大人になってから学ぶサッカーの本質とは

日本にいながら外国人リーグでプレーする私の目から見るサッカーの本質とは… 元サッカー選手、元サッカーコーチ、中南米放浪サッカー経験者として好き勝手語らせて頂きやす

FCバルセロナキャンプで学んだフットボールの本質 Part.1 〜世界トップクラブの選手育成法とは〜

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 FCバルセロナキャンプが今夏も開催された。

このキャンプは通常4日間、午前2時間、午後2時間の2部練習という形で日本各地で開催され、スペイン、バルセロナから実際にコーチが来日し、日本の子供たちにトレーニングセッションを行う形になっている。

僕はスペイン人コーチの通訳として約1ヶ月間、東日本周りのバルサキャンプに帯同した。

そこで感じた、世界トップの育成方法や、選手のマネジメント法、チームビルディングやチームとしての勝ち方、などを世界トップレベルの素晴らしいクラブから学ぶことができたので、5回にわたって書きたいと思う。

 

Part1〜Part4は、

バルサキャンプの初日で行われる練習や、そこでのコーチの発言、僕が感じたスペインと日本のサッカー観の違いをまとめたもの

 

そしてPart5は

バルセロナが大切にしている5つの価値観や、マネジメント法、練習メニューの統一化や目標達成のためにチームとして大事にしていることなどをコーチと話した内容からまとめた総括編

 

初回はバルサキャンプの初日で行われる練習について書きました。

 

バルサキャンプ初日

バルサキャンプの1日目ではまず、

 Creación del espacio,ocupación del espacio

(スペースを作ること。そして、そのスペースを使うこと)

をはじめに教える。

 

ウォーミングアップはリフティング。

これは本当に遊びというか体を温め、ボールフィーリングを確かめる程度の目的でやる。

子供たちが何回できているかに目を光らせることなんて全くない。

あくまでウォーミングアップだ。

 

数あるキャンプの中の数個の練習メニューを抜粋して紹介したい。

始めの練習

1つのグリットを4つに分けた中での3対1のボール回し。

その際4グリットに対し3人の選手がいて、1グリットが余る。

その余ったグリットでボールを受けれたら攻撃側の得点となる。

守備の選手はボールを奪ったら、奪ってない残りの2選手のうちどちらかにパスを出したらボールを奪った相手と交代になる。

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そのトレーニングの際にコーチと話した内容がこちら。

 

バルサコーチ

「まずスペースを作れないとボールを失うし、そのスペースを使わないと相手のゴールまでたどり着けない。だからまずこれを教えるんだ。」

 

「日本の小学生年代のクラブの多くは、小学生に戦術なんか教えても分かるわけがないとリフティングや対面パス、そしてコーンをドリブルでかわすボール扱いを向上させる練習が多いんだよ」

 

バルサコーチ

「あー!だからみんなボール扱いは上手いんだね!けど戦術を理解するのはボール扱いと同じかそれ以上に大事だよ。 メッシがスペースを見つけられなくて、そのスペースの使い方を知らなかったとしたら、今のメッシになってるか?」

 

「なっていないね。だけどボール扱いの技術も大切だと思わない?」

 

バルサコーチ

「そりゃーもちろん!でもそれってこういうトレーニングやゲームでトライできるし、ミスしてもそこから学べるでしょ?試合の状況で使える技術じゃないと意味ないよ!」

  

確かに日本の子たちのボール扱いは上手かったけれど、この最初の練習でスペースをどう作るのか、そしてそのスペースでどうやったらボールを受けて1点取れるのかを理解している選手はいませんでした。

  

後の記事にも詳しく書くきますが、バルサのコーチは練習中にたくさん質問する。

正解していようが間違っていようが、子ども自身で答えや仮説を見つけさせ、どうやったら自分のプレーがより上手くいくかを考えさせるのだ。

そこで話し始めたバルサコーチ。

 

「この練習ってどうやったら1点入るかな?」

 

子供

「空いてるグランドでボールをもらったら!」

 

バルサコーチ

「そうだよね!!じゃあ自分がやっているボールのもらい方とボールの位置、相手の位置はどうかな?止まってボールもらって点入る?どうやったらたくさん点が入るかちょっと考えながらやってみよう!もうひとつ!なんでボール奪われた外の選手はすぐ奪い返さないの?試合中ボール奪われた後、その相手選手がボールを味方にパスするまで待ってあげるの?」

 

「日本だとタッチで交代とか、ボール奪ったら交代するの多いんだよね」

 

バルサコーチ

「ウォーミングアップならそれでいいけど今は練習中だよ?試合で起こりうる状況を作らないと!」

あくまでウォーミングアップはウォーミングアップであって練習ではないということ。そして練習はウォーミングアップのようなインテンシティでは行わないということ。

 

あくまで試合でより長くボールを保持するために、試合で勝つために、トレーニングをするのだ。という彼らの哲学をもとに計算されたトレーニングをしているのだ。

 

子供の動きが少し変わった。

さっきより確実に良くなっている。

しかも、子供たちは、プレーの選択肢を押し付けられていないので伸び伸びと笑顔を交えながらプレーしている。

子供に現在の状況を再確認させ、ヒントを与え、個人で答えにたどり着くための思考を身につけさせる方法、そしてその効果は素晴らしかった。

 

