「サッカーママ: 息子をサッカー選手にと奮闘した12年間」先日、ご紹介したこちらの電子書籍から、コーチの息子さんへのハラスメントと言えるレベルのふるまい、そしてそれを目にした上で、親としての立場の難しさ、苦悩がリアルに伝わる内容でした。
一部を引用させていただき、ご紹介させてください。
サッカーの試合なので、勝つこともあれば負けることもあります。しかし監督は試合が終わってからも罵声をあげ、息子の名前を呼び、自分が座っていたパイプ椅子を思い切り足で蹴飛ばして倒し、体全体で怒り、息子を威圧していたのです。
息子に向かって目の前でそのような態度を取られメンバーの子供たちは皆萎縮していました。
後に聞いたのだけど、この試合だけでなく、普段の練習試合の際もコーチに叩かれたり子どもの髪の毛の揉み上げを掴まれて上に持ち上げられた子がいたり、長い時間走らされたり、スパルタの嵐だったとのことでした。
サッカー合宿(泊まりで地方の施設へ行き練習する)の時はもっと最悪でした。食事を山盛りによそわれて、全部食べきれるまでその場を出られない。練習でも飲み物を飲ませてもらえないなど……。
ここで問題扱いする気はないので割愛しますが、かなり過酷な環境に子供を預けていたことを後悔しています。
当時はスポーツは根性! という見方もあったので、親たちも暗黙の了解的な立場で見ていたのでした。そしてやはり「選手として選んでもらいたい!」という親たちの忖度感情が監督やコーチに意見ができない理由の一つでもあったでしょう。
もう一つは、とある試合の日。親たちが応援に夢中になり、大声で歓声を上げていたところ、監督から「うるさい!」と注意を受けたことがありました。必死に息子たちを応援していただけなのですが……。何がどうよくなかったのか??
やはりみんな心に思うことはあったのですが、誰1人監督に逆らう者はいなかったのです。ここからもわかるように、親たちよりも監督やコーチの方が精神的に上の立場でした…
コーチの方が立場が上、親がコーチに言いにくい状況
「ちょっとやりすぎなんじゃないですか?」
このように言える親御さん、少ないと思います。
こんな指導をするコーチって、決まって頑固で、もっともらしい面倒な反応が想定されるから、親としても難しいというのはよくわかります。
人格に問題はあるけど、こういう人でもいないと子どもがサッカーをする機会が得られないという場合も多いように思います。
でも一番は、社会に出たら理不尽なことはたくさんある。だから今のうちにこんな厳しい経験でもさせておいた方が逞しくなるだろう。そういう親御さんたくさん見てきました。
ニュースでもコーチの体罰、ハラスメント問題が取り上げられるようになり、現場であからさまな場面を目撃することは減ったように思います。でも、本質的には変わっていないのかもしれません。
親自身が、子供の頃に理不尽な指導を受けていることが多いので、それが当たり前に感じるからかもしれません。
子供を威圧、恫喝するコーチが未だにいる…
このような発信をすると、実はうちの子も…とDMをくれる方がいらっしゃいます。
身バレしたくない、子供がコーチになにされるかわからない、チームメイトの親御さんにもなにを思われるかわからないので、もし記事にしていただけるなら匿名でお願いします…
未だにこのような連絡がくることがあります。
部内、クラブ内というクローズドな場では色々あります。
ハラスメント、いじめ、それを口に出せない子どももたくさんいると思います。ご紹介した内容のようにあからさまなものは少なくなったかみしれません。でも、親御さんは子供の変化には敏感になってほしいです。
事実、親御さんからの連絡だけではなく、中高生からも連絡がくることがあります。
確かに判断が難しいです。一見理不尽な内容に思えても、その子が過剰に伝えている可能性も考えてしまいます。事実確認も難しいのでこのような場で内容を公開するのも控えざるを得ません。
だからこそ、現場の透明性、親が子供をしっかりと見てあげることは大切なことだと思います。
そしてハラスメントをする指導者は許してはいけないと思います。少なくとも、おかしなことはおかしいと伝える、あるいはチームを変えるなど、子供を守れるようにしてあげてほしいと思います。同じチームメイトの親御さんと、違和感について話してみるところから始めてみるのがいいかもしれません。

- 作者:中野吉之伴/早川世詩男
- 出版社:理論社
- 発売日: 2023年08月18日頃