静岡県の西の方で、浜松プレーパークという子どもたちの遊び場兼不定期公園サッカーの会を主催している保育士です。
私は、今年の4月から市内のフリースクールで、小中学生の女の子たちのサポートをしています。
フリースクールとは、いわゆる地域の学校という大集団では、安心して過ごすことが出来ず、居場所を求めてやってくる子どもたちの育ちの場所です。
のんびり、まったり、自分のペースで共に育つ場です。
スタッフは、一人ひとりの思いや考えに丁寧に寄り添って、どうしたらその子らしく過ごせるかを一番に考えて、様々な支援の中で活動を行っています。
私は名目上は、女の子たちの運動遊びサポートスタッフとなっていますが、必ずしもそうではなくて、時には話し相手になったり、一緒に絵を描いたり、外出したり、色々なことをして育ちのサポートが出来るよう関わっています。
いつもは、色々な困難さや生きづらさを抱えている子どもたち。
正直、距離感をどのようにとってあげたら良いのか、慣れるまでは難しく、戸惑うこともありました。もちろん今だって悩むことはしょっちゅうです。
でも、とても素直で純粋で、ちょっとだけ繊細な子どもたち。
一緒の時間を共有していると、とても愛おしい。
この子達が将来も幸せに生きていてほしい、と心の底から感じます。
先日、市民プールに行きました。
楽しみすぎて眠れなかった、と教えてくれた小学校3年生の女の子。いつもは、決して
口数が多いとは言えない子もいるけれど、その日は違いました。
水に浮かんで、流れに身を任せて、ただそれだけのことなのに、皆笑っていました。
楽しい!と言って笑っていました。
私は、彼女たちの笑顔が眩しすぎて、泣きそうになりました。
先日、フリースクールとは別の知り合いの、1年生の男の子のお母さんからこんな話を聞きました。
「サッカーは大好き(特に試合)なのですが、順番や約束事の多い練習は苦手なことも多くて、コーチからは注意されてばっかりです。本人がどう感じているかはわからないですが…。(笑)またお話しましょう!」
何だがやりきれない気持ちになって、
思わずこのように返事をしました。
「本来なら順番や約束事など必要最小限で練習も楽しめるはずだと思います。
スポーツってそもそも遊びです。楽しいって感じることが一番です。」
気がかりだったので、信頼している知り合いの指導者の方にも聞いてみました。
「順番や約束事がそもそも必要ないんですが、どうしても必要と感じるなら、どうしてその子が苦手なのか?コーチが理解してあげる必要がありますね」
と丁寧にお返事をくれました。こんな素晴らしい指導者に全ての子どもたちが出会って欲しいです。
先日の市民プールで、女の子たちは、浮き輪に浮かんで、泳ぎ方もめちゃくちゃだけど、もぐったり、歩いたり、お友だちと水中にらめっこしたり、時には泳ぎ方をみせあったり、水と戯れるって言葉がぴったりくるくらい、本当に楽しんでいました。
息継ぎってどうやるの?と水泳の経験がある中学生の子に小学5年生の子が聞いて、教えてもらったりしていました。とっても優しく丁寧に。
実は、私も泳げないのです。顔を付けるのだって怖い。でも泳ぐことへの憧れはあります。中学生の女の子にその話をすると、まずは顔つけからやってみなよ、と諭されました。
泳ぎなんて、めっちゃくちゃだけど、みんなと水の中で体を動かして、笑って、とても幸せな時間でした。
思わず、皆の笑顔が眩しいって、ある一人の中学生の女の子に私が伝えたら、とびきりの笑顔がかえってきて、泣きそうになりました。その子は、とっても繊細で、些細なことが気になって、つまずいて、色んな心配があって、今はそれを一つひとつ丁寧に周りの人に自分が伝えるってことを、一生懸命やっている子でした。
その子が、最高の笑顔で、私の隣で水に浮いていたので、心が熱くなりました。
スポーツは、人の気持ちを開放する不思議な力があります。体を動かしていると、気持ちも解放されて、喜びや楽しさ、普段うまく表現できない感情も、素直にストレートに表現できたりします。誰かと喜び合って人と繋がれたりもします。
それが、スポーツが本来持つ価値なのかなと今は感じます。
体を動かして、誰かとただただサッカーを楽しむのに、順番や約束事が第一優先になってしまう今の少年スポーツの現場は悲しいです。
時には、明確なルールが必要かもしれません。
でも、それはあくまでその場にいるみんなが、そのスポーツを楽しむためだということを指導者は忘れてはいけません。
そのルールは本当に必要なのか?
その順番待ちは別の方法で解消できないのか?
常に大人が考えなくては、いけないはずです。
ルールを守らせるための練習なら、そんなに悲しいことはありません。
そのスポーツをより楽しむための練習であって欲しいし、そのために皆が集ってきている大事な時間だということを大人は忘れてはいけないと思います。
大人の、自己満足を満たすための時間にしてはいけないと思います。
子どもたちがサッカー大好きという気持ちを満たしたり、誰かとプレーする喜びをわかちあう時間であって欲しいです。
先日パリサンジェルマンのスター選手が来日した際に、小学生の子が聞きました。
「小学生のうちにできるようになった方がいい技は?」
そしたら、彼らはこう言ったのです。
「この時期に重要なのは、何より楽しむこと。サッカーを楽しんで欲しい。」と。
その言葉がどれだけの重みがあるのかを、私たち大人は真剣に考えなくてはならないと思います。
市民プールで、泳ぎも何もかも決して整っているとは言い難いけれど、楽しいって水に浮かんでいたあの子たちの愛おしい姿は、大切にしなくてはならないなと、強く心に刻みました。
そんなことを大事にできる大人の輪が少しでも広がりますように!
ライタープロフィール
息子のサッカーを見て感じた違和感、サッカーで苦しんでしまう子どもたちを減らしたい。そんな思いから、浜松プレーパーク(hamamatsu_play_park)という公園サッカーの会を企画しています。