メキシコとの3位決定戦に敗れた日本。
グループリーグでフランス、メキシコを破り、難敵ニュージーランドを倒し、優勝候補スペインに延長まで競り合い、メキシコに散った。
本当に素晴らしい戦いだったと思います。
最高の準備をして、自国開催という優位性をもってしても届かなかった
自国開催で、日本特有の夏の気候での大会、そしてコロナ禍で準備が万全にできない海外チームも多い中、日本にとってはとても優位な大会でした。
少なくとも、フランス、南アフリカ、ニュージーランドは100%のチームではなかった。
それでも本気のスペインとメキシコと戦えたというのはとてもとても有意義なことだったと思います。
五輪までの準備として、日本はコパアメリカにも出て、長い期間このチームを作ってきました。本気でメダルを狙っていましたし、最高のチーム状態で迎えた大会だったと思います。
しかしながら、今回ベスト4に残ったチームの中ではやはり何かが足りなかった。
何が足りなかったのか、考えていきたい。
目に見える小さな差が、目に見えない大きな差
日本よりもはるかにサッカー文化が発展した国を相手に、あと一歩のところまで追い詰めました。これはすごいことだと思います。
スペインもメキシコも日本より圧倒的にサッカーが日常にある国です。他の娯楽と比べてもサッカーの優先度が高い国、つまりそれだけ、サッカーが国民の価値観の上位にある国です。サッカーがより大切にされ、より育まれている国。
そんな国を相手にあと一歩のところまで追い詰めたというのはすごいことなんです。
試合後の田中碧選手の取材記事が、とても印象的だったので引用させていただきます。
「このメンバーでの最後の試合ということで、やっぱり勝って終わりたかったですし、メダルも取りたかった。ただ、本気の世界に突き詰められた。練習試合とかで色んな海外チームとはやりましたけど、結局練習試合ですし。もっと敵との差があるというか、どうにかしてこの差を埋めていかないといけないかなと思いました」
五輪前の6月28日には、ドイツ2部のデュッセルドルフに期限付き移籍を発表し、自身初の海外挑戦を決めた田中。日本を旅立つ前の力試しという意味でも、今大会への想いは強かったはず。「今までJリーグでやってきて、自分自身もすごく成長したと感じていたけど、結局それが何ひとつ通用しないし、まだまだ足りない。もっともっとサッカーを知って、彼らについていかないといけない」
さらに、田中は体感した世界との差について、「彼らはサッカーをしているけど、僕らは1対1をし続けている」と表現。いまだ手の届きそうで届かない格上の存在を、そう評した。
日本はひとりでプレーしすぎた。チームとして勝つ術が欠如していた
オシムさんの準決勝のスペイン戦後のインタビュー記事にとても興味深いことが書いてありました。
結果は妥当だった。スペインの方が強く勝利を望んでいたからだ。彼らが示したのは、ベスト4にはそれだけの価値があるということだ。野心を前面に出したのは日本ではなくスペインだった。
日本もプレーができることは示し、ボールをキープして連携を深めようともしたが、あまりにひとりでプレーしすぎた。あんなふうに個人プレーに走れば、コントロールとキープだけなら容易にできる。その結果、最後にあんな形で負けて何も得られなかった。相手の方が優れていたわけではなかった。ただ彼らはずっとシンプルでよりダイレクトだった。
前でプレーする小柄な選手はとても興味深かった。プレー自体は悪くないがずっとひとりでプレーしていた。1対1もそうだし、ひとりで複数の敵を相手にしていた。
(恐らく久保選手か堂安選手のこと)
メディアにとって彼のような選手は扱いやすいだろうが、忘れてならないのはサッカーはコレクティブな競技であることだ。個のプレーが行き詰まったときに勝つのはコレクティブだ。それが今日の試合でよくわかったはずだ。スペインがそれを証明した。
サッカーに限らず私が見るすべてのスポーツで、スペインの第一の目的は試合に勝つことだ。どんなやり方であろうと勝つ。内容がどうであれ、勝つためにすべてを尽くす。大事なことはそこにある。常に勝者であろうとすることだ。
田中碧選手はこうコメントしました。
「彼らはサッカーをしているけど、僕らは1対1をし続けている」
オシムさんはこう表現しました。
「サッカーはコレクティブな競技であることだ。個のプレーが行き詰まったときに勝つのはコレクティブだ。それが今日の試合でよくわかったはずだ。スペインがそれを証明した。」
我々はサッカーというゲームについてもう少し深く考える必要がありそうです。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…