大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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バルセロナはフットボールだけを教えない 〜FCバルセロナキャンプで学んだフットボールの本質 Part.5〜

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最終回となるPart5は

バルセロナが大切にしている5つの価値観や、マネジメント法、練習メニューの統一化や目標達成のためにチームとして大事にしていることなど、コーチと話した内容をまとめた総括編になります。

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バルセロナには現在のバルサを支える5つの価値観をご紹介します。

バルサの5つの価値観 

・Humilidad(謙虚さ)

 

・Esfuerzo(努力) 目的、目標に向かって努力すること

 

・Ambición(野心) 満足せず、より高みを目指す事

 

・Respeto(仲間やルールを尊重すること) コーチや仲間を尊重する事

 

・Trabajo en equipo(チームワーク) 自分の力を最大限発揮し、チームの力になる事

 

キャンプ中はトレーニングごとに5つの中からテーマを決めて、そのテーマを意識させた練習を行いました。

この5つの価値観はサッカーに限らず、人生において大きく役立つ価値観になります。

バルセロナはフットボールだけを教えない

バルセロナの下部組織でプレーしている選手でさえ、フットボーラーとして成功できる確率が限りなく低いことがわかっているから、バルサのコーチは“尊敬できるカッコいい大人”を育成しながら、フットボールも同時に教えている。そんなスタンスだと感じました。

 

Humilidad(謙虚さ)

謙虚であること、つまり慢心しないこと。

常に自分に向上の余地があると考えながら生きることです。

しかし、謙虚であることと、遠慮することは違うということはヨーロッパでプレーしている時に学びました。

言葉も文化もわからなかった時の初めての練習、僕はコミュニケーションが取れないことを言い訳に黙ってプレーしていました。

するとコーチがつたない英語で

 

「もっと熱くプレーするんだ。勝つの好きだろ?勝つためにプレーしなさい。勝ちに飢えてるならズルいこともできるはずだ。」

 

と言ってくれた。

僕はあの時、“遠慮”していた。謙虚ではなかった。

“勝ちに飢えているならズルいこともできるはずだ”というのはズルを肯定しているのではなく、ズルしてでも勝ちたいという気持ちを持ってプレーすることなのです。

日本の選手とヨーロッパの選手の大きな違いはそこにあるのではないかと思うのです。

練習中に取っ組み合いの喧嘩や削りあい、激しい口喧嘩は日常茶飯事でした。

でも彼らは謙虚だった。

常に、向上しようと、プレーを改善しようとしていて、勝つために自分なりのベストを尽くしていました。それが謙虚であることなのだと思います。

遠慮はできるのにやらないこと、最大の結果を出せるのに、引っ込んでいてそれを出さないことだと思う。日本では、謙虚であること=遠慮することになってしまう場面があるけれど、謙虚と遠慮はイコールではないのです。

勝つためにベストを尽くせて、謙虚な選手が出てくれば、確実に日本のサッカーはいい方に変化すると思います。

自分の海外でのサッカー経験とバルセロナの通訳経験でリンクした瞬間でした。

 

 

Esfuerzo(努力) 目的、目標に向かって努力すること

努力とは、目的を達成するにあたって、より良い手段を探すことです。

僕は、“頑張ること”は努力ではないと思います。

バルサのコーチはしきりに、動き回る選手に、“自分のポジションに留まってでボールを待つ“ことを教えていました。選手はボールに絡もうと、走って運動量を上げようと“努力しているつもり”だったけれど、それは頑張っているけれど、努力ではなかったように思います。このように、自分が”努力していると思っている状況“でも、努力ではなかったり、それどころか逆に状況を悪化させていることがあるということも知らなくてはいけない。それと同時に”正しい努力ができる人“になろうと思った。

バルサのコーチの声かけ、練習メニューを見て、最高の結果を出すためにできることを見つけ、手段を探し、自分の能力を上げるためにする個人的な取り組みを大切にしていた。それこそが努力であると。

 

Ambición(野心) 満足せず、より高みを目指す事

野心とは、現状に満足せずに上を目指すこと。

ゴールという目的を達成しても満足せずに、さらにもう1点取れるようにプレーすること。

そして、試合に勝っても、また次の試合でも勝ちたいと思うこと。

バルセロナのコーチが面白いことを言っていた。

 

