大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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言語と思考の繋がり、そしてサッカーとの繋がり

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子供達のサッカーを見ていて、海外でサッカーをするにはその国のサッカーを理解することが大切だと感じます。そのためにはその国の人たちとコミュニケーションを取り、プレーの背景にある考え方を知る事が必要。ということは、その国の言葉を理解することが重要になります。今回は言葉=言語についてドイツで私が気づいたことを少し深くお伝えしていきたいと思います。

【目次】

 

「日本のサッカーと海外のサッカーは違う」

テレビや様々な記事を見ていると日本と海外の両方を経験したほとんどの選手や指導者がこのように言っています。ではどうして違うのでしょうか。多くの人が「文化が違うから」という事をあげると思います。ここでいう文化とはサッカー文化だけではなく、国の文化全体として捉えていいと思います。なぜならサッカー文化も結局その国の文化そのものの影響を受けているからです。では文化とは何なのでしょうか。

「文化とは、複数名により構成される社会の中で共有される考え方や価値基準の体系のことである。文化は民族や社会の風習・伝統・思考方法・価値観などの総称で、世代を通じて伝承されていくものを意味する。」

実用日本語表現辞典にあり、私は特に「思考の違い」が文化の違いに大きく影響しているのではと感じています。ではどうして思考が違うのか、様々な事が影響していると思いますが、一つに、言語の違いがあるのではと感じています。

私はこのことを子供達の変化から感じました。私の息子は6歳でドイツに来ましたが、8歳まで学校は日本人学校、日本人家庭なのでドイツにいるとはいえ、ほぼ全て日本語環境及び日本の文化での生活でした(サッカー以外は)。その後ドイツの現地校への編入を機に、ドイツ語ドイツ文化の環境に入った息子の変化を感じていきます。全ての変化をここで説明するのは難しいですが大きな事をいくつか挙げると、よく話す=アウトプットするようになった、自分で考え意見を持ちはっきり発言するようになった(あいまい表現ではなくはっきりと)、そして自己肯定感が生まれてきました。またこの頃から判断力そして問題解決能力や柔軟な思考もできるようになり学力も伸びてきたと感じていますし、それと共にドイツのサッカーの理解も深まっていったと思います。これらの変化そして成長は、ドイツの教育の影響や年齢的な成長もあると思うのですが、ドイツ語が身に付いてからだと感じたため、言語習得というのは一つキーなのではと思い色々調べました。その中で、私が感じた事を少しお伝えしたいと思います。

 

1.言語と思考の繋がり、言語が違うと思考も違う

「サピア・ウォーフの仮説(言語的相対論)」というのをご存じでしょうか?「言語と思考」について調べているとよく出てくるのですが、1930年代にベンジャミン・ウォーフとエドワード・サピアという2人の学者が「個人が使用できる言語によってその個人の思考が影響を受けている」と主張したものです。これを見た時、息子の変化と繋がりました。またよく「言語を学ぶという事は文化を学ぶという事」といいますが、これも正しそうです。つまり上記に書いたように文化は思考と繋がっているのであれば、その国の言語を理解するというのは、その国の思考を理解するという事にもなるからです。

 

2.日本語と英語の違い(例として)

英語と日本語は、文字・単語・文法=言語の構造が違い、これにより表現の仕方も変わります。私が感じるポイントは、日本語は「主語が無くても話せる(主語が明確ではない)曖昧な表現が多い。細かい部分まで繊細な表現ができる。漢字とひらがなの組み合わせで表現が多岐にわたる。漢字を使用する事により読むことが早くできる」英語は「主語がないと会話が成り立たない場合が多い(主語が明確)。クリアに表現する、曖昧な表現、繊細な表現は難しい」等。私自身、英語を話す時は日本語を話す時よりも主語や目的語を意識しますし、また、Yes、Noもはっきり答えるので、日本語より英語の方がはっきりと明確な表現をする言語だと感じています。

実はドイツ語と英語は同じゲルマン語系の言語でつながりが多く、ドイツ人もYes、Noははっきり言います。ところが、同じ語系でもドイツ語の方が英語よりも動詞の数が多く、ドイツ語はできるだけ同じ単語での表現を繰り返さないのも特徴で表現方法も英語より多岐にわたります。また英語よりも品詞の変化が多く複雑な言語ではあり、ドイツ人の友人が「英語はドイツ語よりも簡単且つよりダイレクトな言語。だから世界共通言語として使われている」と言われて「なるほど!」と思いました。

息子は既にドイツ語と日本語のバイリンガルとなってると感じますが、最近彼にどちらの言語の方が話しやすいかと聞いたことがありました。すると、しばらく考えて「ドイツ語」と答えたのです。私は母国語よりドイツ語が優位になったのかと思いビックリしたのですが、よく聞いたらそうではありませんでした。

言葉を話すこと自体はドイツ語でも日本語でもどちらでも変わらないと。語彙の数で言うと日本語の方が多い気がするので、日本語の方が細かく表現できるかもと言っていました。ではどうしてドイツ語の方が話しやすいといったかというと、自分の思った事感じた事ををはっきり明確に相手に言う事ができるので、話しやすいのはドイツ語と答えたとのこと。これを聞いた時、言葉の話しやすさ使いやすさは、その言語をどれだけ流暢に話せるか以外の要素がある、言語の特徴によって変わる事があるのだと気づきました。

確かに使う言語が曖昧表現が少なければ必然的によりクリアな表現になり、そういったコミュニケーションが生まれる。つまり言語が変わればコミュニケーションの取り方も変わるという事にもなります。日本人が海外のコミュニケーションがダイレクトでビックリする事があると思いますが、これは言語の性質でもあるという事だと思います。また、ダイレクトに伝える言語だからこそ、人と会って話す、目を見て話す、心を込め言葉を発するそして表情で話すという事も大事にしているのかもしれないとドイツでのコミュニケーションをみてると感じるのです。