 

この思考法はサッカーだけに限らず、人生のあらゆる局面で活かされるのではなかろうか?バルサは社会に通用する人間の育成にも長けているのかもしれない。

 

子供たちが変わるトレーニング

次は四角いコートを作り、グリッドの中で5対5+2人のフリーマン。そしてグリットの両端に1人づつ配置し外のフリーマンにパスをしてそれが通ったら今度は逆サイドのフリーマンにパスをするという攻撃方向が決まったパス回し。

片方のフリーマンからもう片方のフリーマンに、パスを回しながらボールを届けると1点入る。というもの。

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ここで気付いたのだが、バルサの練習は必ずポイント制で得点が入るものとなっている。そしてどうやったら1点入るのかを説明する。

子供たちにどうやったら得点が入るのかを考えさせ、常にサッカーは勝負であるということを植え付けるためだろう。得点も数えさせ、ボールを回すのはあくまでゲームに勝つためであることを伝えていた。

 

そして練習が始まる。

技術はあるがなかなか点が入らない子供たち。

バルサコーチは何も指示を出さない。

「ちょっと上手くいかなくてもこのままプレーさせて、少しもやもやさせよう」

とバルサコーチ。

中で数本パスがつながるものの1点が遠い。

 

そこで

 

バルサコーチ

「ボール持ってるチームはこうやってみんな集まってプレーした方が簡単に点入るかな? どこにスペースあるかな? こんなに大きなグランドでこんなに集まってプレーしてスペースできるかな?」

 

子供

「全然点入らない!」

 

バルサコーチ

「そうだよね!じゃあボール持ってるチームはそれぞれの選手が被らないようにグランドが全部見えるところに動いてみて! 今はどうかな? さっきよりもスペースたくさんない?ピケとメッシって試合中近くにいないよね! それと一緒だよ!グランドを大きく使って、味方がいないスペースに動いてみよう!あと、みんなボール持った時って何人対何人かな?フリーマンも仲間だよ?」

 

子供

「9対5だ!」

 

バルサコーチ

「そうだね!じゃあどうすれば簡単に点が入るのか考えながらもう一回やってみよう! それと後ルールを足すよ! サイドのフリーマンから逆のフリーマンまでのパスも1点になります!」

 

するとどうだろう。

子供たち自ら考えそれぞれが最適だと思うポジションを取り、さっきよりも確実にボールが動く。

バルサコーチがこの4つを繰り返すだけで子供のプレーが変わる。

「スペースどこにあるかな?」

「どこに動く?」

「どこに相手がいるかな?」

「どこにフリーの味方いる?」

 

もちろん上手くいかないこともあるが、子供なりに考えて出した答えに対し、上手くいかなければ、「なんで今上手くいかなかったのかな?」

と投げかける。

その繰り返しで、別人のようになる選手もいるのだ。

大切なことを繰り返すことで自分のものになる。

 

これの繰り返しでプレーが変わり、攻撃側にとっては簡単に1点が入り、フリーマンから逆サイドのフリーマンにパスが通る状況になってしまった。

 

バルサコーチ

「守ってるチームはなんで簡単に真ん中にボール通されちゃうと思う?」

 

子供

「マークできてないから?」

 

バルサコーチ

「今はちょっと違うな! 試合中ってゴールの位置って動かないで真ん中にあるよね? みんなで守るのは何かな?」

 

子供

「ゴール!」

 

バルサコーチ

「じゃあ今守れてるかな?今みたいにみんなが広がって守ったら相手にスペースたくさんあるよ!」

 

子供

「・・・?」

 

そこで、日本の子供たちには、サッカーをする上で当たり前である「ゴールを守る」という概念がないことに気づいた。

おそらくチームでマークにつけ!などとしきり言われ、守るもの(目的地の認識)がゴールから相手にすり替わっているのだ。

そして僕は子供にこう言ってみた。

 

「サッカーは相手に攻めて相手を守るスポーツじゃなくて、ゴールに攻めてゴールを守るスポーツだよ? こんなに広がっててゴール守れてるかな? 相手を守るんじゃなくて、どうやったら相手に簡単に逆サイドまでパス出されないか、今のゴールのフリーマンにパスを出されないかをチームのみんなで協力して考えながらプレーしてみよう!」

と言ってみた。

 

すると

 

やはり相手を守るという概念が強くゴールを守る概念がなく最初は困惑している子供たちだったが、繰り返し伝えることで、目的地が相手からゴールに少しずつシフトしていき、動きが変わったのだ。

 

やはり僕たち日本人は、サッカーというスポーツがどういうものなのか、どういうルールで勝つことができるのか?というサッカーの根本的な部分から見直さなければならないのではないか。

ここに、ボール扱いは上手いけどサッカーが下手な日本人と言われる理由がある気がする。彼らが特別フットボールが上手いのではなく、

僕たちのサッカーと彼ら(欧米諸国の強豪国)のフットボールはそもそもがずれているのだ。

 