「日本の子達は野心が少ないとういうか、野心というものが育っていないよね。例えば難しいチャレンジには3点、それ以外は1点というルールをつけてゲームをやっても“難しいから”っていう理由で安全に攻めてチャレンジしないよね?スペインだと3点のルールを作ったらまずは、みんな最大の得点数である3点をどうやったら取れるか考えるし、みんな勝ちたいからバシバシシュートを打つんだ。みんなそれしか狙わないんだよ!」

 

「だって、どっちみちゴールを決めるのは難しいんだから、なるべく多くのゴールを取った方が勝つ確率は高い。 スペインの子達はまず、「勝負に勝ちたい!」から、もっと状況をよく見ること、確率を考えること、どこにより良い選択肢があるのか?を教えられるんだ。でも日本ではそうはいかない。3点取れるルールがあるのに、有効活用しようとしてる選手がすごく少ない。そして、シュートを打てるのに、形にこだわてパスをする。それじゃダメだよ。もっと勝ちたい気持ち、ゴールを決めたいっていう気持ちがベースにないと、勝負はできない。」

 

「だから、まずは子供達に、自分を解放させてあげること、勝ちに飢えて貪欲にプレーしていいんだっていうことを気づかせてあげること、そこからアプローチするべきだっていうのを今回学んだよ。状況判断や学ぶ姿勢はすでに素晴らしいから、自分を解放すること、フットボールをしっかり教えること。それが今の日本には必要だと思う。文化が違う国だからスペインのやり方をそのまま真似するのは良くない。僕たちから学べるところはあると思うけど、うわべだけのパス回しや、テクニックだけを学んでも意味はない。日本人の方が“パス回し”は上手だからね」

 

フットボールはその国の文化や国民性が反映されるスポーツです。

勝つためには、ゲームのルールを知り、有効活用すること。自分たちと対戦相手をよく知ること。絶えず変わりゆく状況の中で最善の判断をすることが求められるスポーツなのです。

その中で、“野心をどれだけ持ち続けられるか”が大きなカギになるのです。

 

Respeto(仲間やルールを尊重すること) コーチや仲間を尊重する事

リスペクトとは、仲間や、ルール、意見、相手を尊重すること。

コーチが話していれば、話している間は黙ってよく話を聞くこと、チームメイトが話しているならば同じように話を聞く。チームの規律に沿った行動をとることや、試合後に相手選手らの健闘を讃えるのもリスペクトの一部。

バルサのコーチが、「日本の子供達はいい子ばかりだよね!練習態度が素晴らしいし、みんなコーチの話しをしっかり聞いていて素晴らしいよ!」と言っていたのだが、僕は、話を聞いている理由まで見る必要があるように感じている。

日本の教育で、真面目そうに振舞っていればある程度先生からも気に入られるし、話を聞いていないと怒られるから話を聞いているというケースは多いと思います。

スペイン、イタリアの子供達は “自分に興味がある” もしくは “自分のためになることしか聞かない” 傾向があるので、話し手が説得力と威厳を持たないと、選手がついてこないんです。そのためにコーチはどう振る舞うか、何を言うか、どう勝たせるかを考えなければならない。

日本はスタートがまず話を聞きましょう!なので、背筋をのばして、誰から見ても話を聞いているように見える状態を作る。 “聞いているふりをしていて、実は聞いていない” が起こり得る。

選手に伝わっているのかも判断するのが難しい。

リスペクトしているふり。が起こり得る。

 

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相手へのリスペクト。

自分たちの勝利を喜びながらも、同じフィールドで戦った相手の健闘を讃えるといこと。

ライバルにも気を配れ、励ますことができる人間性もサッカーから学ぶことができると思います。

 

Trabajo en equipo(チームワーク) 自分の力を最大化し、チームの力になる事

自分の求められている役割でベストを尽くし、チームの目的に貢献すること。

欧州と日本で、チームワークの概念が違うように思います。“日本ではみんなで頑張ろう” といって、空気を読みながらみんなでなるべく同じことを頑張るというイメージだけど、バルサにおけるチームワークとは、自分の特徴、持てる力を最大限発揮しチームに貢献する。(自分のやるべきことがあり、他人にもやるべきことがある。そして他人と自分の役割は全く違う)そして、チームの目的達成に貢献することを大事にする。

