私は6才の時に学校のクラスで観戦に来て、
その時にファンになったんだ。
当時観に来たクラスメートの殆どはケルンサポーターになって、
ならなかった何人かは既に他のチームのファンだったんだ。
かの有名な1FCケルンのスタジアム見学で、
ガイドのアンディおじさんが誇らしげに教えてくれた。
90分のガイドの間、
スタジアムの事、ケルンのチームの事、クラブの歴史の事、マスコットのへネス(ヤギ)のこと。
「あんまり沢山話しても難しくて疲れちゃうだろうからね。」
と最初は言っていたのに、案内する場所場所で、小ネタが止まらなかった。
選手が試合の日に通るルートを案内してくれて、
スタジアムのピッチに上がる時には、
マッチデーさながらスタジアム中に響き渡る音量でテーマミュージックをオンしてくれて、ケルンサポでも何でもない私でも、感動と溢れ過ぎるケルン愛に感極まってしまう程だった。
今のスタジアムは3代目なこと、
初代のレンガが今でも大切に残されていること、
へネスはサーカス団から送られてきたこと、
へネスの名前の由来(当時の監督が由縁であること)
普段は市内の動物園で親子の家があって暮らしていること、
1FCケルンのエンブレムの由来(大聖堂、ライン河、マスコット)
スタジアムの自分が座るシートにネームをつける事も出来るが1試合50€なこと、
監督がコロナになった時にも家の中で試合さながらのオーバーアクションで飼い犬がなだめるほどだったという動画がYouTubeで観られること、
スタジアムに鳩がいないのは毎月一度鷹をよんでいなくなったこと 、
その昔は銃で打っていたけれど動物保護団体から注意を受けそのやり方に変わったこと
ピッチに上がる前のガラス張りのドアにはヤギの等身大フォトシールが貼ってあるけれ
どアウェイチーム側のゲートは相手を蹴り倒す意味合いを込めて、後ろ姿になっていること、
特別な入り口にはチームスポンサーの名刺がずらりと並んでいてサッカー観戦の横でビッグビジネスが動いているかもしれないこと、
ただのガイドじゃなくて、
ケルン愛を余す事なくお伝えしますツアーで、とっても居心地が良かった。
ツアー後半のコーディネイトをしてくれた現地育成指導者の中野吉之伴さんによると、
アンディさんは、
定年退職した後の仕事を探していた時に募集を見つけて応募し、
ガイドをはじめて一年半との事。
退職後にこんな形で自分が愛するクラブと関われることに、
心からの喜びがあることが、その表情一つひとつから伝わってきた。
強豪だから、とかスーパースターがいて、
とかではなくて本当にチーム愛があって、
この街にクラブが根付いているということの証のような人だった。
比較をしたら規模が違い過ぎて、
ケルンの町の人々は怒るかもしれないけれど、
少年サッカーの現場でも、
昔選手として所属していた保護者が自分の子を連れてチームに戻ってくることは私の地域ではよく見られる光景だ。
それから今度は指導者として関わるという方も珍しくない。
もちろん指導の質や子どもたちとの関わり方は、
指導者にしろ保護者にしろ、了見が狭いと感じざるを得ない現実はどこの地域にも課題が残る。
所属選手数が減っていっていることを、
成績が振るわないからだ、という風に考える人もまだまだ多数派な地域も多いと思う。
しかし、地域の中で人と人とが繋がって、
子ども達と一緒になってスポーツを楽しむ風景は、
まだまだもっと日本でも大切に出来るはずだ。
ドイツは素晴らしい、日本とは全然違う、と言うのは簡単だけれど、
日本の中で出来る事、子ども達に還元していけること、こどもたちがスポーツを楽しむためにできること。
それぞれの立場でそれぞれに出来ることがきっとあるはずだし、大人である私たちが諦めてはいけないことのような気がする。
サッカーというスポーツを大切に思って、楽しさを知って、
そこに関わる子ども達全員を大切に思う気持ちがあれば、
子ども達は輝くし、
地域の中でクラブが根付いていくことは難しいことではないはずだ。
チーム愛とは強さや派手さとは別のところにある。
そうアンディさんは伝えてくれたように思う。
少年スポーツの現場は如何に。
メディアも指導者も保護者も考えていかなければならない。
ファンショップの買い物時間は少ししかとれないけど…
といいつつ時間をオーバーしても見学割引きのために、
レジ横で談笑しながら私たちの長い買い物に付き合ってくれた温かさは、
忘れられない。
ライタープロフィール
息子のサッカーを見て感じた違和感、サッカーで苦しんでしまう子どもたちを減らしたい。そんな思いから、浜松プレーパーク(hamamatsu_play_park)という公園サッカーの会を企画しています。
- 作者:中野吉之伴/早川世詩男
- 出版社:理論社
- 発売日: 2023年08月18日頃