南米のウルグアイといえばルイス・スアレス(バルセロナ)、エディソン・カバー二(パリ・サンジェルマン)という世界的なストライカーが真っ先に出てきますが、これまで数多くのレジェンドを生み出しているサッカー大国です。フランチェスコリ、アルバロ・レコバという伝説を生み出し、今もなお数々の若い才能が次々と生まれる国。
そんな南米の雄、ウルグアイでプレーする中村勝(nakamura sho)選手に南米サッカーを体感して感じた日本サッカーの課題、海外でプレーすることで感じることなどをお伺いしました。
ーまず、なぜ海外でサッカーすることになったんでしょうか?
海外出張が多かった親の影響もあり海外志向はずっと強かったんです。
高校卒業後にFTAという現在東京にあるサッカーのアカデミーでトレーニングさせてもらいました。
そこでたくさんの海外経験のある選手たちと一緒にトレーニングし、海外でプレーするイメージを高めていました。
ーウルグアイと日本の違いはなんですか?
まず、300万人しかいない小さな国ですが、サッカーが生活に根付いています。
日常の中にサッカーが溶け込んでいる感じです。
それが良い選手を輩出している要因だと思います。
ウルグアイは日本と正反対の文化だと僕は捉えていて、日本が周りと同じことを良しとするならば、ウルグアイは自分のことを自由に表現するのが当たり前の文化です。
ウルグアイ人は自分の感情に素直に生きているように感じます。そこが日本との大きな違いだと思います。
また、人との繋がりを大事にする文化でもあります。
マテというウルグアイ人なら必ずもっているお茶があるのですが、それを友達や家族と回し飲みをするのが一般的です。
マテ茶に限らず、なんでも共有するのが当たり前で人と人との距離がすごく近いです。
自分を自由に表現でき、繋がりを大事にする文化だからこそ日本より人間らしさを感じます。
その文化こそがサッカーにおける強さの要因のひとつだと思います。
チームスポーツであるサッカーにおいてチームメイトと戦術から闘う姿勢まで11人が共有し、ひとつにまとまってプレーできることは凄く大事だと思います。
日本はまとまってないとかではなく、一つになる力の強さが違うと感じています。
ー日本サッカーの良さと、課題についてどのように感じていますか?
日本サッカーは規律を持って監督の要求することを実行することにおいては、とても優れていると思いますが、言われたこと以上のことをするのは苦手だと思います。
ウルグアイでは予定どおり、時間通りにいくことはほぼないので日常的に対応力が求められます。
サッカーは予測不可能なことに対して対応できる力が求められますが、ウルグアイは日常で鍛えられているので強いですし、より変化に対応する力が高いと感じています。
またゴールへと向かう姿勢は圧倒的にウルグアイのほうが優れていると感じます。
日本では足元の技術にばかり目が向けられがちですが、サッカーの本質であるゴールを取ることを常に忘れてはいけないと思います。
また、目に見えるものばかりに目を向けず、闘う姿勢やサッカーへの情熱、喜びといった精神的な部分も大事にできるようになると良くなっていくと思います。
ーウルグアイでの印象的なエピソード
衝撃というよりは鳥肌が立った体験なのですが、自分が現在所属しているチームはアマチュアリーグなのでみんな昼間は仕事をして、夕方から練習しています。
リーグ戦で同じ地区のライバルとのクラシコを闘ったときにセンターバックの40歳の選手がハーフタイムにこう言ったんです。
「このピッチに立てるのは今日が一生で最後かもしれない、みな今日のこの試合に人生をかけて勝とう」と。
このときの雰囲気は今でも頭に残っています。
アマチュアですが純粋にサッカーに対する情熱や誇りを大事にしているのは、さすが南米だなと感じさせられました。
ー自分が変化(成長)するきっかけになったこと
ウルグアイにきて、この国の文化に良い意味で染まることで自分らしさを大事にできるようになったこと、そして今この瞬間を楽しめるようになったことが成長の要因だと思っています。
毎試合ピッチに立つときに、サッカーができる喜びと共に闘うチームメイトを誇りに感じます。
普段の練習でも楽しみながらやれるので、高校の時のように練習にいくのが億劫になることはないです。
有難うございました。
日本は南米から学ぶことがまだまだたくさんあります。
これからも南米サッカーの魅力、サッカーの本質を伝えていきたいと思っています。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…