サッカーとバスケ、この2つのスポーツの本質は近い。
私はサッカーの本質をテーマに書いていますが、バスケ関連の方々からもメッセージをいただくことがあります。
それほど大切にすべきポイントは似ているのだと思います。
今回はバスケのあるエピソードをご紹介します。
「勝つためには厳しさがないといけない」?
最近、とある大学生と話をしました。
その子はアメリカと日本のハーフで、小さい頃はアメリカで育ち、今は日本で暮らしています。
その子が日本に来たときのことを話してくれました。
「日本に来たらビックリしましたよ。指導者が選手に対して『おいー!!何やってんだよ!』と言ったりしているし、選手の意見を聞かずにただ怒鳴っていたりして、アメリカではそんなことなかった。アメリカのコーチも『Oh!!』って(頭を抱えながら)選手のミスに対してリアクションはしますよ。でも、絶対、選手と話し合います。自分の意見だけをぶつけるなんてことはなかった。『これ、日本の良くない習慣だよ』ってチームメイトに言っても『これが普通』みたいに言われて、僕、昔からこれはおかしいよって思ってたんですよ。『なんでシュート外すんだよー!』って言われても誰もわざと外そうとしてないよ」
ちなみに、その子は、かなりの強豪高校出身です。
確かに、強い高校だったけれど、監督の指示通りのプレーをさせられるだけで、自分で判断してプレーをする自由はなく、「型から外れたプレーをしてはいけない」という雰囲気があったそうです。
「勝つためには厳しさがないといけない」
そんな意見もあると思います。
でも、勝ちを目指す過程で、上手くなる楽しさ新しいことにチャレンジすることチームメイトと楽しくバスケをすることを無くしているチームは多いです。
それっておかしいことですよね。
バスケを始めた時は、誰もがバスケが好きとか楽しいという気持ちがあったのに、いつの間にか、大人からの社会からの圧力で、「楽しんでバスケをしてはいけない」という制限をかけてしまう。
勝ちを目指すことが悪いわけではないし、勝敗がないスポーツは面白くないですよね。
でも、 ただ勝つだけ というのも面白くない。
「勝つことが全てじゃない」なんていうと綺麗事に聞こえますが、勝つことで世の中の常識が作られるので、その子は勝つことを全力で目指しています。
「僕らみたいにバスケを楽しみながら、指導者の指示がなくても自由に判断をして、それで勝てば日本のバスケは変わりますよね。僕らが勝たないといけないですよね。だから勝ちたいです」
そんな彼は、監督とよく話し合っています。 お互いに歩み寄りながら、協力してチームを作っています。
「日本のバスケ」と聞いたとき、どんな事を思い浮かべますか?
とにかく練習がきつい監督の指示通りに動くだけ勝ちを目指して子供心を見失う そんなバスケを誰かに伝えたいと思わないですよね。
物事の価値を決めるのは、「後味」です。
たとえば、食べている最中は凄く美味しいけれど、食べ終わった後に、胃もたれをして何もやる気が起きなくなったら、それは「良い料理」とは言えません。
何かをやり終わった後に、自分のエネルギーが高まって、「誰かにこれを伝えたいなぁ」と思えるものが価値があるものです。
たとえ、試合に勝ったとしても、それが誰かに言われるがままに動いた結果で、楽しさがなかったり、自分でやったという実感がなければ、それは、本当に価値があるとは言えません。なぜなら、それは広まらないからです。
「こんなバスケが広まってほしいなぁ」と選手も指導者も思えるバスケが本当に価値があると僕は思います。
今はインターネットが発達をして、海外からの情報が沢山集まるようになっています。「ジュニア期の教育が大切だ」といって、海外のモデルを真似して、ピラミッド形式の組織を構築したり、海外の指導も取り入れられています。
その結果、トップ選手が生まれています。でも、その裏には、トップになれない選手が山ほどいてトップとの差に劣等感を感じている子供や教育の本質を見失っている指導者もいます。
「ジュニア期の教育を…」と言う前に、まずはそれを言っている大人自身がバスケを楽しんでいないと話にならないし、大人が楽しむから子供が楽しむようなそんな社会を作っていくべきだと思います。
武井壮さんは、それを5年半前から言っています。そして、今自分自身でそれを体現し続けています。
子供が輝くためには、大人が輝く。
「日本のバスケ」という言葉を聞いたとき、大人が子供に対して厳しさだけを教えるのではなくて、「大人が子供のように楽しんで学んでいる姿を子供に見せる」というものであってほしいですね。
なんのためにサッカーを教えるのか
これはサッカーに限らずバスケでもそうなのだけれど、子どもを強くさせる前にプレーする楽しさを、喜びを最大限感じさせることが大切なのだと思います。
サッカー文化を育むためにはサッカーの魅力を大人がしっかりと伝えなければなりません。しかし、日本にはサッカーの魅力を子どもに伝えることができる大人が少ないと感じます。サッカーを通じて子どもを強制、矯正しようとする大人を何百人と見てきました。
子どもにサッカーを好きになってもらうにはそのようなやり方ではダメなのです。
自分がまずプレーする喜びを表現すること。
そして子どもたちに表現させてあげることからスタートするのです。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…