今日ご紹介するのは、教育と芸術をテーマに国内外での展示や創作を続けている「Rin(りん)先生」こと井岡由実さんの本です。
りん先生のワークショップでは、子どもたちが、本当に「自由」です。
子どもに関わる、全ての大人に読んでほしい素晴らしい一冊です。
こころから何かに夢中になって「こうしたい」と思うことをそのとおりにできるとき、彼らは最もいきいきして、「自由」を感じています。そして「自由」の中にあるときにこそ、子どもたちは本来の力を発揮し、こころも頭も同時に動かしながら学んでいます。
この本を読み、小学校の授業参観で、娘が絵手紙を作った時のことを思い出しました。
その授業は地域の高齢者の方々が先生でした。
「できたらママにプレゼントするね」と娘が嬉しそうに水彩で色をつけた絵手紙。花も葉も茎もすべてが淡い色で、あたたかく、情緒豊かな彼女らしいとても優しい絵でした。そのとき、子どもたちの絵をみていた地域の方の一人が、娘に声をかけました。
「この葉っぱ、もう少しこの色とこの色を混ぜてこう塗ったほうがいいよ」
娘の筆をとって娘の作品に色をつけました。
「やめて!」
瞬間的にそう口にしそうになりましたが、間に合いませんでした。
そして娘も先生に言われたとおりに色をつけなおしました。
この本の著者、井岡さんは言います。
大人の考える「上手な」何か。
それは、子どもたちから「自由な表現」を奪ってしまいかねない恐ろしい呪いのようなものになるかもしれないのです。
大人が考える「上手な絵」に導こうとした結果、娘の澄んだ感性にあふれた作品は全く別のものになりました。
地域の方も、よかれと思ってしてくれたことだとわかっています。「もっといい作品にしてあげよう」という大人の優しさです。
でもそれは、時として子どもの感性を殺してしまう。
芸術だけでなく、教育でも、スポ―ツでも同じことが起こっているような気がします。
サッカーは、アートのようだと思います。
クリエイティブで、自由で、感情を爆発させ、自己を表現するもの。
でも、少年サッカーの現場においては
「このときはパスだ!」「〇〇に渡せ」「こっちに動け」と、大人の考える「上手なプレー」への過度な導き、大人の考える「正解」のプレーへのコントロールを目の当たりにすることがあります。
直感の世界で生きている子どもたちは、大人たちの「こうすべきだ」「こうしてほしい」という意図を見抜いています。
「こうでなければならない」といった大人側の「ねらい」に気づいてしまうと、それはもう遊びでも表現でもない、大人を喜ばせるためのゲームになりさがってしまう。
大人が伝える言葉が、子ども自身が感じるべき体験を、葛藤を、自由を、笑顔を奪っていないだろうか、と大人は少し立ち止まって考えてみないといけないのかもしれません。
そして、なにより心に響くこの言葉。
「うまくいかない」と葛藤する体験は、柔軟に発想を転換し、工夫する想像力を、「失敗は失敗じゃない、別の何かが生まれる瞬間だ」と知る体験を子どもたちに与えることができるのです。そのためには責任をもって最後まで経験させること。
私たちは、子どもを一表現者として尊重できているだろうか。 子どもたちに関わる私たち大人の感性が問われています。
プロフィール
サッカー少年の子どもを持つ母
子どもたちをもっと笑顔にするためには大人が変わらないといけない…
本には大人が変わるヒントがたくさん散りばめられています。
大人の心を育む本をご紹介していきます。
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