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清水エスパルス、立田悠悟の隠された技術と駆け引きに迫る

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ここ最近、TwitterのJリーグ公式アカウントはゴールシーンだけではなく守備やセービングといった様々なプレーのクリップをツイートしている。

 

ゴールシーンはもちろんサッカーの醍醐味だが、それ以外にも目を向けて欲しいという思いがあるのかもしれない。

 

 

そこで今回は、DFの好守備を解説していきたい。

 

 

題材となるのは、清水エスパルス所属、立田悠悟選手のプレーだ。

 

 

 

 

実際のシーン 

 

こちらの映像をご覧いただきたい。

 

 

 

 

 

 

8月1日に行われたJ1第8節、浦和対清水での一幕。

 

 

映像だと少しわかりにくいが、このシーンは浦和の青木が清水の縦パスをカットしたところからスタートしている。

 

 

浦和の関根がDFラインの裏を取り、シュートを打とうとしたところを立田のスライディングで防いだ、というシーン。

 

 

この一連の流れを、立田の動きに注目して解説していこう。

 

 

 

 

 

奪われた瞬間

 

 

 

この映像が始まる瞬間、立田は一人だけ低い位置にいる。

この位置でバックパスを受け、追い込まれながら出したパスがカットされたという状況だ。

 

 

最初に行うべきことはDFラインを揃えに行くこと。

 

それを行うべく周囲の状況を確認しながら位置を上げていく立田。

 

 

しかし清水のCB竹内が、関根のポジショニングにつられ外側へとポジションを移してしまう。

 

 

f:id:keikun028:20200807001135p:plain

(引用・・・Jリーグ公式ツイッターより)

 

 

このポジションの変化を見た関根は、ペナルティエリア内に出来た広大なスペースめがけて走り出す。

 

 

清水のボール付近の選手は全員青木を見てしまい、スペースを埋めることが出来なかった。

一般的にボールウォッチャーと呼ばれる状態だ。

 

 

しかし一人だけ、関根の動き出しを捉えていた。

 

それが、立田である。

 

 

 

 

パスが出てから

 

 

 

関根が加速する瞬間に反応した立田。

同様に加速し、まずはボールに向かって詰めていく。

 

 

ここでもう一度映像をご覧いただきたい。

関根のスピード、ボールの軌道を見て立田が走るコースを若干変えたことに気付いただろうか。

 

 

おそらく、関根に先に触られることを予感した立田は

 

・ファールを犯す危険

・いかにシュートを防ぐか

 

というあたりを考え、咄嗟に走る軌道を曲げている。

 

 

その結果、関根がトラップする直前に真横に位置することに成功した。

 

これが軌道を変えず、直線的なアプローチをしていた場合、以下のような状態だったと考えられる。

 

・関根が先にボールに触り、入れ替わるような形でフリーでシュートを打てた。

・背中から関根を追いかける形になり、PKを与えるor何も抵抗できない

 

こういった事態を避けるべく、曲線を描きながらアプローチをしていく。

 

 

 

シュート直前

 

 

 

横からプレッシャーとコンタクトを与えることで関根はシュートを打てない。

だが、関根の選択したファーストタッチは見事だった。

 

GKが飛び出せないギリギリの距離にボールを転がしている。

大きめのタッチをすることで自分のスピードを落とさずシュートを打つことが出来る、理想的な選択だ。

僅かながら立田より前に出ていたことも大きい。

もし強引にシュートを防ぎに行けばPKになるからである。

 

 

 

ここで立田の下した判断。

 

それがスライディングだった。

 

 

立田のスライディングは、関根の足にもボールへも向かっていない。

防いだのは今後ボールが来る場所であり、そこから放たれるシュートだ。

 

 

ファールにならないためには、足に触らずボールのみに触る必要がある。

立田はそれを実現するために、ボールの少しだけ先の空間へ向けて、回し込むようなスライディングを敢行した。

 

 

この手法にはリスクの低下だけではなく、シュートコースを消すというメリットもある。

焦ったときほど思い切りだけでプレーしてしまいがちだが、立田は冷静に空間へのスライディングを選択した。

 

 

関根がボールに触る直前に立田はボールに触ることに成功し、ピンチを救うこととなる

 

 

更に細かい話をすれば、ボールに近い左足でスライディングをしたことが大きい。

右足でスライディングすればより先のスペースへ足が届く。

しかし体を支える左足が関根の体に触れてしまう危険性があり、それはそのままPKを与える危険性なのだ。

 

だからこそ立田は繊細に、しかし思い切りよく左足をギリギリまで伸ばしてシュートを防いだ。

 

滑った後の体勢がそれを物語っている。

 

 

f:id:gosurokachi:20200806115607p:plain

 

 

限界まで足を伸ばしたからこそ、横向きではなく仰向けの体勢になっている。

ただボールに触ろうとするだけではこうならない。

 

この姿勢は、DFとしてリスクとリターンを天秤にかけた立田の決断の結果だ。

 

 

 

 

スライディングという技術

 

 

スライディングは守備における最終手段と言われる。

 

滑ったら最後、次のプレーまで時間がかかるため一度きりのチャレンジになるからである。

 

 

スライディングするコース、足の向き、相手やボールのスピードの予測・・・

一点でも、少しでもミスをすればファールを取られてしまう。

 

 

そのギリギリを見極め、最小限のリスクにとどめながら最大限のリターンを得た立田のプレーは、まさしく1点分の価値があったと言えるだろう。

 

 

このスライディングを技術として捉える考え方、是非プレーヤーも指導者もサポーターも知っていいただきたい。

 

駆け引きの詰まった見応えあるプレーの数々に気付くだろう。

 

 

筆者ブログの紹介 

筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter

筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。

その一つの集大成として、中高生に向けたブログ

 

「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」

 

reading-football.work

 

というサイトを運営している。

 

 

中高生に限らず、

 

・もっとサッカーを楽しみたい

・サッカーを深く知りたい

・選手がどんなことを考えているのか知りたい

・指導の参考にしたい

 

といった様々な方のご参考にもなればと思う。

 

 

もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。 

 

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