いま、子どもたちの運動能力低下が結構深刻なのではないかと言われています。
いわきFCアカデミーのアドバイザーを務める小俣 よしのぶさんの著書「スポーツ万能」な子どもの育て方 にこんなことが書かれていました。
文科省の調査によると、子どもの1週間総運動時間数が年々減少しているそうです。1週間総運動時間数は、学校の体育や休み時間の運動などを除いた、日常生活の中での1週間の総運動時間がどれくらいかを表しています。それによると小学生(小学校5年生を対象とした調査)の約半数の子どもが、1日の運動時間が 60 分にも満たないことがわかりました。たくさん運動をして体力運動能力を養う必要がある時期に、多くの子どもが十分に運動をしていないのです。
サッカー育成年代の指導者の仲間たちも、サッカー云々の前に、そもそも子どもたちの運動能力が低下していると口を揃える。
横浜の某クラブのU8を担当する友人は言います。
「昔と比べると、ボール扱いは上手い子が増えたけれど、いかんせん走れる子が少なくなった。サッカークラブ以外で運動して遊ぶ機会がすごく少なくなっているんです。公園も昔みたいに遊べなくなっているところが増えたし、コロナも流行っていることもあって尚更です」
小俣氏は本の中でこんなことも言及されています。
基礎体力運動能力が備わっていない状態で、特定スポーツの限定された運動ばかり、例えばサッカーであればボール操作ばかりを行っていると、上半身の発達が下半身の発達度合いに比べて遅れることがあります。
細かいドリブルやリフティングテクニックの習得ばかりになり、思いっきりボールを蹴る、走る、跳ぶなどの力発揮が疎かになってしまい、全般的な基礎体力運動能力が強化されないまま、上位カテゴリーに進んでしまうのです。
サッカーの4種カテゴリー(小学生カテゴリー)であれば、接触プレーが少ないので、基礎体力運動能力が整っていなくても、テクニックや戦術で上回っていれば、試合に勝つことができますが、上位カテゴリーになると、基礎体力運動能力も含めた総合力が整っていないと通用しません。
その状態で無理を続けると、サッカーでは特に、下半身のケガや障害に悩まされることは明白です。
基礎体力・運動能力が備わっていないというのは、怪我をしやすくなったり、将来的にも歪みが出てくる可能性がありそうです。昔は外遊びで補完されていたことが、いまはサッカークラブで補わなければならなかったりと、この辺りも指導者や親は理解する必要があるのです。
小俣氏の著書を読み進めていると、子どもたちが遊ぶ場所、機会が失われてしまっているということに改めて気づかされます。
子どもが自由に遊ぶ場所が失われている
子どもたちの体力運動能力の低下、運動発達の遅れ、子どもロコモティブシンドローム、肥満増加は「失われた3つの 間」が原因のひとつと言われています。 「3つの間」とは、〝空間〟〝時間〟〝仲間〟です。空間は、遊び場です。公園ではボール遊びが禁止されたり、空き地にマンションが次々に建つなどして、子どもたちにとっての遊び場である空間が失われました。そしていまの子どもは大人並みに忙しく、塾や習い事などで遊ぶ時間もありません。少子化の影響や友達も忙しいため、遊ぶ仲間が少なくなっています。この「3つの間」と呼ばれる、自由に遊ぶための条件が、子どもの生活から失われてしまったことで、多くの問題が起こっているのです。
以前、noteにも書きましたが、子どもたちが自由に伸び伸びと遊ぶ環境がなくなってしまっているということが問題として認識されなければならないと思います。
スポーツで成績の良い子の多くが、特定の競技だけでなく、水泳を習い、体操教室に通うなど、習い事によって運動能力を高めているんです。昔のように外で遊びながら養うということが難しくなっているということです。
子どもたちを、習い事漬けにしないと運動する機会を得ることも難しいというのは異常なことだと思います。
子どもたちが伸び伸びと遊べる環境を取り戻すにはどうすればよいでしょうか。
公園で子どもが元気よく遊んでいると、「うるさい!」とクレームを入れる大人がいるせいで遊べなくなっているのだとするならば、子どもが遊具で怪我をするリスクを公園側に責任を負わせようとする大人がいるんだとするならば、すべては非寛容な大人の問題、リスクを前提に考えることができない大人の問題なのかもしれません。
今回ご紹介した小俣氏の著書は、スポーツをする子どもを持つ親御さん、育成年代の指導に携わる方々にぜひお勧めしたい一冊です。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…
【関連書籍】
- 作者:奥田知靖/NPO法人バルシューレジャパン
- 出版社:創文企画
- 発売日: 2017年04月