元サッカー日本代表監督の岡田武史さんと、野球界のレジェンド王貞治さんの対談本の一部をご紹介させてください。
この一節を読んで、私が、社会に感じる違和感、子どもたちに感じる違和感が少しクリアになったような気がします。
岡田:野球もサッカーもいまはしっかりした指導者のいるチームが各地にあって、用具やユニフォームだって本格的です。すごく恵まれた環境だと思います。
王:栄養失調の子だって珍しくなかった昔に比べれば、みんな身体も大きいし、小学生でも技術的にすごくレベルアップしています。
岡田:ただ、いまの豊かな日本の社会では、子ども特有の、身体の内側からわき出すエネルギー、つまり「生きる力」みたいなものが足りないのではないかと、僕はずっと気になっているんです。
戦後、日本の子どもは貧しい中でも、たくましく育ってきたわけです。
いまは遊びであっても、「とにかく危険なことはするな」の大合唱で、何もやらせてもらえません。むしろ、なにもしないでも生きていける世の中です。コンビニに行けば、大概のものはすぐ手に入るし、ゲームセンターへ行けば時間もつぶせる。何かを試したり、挑戦したりする気が失せてしまうのも、わからなくはありません。ひきこもりが何十万人にも増えた原因のひとつは、そういうところにあるのではないでしょうか。
ーー中略ーー
いまの日本では、子どもたちが本来持っているはずの「やってみたい」という意欲を自然な形で刺激したり、発揮させたりする機会が少ない。それは彼らが悪いわけじゃなくて、日本がいつの間にか便利、快適、安全しか認めない、ぬるま湯のような社会になってしまったからだと思います。
戦後、多くの日本人がよかれと思ってつくってきた社会が、実は子どもたちから生きる力を奪い、自分の可能性にチャレンジするチャンスを遠ざけている面があるんじゃないかと僕は思います。
「もの足りなさ」を感じる理由
日本の子どもたちと、南米の子どもたちの違いを現地でみたり、国際大会でそれこそ試合をみて感じるのですが、自分の内から湧き出るなにかを表現するという、なんというか人間の本質的な力の違いを感じるわけです。これは大人も同じで、私が南米の仲間たちとサッカーの試合をすると生きてる時間を感じることができるのですが、やっぱり日本だと教育の影響や同調圧力などがあるからか、どうしても制御されてしまって感情を表現することが自然にできないことが多いと思います。
そんな環境で育つ子どもたちに、もの足りなさを感じる理由は、まさに内側から湧き出る力だったりするわけです。
サッカーが上手い子はとても増えました。でも、自分の内側を出せる子が少なくなってしまった。日本が便利で快適になりすぎてしまって、内側のものを出さずともなんとなく生きることができる社会になってしまったからなのかもしれません。
岡田さんと王さんの人生経験を踏まえた対談、とても深く学びが多いのでぜひ読んでいただきたいです。
【関連書籍】

お父さんに読んでほしい「生きる力」を引き出すヒント!その秘密は家にあった!
- 作者:アイフルホーム・キッズデザイン研究所
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- 作者:アイフルホーム・キッズデザイン研究所
- 出版社:CCCメディアハウス
- 発売日: 2012年09月

- 作者:岡田武史/志岐幸子
- 出版社:日経BPM(日本経済新聞出版本部)
- 発売日: 2008年02月