大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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松本山雅FC、阪野豊史のアシストに隠された細やかな工夫とは

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今回のプレー解説は、J2リーグ第29節、ギラヴァンツ北九州vs松本山雅FCの試合からご紹介したいと思う。

取り上げるシーンは、松本が前半終了間際に塚川のゴールで先制したシーンだ。

 

このゴールをアシストした阪野のパスには、いくつかの細かい工夫がされていた。それは相手との駆け引きとともに、塚川への心遣いも含まれた素晴らしいプレーだった。

そこで今回は、このゴールを題材に阪野が見せた工夫を解き明かしていこうと思う。

「魂は細部に宿る」という言葉が似合うこのパス、是非堪能して欲しい。

 

 

実際のプレー映像

 

まずは映像から。

 

 

 

阪野がパスを出す瞬間の状況

 

ではまず、阪野がパスを出したシーンを見ていこう。

 

これが、パスを出す直前のシーン。

 

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そしてこちらが出した瞬間。

 

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この間は一秒にも満たないほど短かった。にもかかわらず、パスを出す素振りは1枚目にはほとんど見えない。

阪野はこのパスを右足の外側、いわゆるアウトサイドで出している。アウトサイドでパスを出すことの利点は、走行時に近い脚の動きのままボールを蹴れる点にある。そのため、直前まで全く相手に予想させずにパスを出すことが出来る。もちろん簡単なことではない。ほぼ脚を振り上げずにパスを出した結果、阪野の体はくの字になった。

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上半身を前に畳むことで無理矢理脚を押し出しパスを出したことがこの体勢からも窺える。自分が蹴りやすい体勢ではなく、相手に予測をさせないためのプレーであることがここからも分かる。ちなみにこの動き、よほど運動神経が良くないと出来ずボールがまともに転がらない。何気なく行っているがこれもまた神業なのだ。

 

 

パスは回転にも気を使う

 

そしてこのアウトサイドで出したパスは見事に塚川へ通るのだが、その軌道は僅かにカーブしていたのに気付いただろうか。

このカーブはDFを避ける軌道であるとともに、徐々に塚川の方へ近付く軌道でもある。つまり塚川からすれば追いつきやすい、DFからしたら迂回されるような味方に優しく相手に厳しいパスになっている。

 

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この軌道により塚川は時間とスペースに猶予を得ることが出来、ワンタッチシュートを決めることに成功した。

もちろん塚川のシュート精度や、ゴール前でありながらボールから一回目を離してGKの位置を確認する動きも素晴らしかった。ゴールがかかる緊迫した状況でボールから目を離すのは、想像以上に難しい行為である。冷静さを失わなかったからこそ決められた、秀逸なシュートであることも知っていただけたら嬉しい。

 

 

「魂は細部に宿る」という視点を持つ

 

この記事に限らずだが、筆者が取り上げるシーンは派手な物が少ないと思う。だがそこにはぱっと見では分かりにくい駆け引きや技術が詰まっている。そもそもサッカーというのは派手なシーンが少ないスポーツだ。と言うことはプロがプロたる所以は派手なシーンだけではなく、地味な細部にこそ宿っている、と筆者は幾多の観戦と実際のプレー経験を通じて確信した。

この細部を掘る過程には、「なぜ?」という疑問を持つことが大切となる。

なぜ阪野はアウトサイドで出したのか?
なぜ塚川はシュート時に猶予を持てたのか?
なぜDFはカットできなかったのか?

その視点を持ったら、サッカーをまた違った楽しみ方で見れる、かも知れない。結果には必ず原因がある。その原因の多くは、プロだからこそ出来る「神」が宿ったプレーであるはずだ。彼らの一挙手一投足を妙技だと筆者は確信している。

そして選手や指導者の方にはこの視点を常に持っていて欲しい。その探究心は必ず自分を成長させてくれるはずだ。

 

筆者ブログの紹介 

筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter

筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。

その一つの集大成として、中高生に向けたブログ

 

「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」

 

reading-football.work

 

というサイトを運営している。

 

 

中高生に限らず、

 

・もっとサッカーを楽しみたい

・サッカーを深く知りたい

・選手がどんなことを考えているのか知りたい

・指導の参考にしたい

 

といった様々な方のご参考にもなればと思う。

 

もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。 

 

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