大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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サッカー育成年代が抱えている本質的な課題はなにか?サッカークラブの経営は構造的に厳しい。

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千葉の名門サッカークラブ、VIVAIO船橋の代表、渡辺さんにお話を伺ってきました。

サッカー育成年代が抱えている本質的な課題はなにか?という問いが生まれた時、渡辺さんにお話を聞いてみたいと思いました。渡辺さんが日ごろ発信されている内容が示唆的で、クラブ経営をされながらもドメスティックな現場の事情をよく知るという視点で考えた時に、これ以上の適任はいないのではないかと思いご連絡させていただきました。渡辺さん、お忙しい中快くお受けくださり有難うございました。

育成年代の街クラブの課題

ーー育成年代の街クラブの課題ってたくさんありますが、どのクラブも抱えている大きな課題ってなんでしょう?

 

少子化が進み、更にサッカーを選ぶ子どもの数が減っている上に、サッカークラブやスクールも乱立しているので、パイの奪い合いになっている状況です。クラブ経営も年々難しくなっています。クラブ運営には様々な費用がかかり、最少のスタッフで運営せざるを得ない状況が続いています。これは多くのサッカークラブが抱えている問題でしょう。サッカー以外に利益を生む仕組みを作れているクラブは強いのですが、それでもこの少子化で、サッカー以外のスポーツの多様性が生まれたことは、更なる発想が求められていると感じています。

ジュニア時代は、サッカーか野球かバスケを選択されることが多かったように思います。いまは、卓球やバイクスポーツ(スポーツバイク)など、選択肢は多種多様な時代です。サッカーなどの団体スポーツは休日の試合などで1日の多くの時間を使ってしまいます。個人競技が好まれるのは、その競技が世界一を目指せる競技に成長したこと、また家族の時間を過ごす為に団体競技より気軽に休ませられるからという調査結果も耳にしました。

 

ーーVIVAIO船橋はこれまでそんな時代の流れを受け止めながら、どのようにクラブを育んできたのでしょうか?

 

クラブを選んでもらうための”強み”をしっかりと伝えることの重要性に気がつけたことでしょうか。

クラブの方向性に合わない親御さん、お子さんを入れないというのが一番大事、そのためのブランディング、発信がすごく重要です。

どんな方針でやるのか、我々はこういうクラブであるという発信をしてきたことで、入会してから起こる問題は大幅に減りました。クラブとしてどういう柱をつくるか、どうやるのかというのは今でも試行錯誤の連続ですが、当初は駅前のチラシ配りから初めました。地道に草の根マーケティングをしてきた結果、大きな下降の波に入らずにクラブは24年目を進んでいます。

 

ーーなるほど、少し話は変わるのですが、コーチのマネジメントにおける課題について教えていただきたいです。

 

コーチって誰でもなれてしまうんです。クラブ側も人を選ぶ余裕がありません。学生さんでもやってくれるなら大歓迎な状態です。それくらい人を選べない。採用したコーチを教育する余裕もないので、現場でみて覚えてもらうしかないわけです。練習の合間、あるいは練習後に食事に連れて行ってコミュニケーションを積み重ねる。それくらいしかできません。その中で、大切なことをどれだけ伝えられるかですね。それで育った人材も、業界の薄給に絶望してサッカー以外の業界に転職していきます。優秀な人材ほどそうなります。それだけサッカークラブのビジネスモデルは構造的に難しいと思います。そんな中、我々もサッカー以外のビジネスを学び、なんとかクラブを長く継続したいと考えています。

 

結果を過剰に求められる構造

ーー結果を過剰に求めれてしまうという育成年代のジレンマというか構造がありますが、それについてはいかがでしょうか?

 

まず、試合に勝ち続けると選手が集まり易いという現実があります。結果が出ないチームより、結果を出しているチームに子どもが集まります。基本的に結果を求めている親御さんは多く、どうせなら強いチームにと子どもを預けます。そのような気持ちの強い方が集まりますので、強いチームの方が表に出ない部分も含めて問題を抱える構造になっています。

一度結果が出ると、子どもが集まり、ポテンシャルの高い子たちによって結果が出ることにより、指導者はその方向に更に強く舵を切ることが多いものです。13歳で結果が出ても15歳で尻つぼみになったり、15歳で結果が出ても17歳で応援席にいたり。長いスパンでの取り組みの結果を検証しないと、自身やクラブとしての関わり方を変えることが出来ないフィードバックのない構造が生まれ、悪循環に陥ります。

 

ーー結果が出るなら多少の理不尽も仕方がない、社会に出たら理不尽に耐える力が求められるから、今のうちに鍛えてもらえるなどと肯定的な変換をしてしまう話をよく聞きます。結果と育成の両立って難しいですね。

 

いろんなクラブ事情を聞きます。内側から崩壊しかけているのに、結果がでるからそれを変えられないという話は強豪クラブの多くが抱えているジレンマではないでしょうか。
クラブが子ども(親)に選ばれる一番の理由は結果、それ以外はどうしても弱いんです。

 

ーー長くクラブ経営をされてきて、”人”の変化は感じますか?

 

やはり時代の変化と共に、人は変わっていると感じます。昔は、それこそ根性論で育ってきた僕らの世代は、仕事第一で馬車馬のように働くのが当たり前の時代でした。そういう意味ではマンパワーがなくなってきています。今は、ライフワークバランスが重視され、昔よりもスタッフに配慮すべきことは多くなっているので当然と言えば当然なのですが、粘り強さややり抜く力が弱くなってしまっていると感じることはあります。ちょっとした嫌なこと、辛いことがあるとすぐ環境を変えてしまう傾向は昔より増えたように思います。それだけに我々も労働環境はよくしていかなければならないと思っています。

 

サッカーでビジネスをするのはとても難しい

ーー最近、若者がYouTubeなどでマネタイズしてスクール事業に参入してくるケースもありますよね。

 

そうですね。サッカースクールが乱立しているわけですが、これから更にそれが増加すると思います。参入しようとしている若者の話をよく聞きますが、構造的に難しいということを理解していないことを危惧しています。

SNSで成功する事例はごくわずかですし、今の若い子たちはクラブ経営の実態を知らないわけです。そんな情報も公開されていないのでわからないんです。

でも、表面的な見栄えがいいだけで、人は一時集まる時代ですが、それは長くは続きません。育成年代の子どもたちに携わるなら大切なことは山ほどあると思いますので、それをしっかりと学ばなければならないですし、持続可能なクラブにするためにマーケット、経営を学ばなければなりません。それは簡単なことではありません。


20年前は感じませんでしたが、ここ数年は5年先が見通せないほど状況が変化しています。経営について私は24年前の設立時から気持ちで運営してきてしまいました。その点でクラブは追い込まれていて、心から反省し変化しようとしているところです。

 

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VIVAIO船橋サッカークラブ 【VIVAIOレター】

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