しかし、言葉を変えるだけでどんどん吸収していく子供たちを見て、日本人の理解力の高さは素晴らしいと思ったし、世界で戦える武器になると思った。それにはバルサコーチもびっくりしていた。

技術が高くて理解力が高い日本の選手には大いに可能性がある。

 

日本には、ボールの扱い方、ドリブルやフェイントの仕方についての教室や本が沢山あるが、どれもゴールまでボールを運ぶ手段の一つであることを忘れないでほしい。

フットボールはゴールを守ってゴールを攻めて、より多く得点を奪ったチームが勝つのだ。

最後は必ずゲーム 

次は7対7のゲームについて。(1チーム必ず1-3-2-1のフォーメーションでプレーする。)

毎日必ず最後のセッションでゲームをする。

その日にやったトレーニングを実践で使い、楽しみながらプレーをすること。

サッカーの本質はプレイすること。(日本語に直訳すると遊ぶだが、僕は、100%成功が保証されない目の前の状況に主体性を持って積極的にチャレンジしていくことと捉えている)なので1番大切なことは楽しんでプレーすることなのだ。

 

バルサのコーチが見ていることもあって、積極的にプレーをする子供たち。

強引なドリブルやシュートが目立つ。

そこで、

 

 

バルサコーチ

「みんな今日何を練習したか忘れっちゃったかな? グランドをどう使うんだっけ?右サイドバックと左サイドバック自分の後ろからサイドラインまでどのくらいの距離あるかな? 今のままでスペースある?」

 

彼らは常に選手に問いを投げかける。

そして上手くいかない時だけ助言とヒントを与える。

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中盤の選手が開きすぎているときは、1回プレーを止めて、なんで開きすぎてるのがダメなのかを選手に質問し、答えが間違っていた場合は1回それでやらせてみて、それでも上手くいかなかったら、じゃあ何故上手くいかなかったのかを伝える。(このゲームではサイドバックが上がるスペースを消してしまうと、ボールを失った時に対応できないからだった)

 

そして、本日のテーマである「スペースを作り、そのスペースを使う」ことを意識させるべく、また質問が飛ぶ。

 

バルサコーチ

「みんなパス出してから動くのが大事ってわかってると思うけど、どこに動いたらいいかな?」

 

子供たち

「相手がいないところ?」

 

バルサコーチ

「完璧!!だけどそれだけかな? 味方がいるところといないところどっちがいいと思う?」

 

子供たち

「いないところだ!」

 

バルサコーチ

「そうだね! 味方がいるところに動いても邪魔になっちゃうし、スペースがなくなっちゃうよ! 味方と相手がいないところに動いて新しいスペースを作ってみよう!」

 

こうやって彼らは、子供に的確な気づきを与える。

しかも、動きや選択肢の強制はしない。

あからさまに大きなミスにはしっかりとしたフィードバックを与えるが、あくまで選手たちから湧き出たアイディアをリスペクトする。

 

すると、もちろん技術的なミスはあるが子供たちで考え始め面白い連携プレーが出始める。

ミスも、練習でやったことを出そうとチャレンジしているため、なぜそのミスをしたのかが見えやすくなっていく。

そしてグランドも広く使い、初日のたった4時間ほどで余裕を持って周りを見て先ほどよりも明らかに効果的なポゼッションプレーができるようになるのだ。

 

そこで気になって、この年代の子供たちに戦術面や動き方を教えるのって早いと思わない?とバルサコーチに質問してみたところ、フットボール先進国の考え方は僕たちより先を間違いなく進んでいると感じる内容だった。

 

バルサコーチ

「早くなんてないよ!フットボールにはルールも勝ち方もあるんだからそれを早く教えないと! 日本の若い選手が上手く見えるのは僕たちが戦術とそこで使える技術を教えてるのに対して、日本人は技術練習ばかりやってるからだよ。若い時は教えてる戦術がなかなか浸透しないから、ぱっと見は日本の選手の方が上手く見えるけど、戦術や戦術眼が浸透してきて、それに合わせた使える技術が身についてくる20歳前半では、ボール技術しか練習しない選手とは大きく差がつくと思うよ。」

 

と言っていた。

僕たちは早く、フットボールを僕たちなりに解釈し、僕たちが受けている教育と照らし合わせ、世界トップレベルの国のいいところを真似して、JAPAN FOOTBALを創る必要がある。

 

そして、練習の最後に必ずフィードバックをする。

フィードバックと言っても、本日の練習のテーマのおさらい、ボールを持っている時のピッチの使い方、ボールを持っていない時の守り方、動く時はどこに動くのか、誰にパスを出すのか、をクイズ形式で選手に質問していく。

選手が答えられたものは全力で褒め、答えられなかったものは、他の選手に当てて正解が出るまで聞き続ける。

 

そうやって、練習に参加した選手全員で今日練習したことを振り返り、明日へのモチベーション、頭の整理を行う。

 

Part 2に続く・・・

 

ライタープロフィール

佐藤 靖晟 21歳
高校卒業後イタリアに渡り1シーズン半、今年からスペインに移籍してプレー。

佐藤 靖晟 (@92670731) | Twitter

 

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