アデマール・ペレイラ・マリーニョ、通称マリーニョさんの著書をご紹介したい。
マリーニョさんはJリーグ発足前から、日本に本場ブラジルのサッカーを伝えてくれた方で、サッカーの普及に大きく貢献された方でもある。
そんなマリーニョさんの本の一部を引用してご紹介させていただきます。
これまで多くの育成年代の指導者を見てきましたが、あまりにも多くの指導者がこのように考えているのです。
「子どもたちには苦しいトレーニングを用意しなければサッカーは上手くならない」
私自身、子どもの頃は喉が渇いても水を飲ませてもらえないこと、試合に負けた後に何十回もダッシュをさせられたこと、数え切れないほどあります。
根性と気合があれば勝てると言われ続けてきました。勝つために必死で練習しろ!と相手チームよりたくさん練習すれば絶対強くなると。
これらはもう20年以上前のことです。
今となっては練習量より質が大事であることは明白ですし、大人から強いられる外発的なメンタリティなどより、自分の内から湧き出る内発的なメンタリティが重要であることはよくわかっているわけです。
だからこそ、「苦しい練習をしないとサッカーが上手くならない」と当然のように言い切る指導者に対して違和感を感じるわけです。
マリーニョさんの著書にこんなことが書かれてました。
苦しんだ方がプロ選手になれる確率が少しでも高くなるのではないか、という人もいるでしょう。ここで、ブラジルの例をお話ししたいと思います。
ブラジルでは100%に近い男の子がサッカーをして、当然のようにプロ選手になることを夢に見ます。しかし、彼らのうち95%は練習をしたことがありません。すなわち、95%のサッカー少年は、厳しいトレーニングをしません。残りの5%も14歳ごろまでは練習や厳しいトレーニングをしません。
実際に、私自身、15歳になって初めて練習をしました。それまでは、仲間とサッカーをして遊んでいるだけでした。ブラジルでは、世界のほかの国と同じように、だいたい14~16歳ごろに、プロ選手になる才能があるかどうかを見極めることができるといわれています。14歳~16歳ごろになって才能がある子どもは、初めて練習を行い、苦しく厳しいトレーニングを積み、プロ選手を目指すことになります。言い換えれば、才能のある子どもだけが、苦しく厳しい練習をすることができるのです。
このブラジルの事例からわかることは、14歳ごろまでは練習をしなくても、プロサッカー選手になれるということです。むしろ、14歳ごろまで練習をしないでサッカーを「遊ぶ」ことが、自由な発想を身につけさせ、世界で活躍できるプロ選手を育てることに繋がっていると言えるかもしれません。だから、「苦しいトレーニングを経験した方がプロ選手になる確率が高くなるのではないか」という質問に対しては、「才能のある子どもが」トレーニングをすることでプロ選手になる確率が高くなるのだと言えるでしょう。
あまりにも多くの子どもたちが、苦しい練習をしないとサッカーが上手くならないと思い込まされているのではないかと思うのです。
指導者、あるいは親御さんがこのような発想からフリーにならなければならないと思います。
苦しみを強いる前に、まずは子どもたちにサッカーの魅力を、本質を伝えて欲しいと思います。アプローチを間違えてしまえば、子どもはサッカーが嫌いになって辞めてしまいます。そんな子が日本中にいるんです。一刻も早くこの現状を変えなければなりません。
この本には日本の育成年代を育んでいくために大切なことが書かれています。
ジュニア年代、ジュニアユース年代に携わる方はぜひ読んでいただければと思います。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…