大人になってから学ぶサッカーの本質とは

サッカーの本質を追求するWebマガジン 考えるよりも感じることを大切に 美しさとは何かを感じる心を大切に 大切なものを失わない為に書き綴る

日本と海外の思考=気質の違い。違いを知り、そして自分達を知る事の重要性。

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以前「言語と思考の繋がり、そしてサッカーとの繋がり

 

という内容を寄稿し、その中で「言語は思考と繋がっている、つまり言語の違いで思考も変わる」という事を書かせていただきました。これについては子供達が言語(ドイツ語)を身に付けてから気づいたことなのですが、それ以外にもドイツで生活し始めた時から、社会の形成の仕方やルール、サッカーのプレー、そして彼らの発言や行動全てから違いを感じていました。

特にドイツの子供達の行動については理解できない=謎なものが多く、明らかに、考えて取った行動よりも衝動的な行動、そして好奇心からの行動、そして面白いから取った行動が多いと感じました。

子供はそもそもそんなものだと思いますが、それを考慮しても理解できない行動が多く、また大人に関しても楽観的で、私達とは気にする内容もレベルも明らかに違います。はじめは訳が分からなくてイライラする事も多かったのですが段々面白くなってきて、彼らのような思考になると楽だという事も感じ始めたのです。

そして、息子が今のクラブに移籍してからサッカーで更に多くの違いを感じます。子供達のプレーの仕方、指導者(大人達)の指導の仕方、声のかけ方、そして彼らが良いと思うプレーの違い等、様々なところから沢山の違いを感じ、2~3年はそのマインドギャップに親子共に苦しみました。

そして、これを解決するのに彼らの思考を知ること、そして自分達の思考を知ることが必要だと考えました。それを考えるにあたり、個の気質の違いの前に元々日本人として備わってるものと海外の人に備わってるものに何か違いがあるのではないかと考え色々調べてみると面白い事が分かってきました。

 

【目次】

 

1.遺伝子から見える日本人の気質

日本人と海外の人の考え方の違いについて調べると、脳科学者の中野信子氏のものなど、興味深い記事が色々出てきました。いくつか添付します。参考になると思いますので皆さん是非読んでみてください。

logmi.jp

そして色々な記事の中で書かれていたのが、日本人の脳の特性として世界で最も不安になりやすく心配性な民族であるという事です。その理由は、「幸せホルモン」とも呼ばれ、精神の安定や安心感・平常心、そして頭の回転を良くして直観力をあげる神経伝達物質の「セロトニン」が日本人は少ないからのようです。

そして、それは遺伝子レベルでそうなっているとのことです。セロトニンの量に影響する遺伝子であるセロトニントランスポーターにはSとLの型があり、Sはセロトニンを少なく作りLは多く作ります。

「S型」遺伝子は不安遺伝子とも言われ、日本人80.25%、中国人75.2%、台湾人70.57%、スペイン人46.75%、アメリカ人44.53%、南アフリカ人27.79%が保有しています。またこれらの遺伝子の型はSS型,SL型,LL型の3種類の組み合わせで、調査によれば、特に日本人では「SS型」が最も多く、全体の68.2%を占めるとのこと。

アメリカ人のSS型は全体の18.8%なので、日本と比べると大きな差がありますし、また逆に「LL型」(前向きで安定してる) 遺伝子を持つ人アメリカ人では32.3%で、日本人ではたった1.7%の人しか保有していないことです。

引用:https://www.katsuiku-academy.org/media/anxietygene/

 

S型が世界で最も多い日本人は、そもそも遺伝的に不安を感じやすい傾向にあり、そのため事前にいろいろ準備をしたり、細部まで細かく目を通すのではないかと色々な記事で言われています。こういった脳の特性が考え方の特性にもなり、それが社会、教育、スポーツあらゆることに影響しているのではないかと考えられるのではないでしょうか。

 

2.日本人はサッカーが苦手?!

上記のセロトニンの関係も含め、日本人の脳の特性とサッカーを結び付けた話を2014年9月27日にFOOT×BRAINで中野信子氏がお話しされていました。Youtube動画が既にないため、音声のみのYoutubeと沢山のブログ等でまとめられているので、一つブログも添付します。(上記の内容で検索すればブログは沢山出てきます)

番組情報(テレビ東京サイト)

https://www.tv-tokyo.co.jp/broad_tvtokyo/program/detail/201409/21594_201409272330.html

番組の音声Youtube(動画はありません)

https://www.youtube.com/watch?v=QLdbhO5ZmGk

番組の内容をまとめたサイト

https://www.dreamlifecatcher.com/2018/12/28/japanese-brain/

 

この中で言われていたのは以下の内容です。

 

〇日本人の脳の特徴

・日本人は世界で一番心配性の人が多い

 ⇒1.のセロトニンの話です。

・日本人は世界で一番正確性を重視する

 ⇒そのために瞬間的な判断が必要な場面でも遅くなってしまう。

・日本人は世界で一番失敗を嫌う

 ⇒失敗を恐れるため、攻撃ではリスクを冒したシュートやチャンスメイクのパスが少ない。また、守備ではかわされることを恐れるため、プレーを遅らせるための守備が多くボール奪取が少ない。