 

3.モノリンガルとバイリンガル、またはそれ以上の言語を話す人たちの違い

実は世界全体で見た時には、モノリンガル=1か国語のみ話す人より、2か国語以上話す人の方が多いのです、割合にするとモノリンガルは40%、バイリンガル以上は60%と言われます。実は日本語だけ話す日本人はマイノリティの方になるという事なのです。また、モノリンガルとバイリンガルでは脳の影響で様々な違いがあり、母国語以外の他言語が話せる事は脳にいいとも言われるようです。以下にいくつか挙げると、

・脳のワーキングメモリの活性化

・高齢になっても脳が衰えにくくアルツハイマー認知症の発症がモノリンガルより5年遅い事や、発症後の進行も遅いと言われている

・認識の柔軟性が高い

・問題解決能力に優れている、物事を理性的に考え、判断する力に優れている

・他者に共感する能力に優れている

・物事の優先度を識別する能力、複数の作業を同時にこなす能力が高い、切り替えが得意

・注意力・音節を判断する力に優れている

等。大人になってからでも他言語を学ぶ事は、柔軟な思考や価値観を広げる事に繋がるのでメリットは十分にあると思います。またバイリンガルとまでいかなくとも、継続的に他言語を学習し、違った言語で考える事で脳を動かすことになり脳が変化するようです。またこれらのメリットはサッカーでも重要となる要素であると感じました。実際、世界で活躍するサッカー選手は2か国以上話せる選手が多いと思います。

参考1:外国語が話せると脳にいい7つの証拠 | ハフポスト LIFE

参考2:バイリンガルの脳は特別か-多言語使用の脳科学- | 脳科学メディア

参考3:【脳外科医が解説】バイリンガル脳の構造や特徴、育て方とは

参考4:なぜ「2カ国語を話す」ことは頭の回転を速くし脳を若いままで保つと言われるのか? - GIGAZINE

4.セミリンガル=ダブルリミテッド

上記で母国語以外の外国語を身に付けるメリットを述べましたが、同時に気を付けなければならないこともあります。母国語がしっかりと身に付く前にあまりに他の言語を学ぶことに注力しすぎると、どの言語も中途半端な状態になることがあるのです。

そうすると思考力が落ち学力低下を招くと共に情緒不安定にもなるようで、自分の思っていることを全て言える軸となる言語を1つ以上持つ事が大事なようです。セミリンガル=ダブルリミテッドはドイツ社会にもあります。

ドイツ人家庭は家庭内も学校もドイツ語なので軸の言語ができていますが、ドイツは様々な国の人たちが暮らしているため、家では違う言語という家庭も多いです。そういった家庭にこれらの事を感じる事がありますし、実は2歳でドイツに来た娘が3~4歳の時にドイツ語も日本語もどちらも微妙になった時期があり言語聴覚士さんに診てもらった事があります。その際にこのダブルリミテッドの事を教えていただきました。それから数年、娘は日本語を軸の言葉にするため、ドイツの幼稚園の時間を減らし、読み聞かせとコミュニケーションを中心に日本語習得に努めました。すると、面白い事に日本語が伸びるとドイツ語も伸びてきたのです。

小学校に上がるころには日本語が年齢相応まで上達しました。そして今娘はどちらの言語もほぼ年齢相応になっており、ドイツ語は学校で日本語は家庭で継続学習をすることで言語のレベルアップを続けています。子供達の言語の発達を見ていて、とても大事だと思うのがコミュニケーションと本を読むことだと感じています。

 

5.1つの外国語習得からの広がり

ドイツでは小学校3年から外国語学習が始まります。まずは英語学習から始め、中等教育に入ると6年生から第2外国語としてラテン語かフランス語の選択をするところが多いです。(フランス国境近くはまずフランス語、その後に英語となるところもあるようです)。この学び方にも意味があると感じています。

まずは小学校から第一外国語としてドイツ語と同じ語系の英語から学ぶ。英語はドイツ語よりも簡単なため学びやすいと感じますし、ドイツ人は学校のレベルにより差はありますが、学校の授業だけで英語が話せるようになります。(大学進学を目指すギムナジウムでは英語でディスカッションができるレベルまで)

その後6年からはラテン語かフランス語を学びます。フランス語はラテン語系になるのですが、あえてフランス語を切り出しているのはラテン語系でもフランス語は少し特殊且つEU=欧州連合での高い地位にある共通言語の一つだからなのでは?と思っています。(英語、ドイツ語、フランス語の3つがEUで高い地位の言語のようです)そして、フランス語を学ぶと同じラテン語系のスペイン語、イタリア語、ポルトガル語の習得がしやすくなります。このようにして、一つの外国語習得から様々な広がりが出てきます。

 

これらから感じるのは、他の言語を身に付ける事は他の国の人とコミュニケーションが取れるという表面的な事だけではないという事です。他の「文化=思考」の理解にもなり、またこれが日本人に足りない部分である多様性の認識にも大きな影響を与えると感じますし、また2でお伝えしたような脳の繋がりもあるという事です。他言語学習を勉強という形ではなく様々な繋がりと得られることの多さを理解して行うと、もっともっと楽しくなるのではないかと思います。またこれからの将来の事を考えても、サッカーの事を考えてもプラスに働くと感じます。

 

ライタープロフィール

2015年~ドイツで家族四人で暮らしています。ドイツでの生活・子育てそしてサッカー環境を通して見える日本との違いから、日本の魅力や足りない部分を再認識できると共に、新たな発見もあります。他との違いの認識と分析が客観的思考と多様性の認識につながるように、サッカー環境、文化の違いを書いていきたいと思います。

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