みんなで同じように頑張るというよりも、個人個人がまず、自分のやるべきことを全うし、得意なことでチームのために力を発揮する。

苦手なことは、得意な人に任せる。それが本当のチームであると。

僕が、イタリアでプレーしていた時、ステファノというベネズエラ人の選手とピッチ内でとても相性が良く、協力しあってプレーできていました。彼はトップ下、僕はウイング。

彼はクラシカルな10番タイプで、あまり動くことなく真ん中にとどまり、相手をいなしながら、精度の高いロングパスやスルーパスを通すタイプ。

僕は動き出しから裏をとってゴールに向かうプレーが得意でした。

彼とは徹底的に話しました。

「ステファノが自陣でボールを持った時、相手の裏にスペースがあったら裏でもらうから、すぐにボールを出してくれ、スペースがなかったらボールを受けれる位置に行くから、状況次第で使ってくれ。右サイドにボールがある時、俺は、めいっぱい開いてるから適当に蹴ってくれれば俺がボールを拾う。ゴール前ではシュートを打てたらいいけど、相手が密集してたら俺が斜めに走るから、ループで相手の裏に出してくれ。」

 

ステファノの武器はパス、アシストで、僕に協力することによってチームに貢献できるから、快く僕の提案を受け入れてくれた。

自分の持ち味を最大化すること、苦手なプレーはしないこと。

それがベストを尽くすということだと僕は思う。

それぞれができることにベストを尽くし、あとは監督がそれをマネジメントする。

 

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バルサのマネジメント法

 

バルサのコーチはフットボールを選手に気づかせながら教えるのがうまい。

練習中にうまくいかない光景を目にしたら、選手に質問をする。その質問も、うまくコーチが伝えたい意図が選手たちの口から出るように促された質問であるということ。

選手たちは自分で考えて答えを出しているので、“やらされている”練習にならない。そして、うまくいったらめちゃくちゃ褒める。そしてコーチが喜ぶ。子供達は、自分たちのプレーでコーチが喜んでいるのを見て、もっとやろうとチャレンジしていました。それがとてもいい循環を作っていました。

 

「日本の子供ってなんでゴール入っても喜ばないの?」

 

バルサのコーチは、「フットボールの醍醐味はゴールを奪うことで、ゴールを奪うことが一番難しいのに、ゴールを決めても喜びを爆発させないなんてちょっと変だね。」と言っていた。

そこで、バルサコーチがキャンプ全体で決めたルールがあります。

「ゴールが決まったらチームのみんなで抱き合って喜ぶこと。」もし喜ばなかったら1点はなし。こんなの意味なくない?って思う人もいると思いますが、かなり効果的でした。

最初は、みんな恥ずかしがってなかなか喜ばないし、喜び方もぎこちない。

だけど、だんだんと少しづつ、子供が自然に喜びを表に出してくるようになってから、プレーが変わっていきました。積極的にプレーするようになったし、勝負にこだわってプレーするようになりました。

フットボールは、「まず、自分を解放すること」が最重要なのです。

喜べないこと、感情表現できないことにはフットボールはできないのです。

技術とか戦術とか細かいことよりも大切なことがあります。

 

 

 

バルサのコーチも国が変わると、指導法や声かけも変わると言っていました。

指導をするには、日本という国の歴史、文化、教育の移り変わり、国民性を知ることが大切なのではないかと思いました。

 

いろんな国に行って気づいたことがあります。どこの国でも共通していることが一つだけあります。 

それは、、、

 

「小さい子供の態度」です。

 

どこの国も、話す言葉が違えど、小さい子供はうるさいし、天真爛漫だし、機嫌が悪くなるとグズるし、お腹が空くと機嫌が悪くなります。

だけど、そこに教育や文化が介入して、真っ白の子供に色がついていく。“多様性”が受け入れられやすい欧州では、子供が興味を持った色に染まることを社会が許し、青色や、赤色、黄色などのいろんな色の大人になっていきます。しかし、日本はどうでしょうか?出る杭は打つ、同調圧力が問題になるように多様性が受け入れられにくいと感じます。

 

 

“他人が決めた理想“になろうとしている子供達がフットボールが上手くなるためには、まず、自分を開放してもいいんだよ。ということを大人が示さなくてはならないのです。

  

バルサが目標達成のためにチームとして大切にしていること

 

シンプルだけど、全ての物事に共通すること。

そして、世界トップのフットボールクラブが当たり前にやっていることは、他の分野でも活かせると思います。

 

ライタープロフィール

佐藤 靖晟 21歳
高校卒業後イタリアに渡り1シーズン半、今年からスペインに移籍してプレー。

佐藤 靖晟 (@92670731) | Twitter

 

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