大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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ドイツの教育とサッカー|サッカーの捉え方と段階的な育成

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前回、「ドイツの教育とサッカー|自分を知る事が自信自立そして発展に繋がる」というテーマで書きました。


今回は、息子のサッカークラブでの面談の話をご紹介しながら、ドイツのサッカーというものの捉え方と育成について前回のテーマと繋げて考察してみようと思います。

 

息子のサッカークラブでの面談

息子のサッカークラブでは、年に2回面談があります。こちらも保護者同伴ですが、メインは選手とコーチが話をします。これに関してもプレーするのは選手で、またサッカーを上手くなりたい・プレーヤーとして成長したいのも選手、「選手」に焦点が当てられています。


この面談も事前に同じ評価表に選手は自己評価をし、コーチは選手の評価をし、それを元に面談で自分を知る事=自分の現在地の確認をしながら目指すゴールを決めて、そこに必要な事を考えていきます。基本的には小学校の面談とプロセスは同じですが、よく考えられていると感じるのが年代に応じたステップが踏まれているという事です。


評価表の内容は、小学校の年代はサッカーをするために重要な項目毎に自分を知る事、その項目毎に自分のレベルを上げる事が目的となっていると感じます。まずは自分とサッカーを知るところからスタートします。


自分で何かを考えて書くのではなく、サッカーをするために重要となる大きなカテゴリーの中に更に細かい項目がブレークダウンされていて、その各項目毎に数字で評価をしていきます。数字での評価は小さい子供でもできますし見た目も分かりやすい。


また評価の数字も学校の成績と同じ6段階評価になっているのが分かりやすいと感じました。このようにして自分を知る事から強みや弱みなども自分で認識し、また強みをしっかり把握するところから自信につなげていくのだと感じています。


またこれをやる事でサッカーにおいて重要な項目も理解できるようになります。小学校年代の評価表はタイトルも「Selbsteinschätzung=自己評価表」となっていてタイトルからも自分を知る事にフォーカスしている事が分かります。そして評価項目は、サッカーの技術や能力の事だけではなく多岐にわたります。


中学校年代になるとフォーマットが変わり、評価表のタイトルも「Entwicklung Plan=発展計画」となります。プロセスは同じく自己評価とコーチの評価を同じフォーマットでします。サッカーをするために重要な大きなカテゴリーは「自己評価表」と共通していますが、細かい項目のブレークダウンはなくなります。


この段階から、より自分のなりたい選手像をイメージしながら発展計画を考えていくのです。評価も6段階評価から3段階評価と大雑把になり、それに加えて自分の言葉で自分に対する評価を表現することが求められます。それにより意識に落とし込むことができるようになっていると思います。また今シーズンだけでなく2~3年と少し長いスパンでもゴールを設定していきます。


この面談でも自己評価とコーチの評価が同じことはまずなく、違いから自分の意外な強みが見つかったり、また自分が凄くできてると思っているところがそうでもない=過大評価だったりする事が分かったりもします。


この面談を続けていった結果、最近ではコーチの評価と息子の自己評価のギャップが縮まっているのが大変興味深いです。おそらく自分を知る事、また客観的に見る事ができ始めているのではと感じています。そして、これが自信にも繋がっていると感じますし、自信がつくとプレーの安定にも表れると思います。


また今までのサッカーの面談でコーチとの話の中から沢山の気づきや違いを感じる事あったので、いくつか印象に残っていることを書かせていただきます。

  1. 「日本人は謙虚である。これは素晴らしい事だ」と言われました。しかし私はこの言葉を聞いて、日本人は謙虚がネガティブな方向に行きがちなので注意しないといけない、謙虚がプラスに働くようにしないといけないと思いました。また、ドイツでは逆で自意識過剰=オーバーコンフィデンスになりやすいので、謙虚さを学ぶ事を子供たちに教えていかないといけないと言っていました。
  2. 「君たちと僕たちのメンタリティは違うと感じる。もっと良くなりたい、もっとうまくなりたい、そういう気持ちをすごく感じる。それはとてもいい事だけど、しっかり自分を認めてあげる事も大事だと思う。今頑張っている自分、今できている事を認めてあげる。そうしないと良くなりたいという気持ちが、自分で自分にプレッシャーを与えてを苦しめる事になるから。大丈夫、君が頑張ってること、頑張る子だって僕たちは知っているから」と。この言葉はとても響きました。そして、この言葉を聞いた事で息子だけでなく私の肩の荷も軽くなったのを今でも覚えています。

面談の話の最後に、サッカー評価項目にも入っていて、面談でいつも一番初めに聞かれることは何だと思いますか?それはサッカーの事ではなく学校の事です。学校の勉強は問題なく進んでいるかを聞かれます。まずは人としてのベースがしっかり整ってから、サッカーがありサッカーも上手くいく。これは根底にある事だと面談の度に認識させれられます。

 

自分を知りそして認めてあげるという事

ドイツでの子供たちの環境から、まず自己評価をするという事がとても大事で、また先生やコーチの評価も合わせてみる事が重要だと感じています。そうすることで、自分と他人の評価が違う事が理解でき、これが発展していくと自分を客観的に見れるようになっていくと思います。


また、「評価の違いは何か」を探る事で評価が良い悪いという表面的な判断にならず、自分を知るきっかけや新たな発見、改善要素がわかる=発展の素になると認識できるのです。このように評価の捉え方が「自分の現在地を知り、更なる改善発展に繋げるもの」になれば、評価に振り回されたり他人の評価ばかり気にしたりする思考にならないと感じています。


そして他人の考えや意見よりも、まずは自分がどう考えるかが大事であると思いますし、比較についても他人とは比較するより違いを理解する、比較は以前の自分とするようにする方が良いのではと感じています。


自分を知る事。そして弱いところも強いところも頑張っていることもすべて含めて認める=受け入れる事。ここから自信と自立、そして発展に繋がると感じます。そうなるように必要なサポートをするのが大人の役割だと思います。


自分を知って認める事が面談の時だけの一時的なもので終わるのではなく家庭でも学校でも日常でされていれば、意識として根付くのだと感じています。何よりこれらを進めるには、大人の質問力と対話力が非常に重要だと思います。そのためにまず私たち大人自身が自分に目を向けて、そしてお互いが普段から質問をし合って掘り下げた話をしたり、対話をしていく必要があるのではないでしょうか。

 

keikun028.hatenadiary.jp