日本のハラスメントが何故なくならないか、についての記事を読みました。
日本のグラスルーツの指導の現場について、大切なことが沢山書かれていました。
色々と思うことはあったのですが、最後の最後で話題になっていた「エンジョイ」について以前から思うことがあったので、書いてみようと思いました。
佐伯:スペインの子たちって「エンジョイ、エンジョイ! ディスフルーター(楽しもう)!」って、ずっとエンジョイのシャワーを浴びせられているんです。そういう子たちがトップ選手になったとき、最後の最後でやっぱり強いなって思ったんです。
アスリートの強さは、がんばりシャワーを浴びた子よりも、エンジョイシャワーを浴びてきた子の方が強いって。これ、なにか確信に近いものを感じたんですよね。
日本人は「歯を食いしばれ! がんばれ、がんばれ!」とか「これを乗り越えたら強くなれる、成長できる」っていう文脈の中で育てられてきてるんですよね。
相手が30周走るなら、俺は31周走るみたいな根性論だったり。でも、試合などで最後の力をふり絞るとき、やっぱりそこではエンジョイっていわれ続けてきたアスリートには敵わないのかもしれないと私は思いました。
スポーツを楽しむこと、とても大事な視点だと思いました。
息子の少年サッカーに関わるようになり、色々なことを学んだり新しい出会いがあるたびに繰り返し嚙み締めなければと思うこと。それは、“スポーツは文化であり、遊びである”ということです。
これは、私が20代の時に出会ったJリーグ100年構想でも掲げられていることです。
Jリーグ百年構想 - Jリーグとは | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
日本では、スポーツが体育として、教育のツールになっており、楽しむものではなく鍛錬、修行のような価値観で捉えられてきました。
でも、本来スポーツは、楽しむもの、自分を解放できるもの、人と繋がれるもの、文化的なもの、であるはずなのです。
だから、佐伯さんが仰る、「エンジョイシャワー」のお話にとても共感したのですが、日本ではエンジョイというと、ネガティブな捉え方をする方もいます。
楽しむというと、じゃあ勝敗には拘らないのかとか、勝負を捨てたのかとか。
楽しみたいだけならそういうスクールに入れば良いじゃないか、とか。
誤解して捉える人がいますが、それは違うと思います。
勝敗をとことん楽しむ姿勢とか、
勝負を最後の最後まで楽しむ人とか、
そういった人が、勝っても負けても本当の勝利者なんじゃないかな、と思います。
勝組、負け組、という言葉は好きではないので、本当のスポーツマンなのでは?という言い方が適切かもしれません。
というか、そのようなスポーツの楽しみ方をする人に、目の前の勝利や強制・矯正的環境、根性論で立ち向かってきただけの人は、やはり敵わないと佐伯さんがいうように思います。
純粋にそのスポーツを楽しんできた人には、たとえ勝負に勝っても心では、絶対に敵わないと思います。逆に、そのようなスポーツ本来の価値の中で取り組んできた人は、いくら勝負に負けても、心は負けないのだと思います。
以前SHUKYUマガジン10号の岡田武史さんのインタビューで、このような記事がありました。テーマは「サッカーと言葉」です。
“例えば「エンジョイ」という言葉。エンジョイというと勝つことと別物だとみんな思うかもしれないですが、楽しむことと勝つことは全然矛盾していません。プロだろうが、日本代表だろうが、サッカーを始めた時の喜びや、最初にゴールした時の感動、楽しむことを忘れてしまっては絶対にうまくなりません。ハウツー的な言葉ではなくて、そういう本物の言葉が残っていって欲しいです。”
凄く本質的ですし、エンジョイいう言葉が誤解を持って広がっていることが私は残念に思います。
また、今回のこの記事をSNSでシェアしたら、何人かの方が反応してくださいました。
世界最高峰の舞台で負けてるのに笑みを浮かべ楽しんでるレアル・マドリードの選手たちを思い出しました。
負けていたのに笑顔で、でも逆転しちゃうんですよ。
これが日本の育成現場の多くでは「負けてんのに何笑ってんだ!」ってなっちゃうんですよね
必死な顔をしてれば勝てるのかと。
最後まで良い雰囲気で楽しみながら勝ちを目指す。それが当たり前のようにできる選手が増えれば日本のサッカー界も変わるかもですね!
本当にその通りと思いました。
以前、息子の少年団では、点差が開き始めると、子ども達の顔がどんどん沈んでいってしまいプレーも縮こまってしまうのです。
「まだ大丈夫だよ!楽しもう~!!」と応援するのですが、結構私は浮いていました。
やっぱり厳しい言葉がけをする人の方が日本ではまだまだ多いのかなと思います。
試合を楽しむ、自分のプレーを楽しむ、負けていてもまだまだやれることあるかも、チャレンジって楽しいじゃんって、思えたら良いなと思います。
こんなお話も聞きました。
年に何度かあるんですが。
外からの圧力がなく、お互いに力が抜けて能力を存分に解放できた時に、フローに入ったような試合になることがあります。
そんな時の子供たちはとてもいい顔になり笑ってるように見えます。点を取っても取られても「次や!次どうする?」と思考を止めません。
観てるこっちも楽しくて楽しくて。「あっ、敵じゃないんや。サッカーに敵はいないんや」と気づかせてくれます。
負けてもとてもいい顔で帰ってきます。そしてほんとに悔しそうにします。
このエピソード、最高だなと思いました。マラソンで、ランナーズハイってあると思うのですが、チーム競技だと味方も相手も、ベンチワークも審判も全部ひっくるめて、全て整うとそのような空気感になるのかなと思いました。
その話を聞いて思い出したのが、漫画スラムダンクにおける山王戦です。作者の井上雄彦氏がこれ以上の試合は描けないというように、言わずと知れた名試合です。最後にはセリフが殆どなく、圧倒的な画力だけで試合が進んでいくのですが、読み返していて、とても印象的なシーンがありました。
背中を負傷した桜木が気絶してしまって、遠のく意識の下で晴子さんに(バスケットは好きですか?)と聞かれた時の記憶が蘇り、「大好きです!」というセリフとともに復活するシーン。この一言に、夢中になれる本質が詰まっていると思います。
またある指導者の方は、自分のチームにいる指導者の話を出してこのように反応してくれました。
あるOBコ―チはチーム史上一番サッカーが好きだと思うんだけど、彼に指導されるとみんなサッカーが好きになります。
こどもは10-0の勝利より0-1の敗戦の方が楽しいといいます。
卒団生も最後の挨拶で
「僕はこのチームで負けてもサッカーは楽しいということを学んだ」と挨拶しました。
彼のリーグ戦の戦績は0勝18敗だったかな?
彼はその後、高校選手権の全国大会に出場しました。
少しずつ、少しずつ、本来のスポーツの価値が広まってきていることを感じ、まだまだ
自分の地域に伝えていけることはあるなとも思いました。
佐伯さんが仰るエンジョイシャワーの意味が、子ども達と関わる指導者や、スポーツを楽しむ全ての人に届いて欲しいです。
エンジョイには、勝負に打ちのめされても這い上がれる、強さがあると思います。表面的に勝った、負けたと捉えるより遥かに大切なものがあると思います。
そしてエンジョイこそ、苦しいときのプレーヤの支えになるものだと感じています。
ライタープロフィール
息子のサッカーを見て感じた違和感、サッカーで苦しんでしまう子どもたちを減らしたい。そんな思いから、浜松プレーパーク(hamamatsu_play_park)という公園サッカーの会を企画しています。