 

〇解決方法

・「アメとムチ」でなく「アメと無視」

 ⇒ミスを気にせずチャレンジをしやすい環境にするため。

・ナビゲーション・ニューロンを鍛える

 ⇒即座の動きを早くするため反復練習から動きの習慣化をする。

 

これらの日本人としての特性を知ったことで、ドイツに来てから感じた違いが理解でき、自分達がどうしたらよいかも分かってきたのです。

ドイツでは正にチャレンジに対して拍手とエールを送り、チャレンジする行為自体を称賛するとともに、チャレンジが成功した時には歓喜になります。正確性は重要だと思わないですし、求めてもいない気がします(ミスを受け入れている=ミスがあるから面白いという事でもあります)。

また、プレーで正確性を求めた事によりチャレンジがなくなった場合や攻守の切り替えも含めスピード感やプレーのダイナミックさがなくなった場合は評価されませんし、見ている方もやっている方も楽しくなくなるような気がします。

逆に日本人は正確性を好むのでミスの少ないプレーを好み、また一度ボールを保持したら大事に扱う。つまりスピード感が生まれにくいという事だとも感じます。これは脳の特性から好むもの求めてるものが違うため、プレーの内容も異なってくるのだと思うのです。日本人選手が時に海外のファンやメディアから評価されないことがあるのはこういった脳の特性、そこからくる考え方の違いも関係している気がします。

またドイツでは、特に育成年代では指導者がチャレンジの部分をすごく見ていると感じます。チャレンジしない子は伸びしろが少ない、闘う気持ちや勇気が足りないということで評価としてはよくありません。また年代が上がるにつれチャレンジの質も見られるようになる気がします。

サッカーは、日本ではなくイングランド発祥で欧州南米を中心に発展してきたスポーツです。つまり彼らの思考がより反映されると共に彼らの思考にあったスポーツでもあるという事です。極端に言うと、私達日本人の思考とは合わないスポーツだという事になるのだと思います。

まずはそれを認識することが必要で、そして、日本人の特性を克服しつつサッカーというスポーツの本質の思考の土台を作っていく事が大事だと思います。またその上で日本人の特性である心配性から生まれるリスクの察知能力や努力する力等を最大限に活かしていけばよいのではないでしょうか。

今シーズン始めに息子のチームの指導者が子供達に伝えたアドバイスがとても印象的でした。

「サッカーをプレーする時に正解を求めるな。とにかく沢山の判断とチャレンジを繰り返すんだ。」

正に上記の内容でキーとなる言葉、サッカーの本質が含まれているアドバイスだと感じました。

 

3.特性の捉え方と対応

中野氏の話にもあるように、サッカーをするにあたり日本人の特性を克服しないといけない部分があると共に、また特性が強みとなる部分もあります。ただ私は特性について、捉え方と対応を気を付けないと強みではなく、結果悪い方向に行ってしまうと感じていて、自分の子供に対しても非常に気を付けるようにもなりました。

最近の日本の変化を見ていると、特性が悪い方向に行ってる部分があるのでは?と思うのです。ミスなくスムーズに進むよう、また問題が起きないよう、自動化が進み且つルールや禁止事項も増えている気がします。つまり人に選択肢を与える事や判断を少なくして=自由を奪う事でミスを無くす仕組みにしているように感じるのです。

私達人間はそもそもミスをしない事は無理だと思うのです。またミスは考えるきっかけをつくってくれます。ミスをするから考える=発展・成長に繋がるのです。ミスを恐れ取り除くより、ミスと向き合い受け入れて、何故ミスが起きたのかを丁寧に考える事が大事だと思います。それができると中野氏のいう「ミスが想定内」になります。

また声掛けにおいてもミスをした時に「気にするな」よりも(気にしないのは無理なので)、「大丈夫」という声掛けの方が大事で、且つミスをする前のアクション=チャレンジに目を向け、それらをきちんと認めてあげる事が大切で、それによりミスを恐れなくなると思います。

また不安を無くすため準備と努力をするという部分についても、良い部分である反面、努力を極限までする・追い込むぐらいまでやらせるのは悪い方向に行ってしまう可能性がある。努力を促進するだけではなく、むしろやりすぎないように注意する。これに対しても「十分やってる、大丈夫」という声掛けをして、やっている事への安心感を与えてやりすぎないようにする対応が必要なのだと思います。

特性が弱みになるのではなく強みになるような対応を心がけることは非常に重要だと感じます。

自分達の特性を知ることで、適切なマインドの転換をする事ができます。またそこから適切なアクションを起こし自分達を活かしていく事が大事なのではないでしょうか。これはサッカーだけでなく、社会や教育環境をより良くするためにも重要な事だと思います。私達一人一人が意識していく事が、現状をより良く変える事に繋がると思います。

 

ライタープロフィール

2015年~ドイツで家族四人で暮らしています。ドイツでの生活・子育てそしてサッカー環境を通して見える日本との違いから、日本の魅力や足りない部分を再認識できると共に、新たな発見もあります。他との違いの認識と分析が客観的思考と多様性の認識につながるように、サッカー環境、文化の違いを書いていきたいと思います。

 

keikun028.hatenadiary.jp