけかけ離れないで均衡したレベルのチームと試合をするようにサッカー協会が各リーグにチームの振り分けをする、そして練習試合や大会参加はコーチがレベルが合ったチームと対戦できるよう、アレンジします。

 

4.試合中の選手交代は人数制限がなく出入りが自由

ドイツは試合中の交代は出入りが自由です。一度下がってもまた入ることができます。この仕組みが全員出場機会と選手一人一人のプレー時間をできるだけ確保できる一つの要因になっていると思います。

 

試合出場人数のコントロール

一つのチームの人数は年代によって違いますが、大体試合出場人数の1.5倍~どんなに多くても2倍弱程度です。(7人制であれば1チーム11,2人程度)。

2倍になるとさすがに人数が多くて試合に全員出場させるのは難しいのが現状です。そうした時コーチはその試合に出場させるメンバのみを試合に呼びます。つまり何人かは試合に呼ばないという事です。呼ばれなかった子達は次の試合には呼ばれるのでシーズン通して見れば、みな大体同じだけ試合に呼ばれるという事になります。呼ばれない子はその日はオフになるので自分の自由な時間になるということです。(呼ばれてなくても試合が見たい子は観に来ます)

 

以上が私がドイツで感じているマインドと気が付いた仕組みです。

楽しいからやりたくなる、やるから上手くなる、上手くなるともっと楽しくなる、もっと楽しくなるともっとやりたくりもっとうまくなる。この循環が生まれる環境、それに必要な事は何かを考える事が大事だと思います。

またドイツの環境&マインドのベースとしてある「レベル分け」のアクションが上手く機能するためには、自分にベクトルを向ける事が大事だと感じています。ドイツでは自分にベクトルを向けて子供達も、そして子供をサポートする親もチームを選びます。

チームを選ぶ基準として、レベルが上がいいチーム、下はダメなチームではなく、まず今子供がどのレベルかに焦点をあてて、子供が楽しくて成長する事ができるチームを選ぶ。マインドそしてそれを支える仕組みがセットになって子供達がプレーしていて楽しい環境=「全員が試合に出場する」が実現するのだと思います。

 

ライタープロフィール

2015年~ドイツで家族四人で暮らしています。ドイツでの生活・子育てそしてサッカー環境を通して見える日本との違いから、日本の魅力や足りない部分を再認識できると共に、新たな発見もあります。他との違いの認識と分析が客観的思考と多様性の認識につながるように、サッカー環境、文化の違いを書いていきたいと思います。

keikun028.hatenadiary.jp