J1リーグ第20節、大分vs清水での1シーン。
一点を追いかける清水は前半26分にジュニオール・ドゥトラのゴールで同点に追いつく。
そのゴールをアシストしたのは清水エスパルスの10番を背負うカルリーニョス・ジュニオ。彼のアシストには一瞬で状況を見極める判断力とそれを実現するための引き出し、そして実行できる高い技術が詰まっていた。
今回は彼のアシストを紐解き、なぜパスが通ったのかを探っていきたい。
実際のゴール映像
映像はこちら。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ (@J_League) 2020年10月3日
🏆 明治安田生命J1リーグ 第20節
🆚 大分vs清水
🔢 1-1
⌚️ 26分
⚽️ ジュニオール ドゥトラ(清水)#Jリーグ#大分トリニータvs清水エスパルス
その他の動画はこちら👇https://t.co/JUEMOXumQp pic.twitter.com/HBjGQTCr18
では少しずつ、このゴールの生まれた理由を探っていこう。
パスを受ける位置
まず筆者が注目したのは、カルリーニョスのパスを受ける位置だ。
2人のCBと中盤、そのちょうど真ん中にポジションを取っている。これにより、誰が明確にマークに付くのかが大分は決定できなかった。ボールが出たら最初にプレスに行くのは一番近いCBだ、ということは共通で理解が出来ていたとは思う。だからこそいつでもプレスにいけるように臨戦態勢で構えている。
ただしこのCBがもう一つケアしなくてはいけないことがある。それがジュニオールの動きだ。矢印を見てもらえば分かると思うが、ジュニオールは外では無く内側へのランを選択している。
外側へ走れば、よりフリーになれる一方でゴールからは遠ざかってしまう。ジュニオールの脳内にはパスを受けシュートに持って行く明確なイメージがあったのだろう。だからこそ難易度が高くてもゴールへ直結する内側へ走り出したのだと思う。
と同時に、パスコースを消そうとするDFに対してこの狭い門を通したパスも素晴らしい。プレスに行っている選手だけでは無く中盤も合わせれば、4人かがりで塞ごうとした一番危険な中央へのパスを通した技術。そのパスコースを見逃さなかった目。いずれも驚嘆に値する。
これらの同時進行により、清水はチャンスを作り出した。
では、ここからどうゴールへ繋がるのだろうか。
カルリーニョスのパス
ジュニオールはこの時点で、前向きにフルスプリントしている。下がりながらの対応となったDFよりも速いのは明らかだ。それを認識したカルリーニョスは、足下では無くスペースへのパスを出す。
青い矢印の、足下付近へのパスはDFにカットされる危険性はないが、
・スピードを殺してしまう可能性が高い
・トラップの難易度が高い
という問題を抱えている。
一方の赤い↓、スペースへのパスはその真逆。カットされやすいが通ればトラップもしやすくスピードを生かして間違いなくシュートに繋がる。
この状況をカルリーニョスは、浮かすパスを選択することで解決した。
その一瞬の判断には、ジュニオールがスピードで勝っていたこと、裏にスペースが空いていること、DFの足が届く範囲など様々な要因が絡んでいる。大分はラインを高く保ちながら守っていたため、スピードでぶっちぎれればシュートに繋がる場面となったが、それをゴールに背を向けながらも間合いを把握する視野の広さをカルリーニョスは持っていたのだ。
もちろんラインの高さはジュニオールも見抜いていた。だからこそ先に述べたように、ハイリスクハイリターンとも言える内側へのランだったのだろう。このスペースを見逃さない力が重なり合い、大分のブロックを突破することに成功した。
決断材料の多さ、それを処理する能力
沢山見るべきもの、考えるべき材料がある上に自身はフリーとは言えずいつボールを奪いに来られてもおかしくない状況。
その中で冷静に判断を下し、難しい浮き球の、しかも角度の付いたパスをいとも簡単に出したカルリーニョス。
その情報収集力、判断スピード、正確性、技術の高さ。どれをとっても一級品のアシストであった。
筆者ブログの紹介
筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter
筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。
その一つの集大成として、中高生に向けたブログ
「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」
というサイトを運営している。
中高生に限らず、
・もっとサッカーを楽しみたい
・サッカーを深く知りたい
・選手がどんなことを考えているのか知りたい
・指導の参考にしたい
といった様々な方のご参考にもなればと思う。
もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。