日本サッカーには特有の問題がある。罰走や体罰という理不尽な指導、高校サッカーが引き起こす弊害、部活動問題などサッカー先進国では考えられないような問題が日本には多く存在する。そんな「鎖国」日本をアップデートさせることを志す1人の若者によって始まった連載企画「日本サッカーを開国せよ」。
前回に引き続き、Jクラブで分析官をした経歴を持つ大同高校サッカー部コーチの清水智士 (@Satoshi_jp11) さんのインタビューをお送りします。
前回→(良い選手の3つの条件とは?|日本サッカーを開国せよ!)
(インタビュアー:小谷野拓夢)
サッカーをどう解釈するか
小谷野:清水さんは、サッカーをどういうスポーツだと思ってますか?
清水コーチ:サッカーは、シュートを打てるところにいる相手をやっつけるスポーツだと思ってます。それでは、そのシュートを打てる場所にいる相手をどうやってやっつけるかというところに繋がっていく。そういう捉え方をしてます。
あとは、『相手が人に強くアプローチすれば、スペースは空くし、スペースにいれば人へのアプローチは弱まる』というようなサッカーの仕組みを知った上で、選手に伝えることが大切かなと。そのつぎに、『そういう仕組みや原理があるから、チームとしてこういうサッカーをするんだよ』というゲームモデルが存在する。
小谷野:そういったサッカーの仕組みや原理はどのように学んだり、研究しているんでしょうか?
清水コーチ:自分の場合学んだというよりも、今まで教わってきたものが活かされてることが多いです。指導者になってから一緒に指導させていただいた方々から学んだことを中心に試合を見ながら確認したりだとか、それは時間が経つにつれて段々シンプルになってきました。シンプルなんだけど、奥は深いイメージです。
日本サッカーの育成年代の課題
小谷野:つぎに、日本サッカーの育成年代の仕組みについて思うことはありますか?
清水コーチ:1番は、選手が移籍できるようにした方がいいかなと思うけど、部活動という現状を考えると難しいのかな。。移籍できるようになってチームを転々とするのは良くないと思う。でも、選手自身がサッカーを学びたいチームで学べるようにするべきだし、試合に出場できるチームに在籍するべき。何より、良い指導者のチームに選手が集まるようになるのが1番大きいと思います。
小谷野:それは間違いないですね。指導者の評価にもなりますし、指導者自身が『学ばなければ選手が集まらない』という気待ちにもなるので良い思います!
清水コーチ:移籍が1番良いのかは分からないが、選手のチーム選びが多様なようで限定的なのでそこを改善した方がいい。中学や高校なら3年間、大学なら4年間チームを変えられないのは弊害もあるのかなと思ってます。
小谷野:かなりリスクが高いですよね。いざチームに入ったら合わないというケースは少なくないと思うので、、
清水コーチ:あとは、やはりリーグ制度が中心になるべきだと思います。トーナメントだと失敗ができないので、選手がチャレンジしづらい。そして、リーグも2回戦制にした方が学ぶことが増える。前期があっての、次の対戦が重要で『前回の対戦から何が変わったのか』という指標になる。『分析の面から見ても、前回の対戦が〇〇だったから△△する』というトライ&エラーが選手やチームを成長させる。
もう一つは、高校生の試合時間は全て45分ハーフにするべきだと思います。過密日程にも関わることだと思うけど。サッカーは90分をどう戦うかという要素も重要になってくると思うので、それを30分ハーフや40分ハーフのゲームにしてしまうと、学ぶべきことが減ってしまう。
小谷野:試合時間に関しては、選手権や総体だけでなく地方で開かれる大会でも言えることですね。
清水コーチ:前回のW杯で日本代表が後半の残り30分で逆転されるのも、もしかするとそういう積み重ねが背景としてあるかもしれない。90分の試合を戦ってきた経験値の差が試合結果に反映した可能性もあると思ってます。海外のサッカー事情を詳しく知らないので確実なことではありませんが…
小谷野:清水さんがコーチとして心がけていることはありますか?
清水コーチ:選手を育てるという感覚というよりは、選手に寄り添って共に成長していくというイメージです。そして選手の長所を見つけること。その長所を開発していくことも重要だと思ってます。とにかく選手に寄り添って、1人ひとりと共に成長していくことが大切だと考えています!
小谷野:最後に、若いサッカー指導者に一言下さい!
清水コーチ:自分自身の、そして選手たちが持つサッカーが楽しいという感覚や成長したいという思いを大切にしながら、日々サッカーと向き合い、自分自身と向き合い、選手たちひとりひとりと向き合い、本当の意味でサッカーを楽しめる人たちを増やしていけるように、一緒に頑張りましょう!
清水さんのサッカー観は様々な経験から出来上がったものであり、それを踏まえた指導を受ける選手たちを羨ましく思いました。サッカーの本質を伝えられる指導者になれるように、自分自身を見つめなおすキッカケになりました。インタビューに応じていただいたことに感謝致します。ありがとうございました!
サッカーの本質を追求する旅はつづく…