大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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ひとり親家庭支援プロジェクト開始のロボスFC|大好きなサッカーを大好きなまま続けてほしい

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神奈川県横浜市に、ひとり親家庭の選手は無料でサッカーができる、というサッカークラブがある。その名もロボスFC。2021年4月から、株式会社マウントゼロへ運営が変わり、アジアやヨーロッパでプロ選手としてもプレーした丸山龍也さんが代表を務める。当クラブのコンセプトは “Sustainable Football”(サスティナブル=持続可能)。「大好きなサッカーを、大好きなまま継続してほしい」という代表の思いが込められている。

「たかがサッカー、されどサッカー。
世界でいちばん人気なスポーツで学べるコト、得られるモノ、仲間、友人、コミュニティは無限大です。せっかく好きになってもらったサッカーを、ずっと好きでいてもらいたい。そういった想いで活動しています。」

(※クラブホームページより抜粋)


今回はそんなロボスFC代表の丸山さんに、ひとり親家庭サポートプログラムについて話を伺った。

 

<クラブ代表プロフィール>

丸山龍也 1992年7月4日生まれ。株式会社マウントゼロ代表取締役。選抜歴や大会歴など一切なし。才能がないと周りから冷やかな目を浴びつつ、定時制高校に通いながらプロを目指し、東南アジア諸国へトライアウト。 大怪我も負いながら2014年にスリランカで念願のプロデビューを果たし、その後、東ヨーロッパのリトアニアでプレー。帰国後、テレビ朝日の激レアさんに出演。現在は会社経営をしながらクラブの運営をしている。

丸山代表Twitter:https://twitter.com/maru_ryuya

ロボスFCホームページ:https://lobosfc.yokohama/

 

-ひとり親家庭サポートプログラム「MANADA DE LOBOS(マナダ・デ・ロボス)」を始めた経緯を聞かせてください。-

2021年4月から当チームの運営を開始したのですが、その時期からすでに、ひとり親家庭の選手の月謝を無料にするアイデアはありました。サッカー界の現状として、ひとり親家庭の選手が、お金の問題で大好きなサッカーを辞めざるを得ない選手が多く存在する、という課題があります。そういった選手を減らしたいという想いがあり、今回のプログラムを開始しました。僕もひとり親家庭で育った原体験があるので、そのような境遇にいる子供たちの気持ちは痛いほどよく分かります。

僕の場合は、お父さんと妹と一緒に住んでおり、お母さんが近所で別居しているという環境でした。自分の子供時代を思い返してみると、片親だったこともあり、親や周囲の大人にかなり気を遣っていましたね。子供たちには、親に気を遣わずにサッカーをしてほしいと思います。タダでサッカーできる環境があれば、親に気を遣ってサッカーを辞める必要がなくなると思います。

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-ひとり親家庭で育った丸山さんの原体験が、今回のプログラムを始めるきっかけになっているんですね。自身の子供時代はどのようなことを感じながら過ごしていましたか?-

子供って大人が思っているよりも繊細で、色々と感じることがあったり、思っていることがあるんです。ひとり親家庭だと、サッカーでお金がかっているので、他の事を始められないという話しをよく聞きますし、自分が子供の頃もそうでした。その部分をロボスFCとして支援したいという想いがあります。

僕の場合は、小学校5年生時に両親が離婚したのですが、今思い返してみると、その時期とサッカーが伸び悩んでいたタイミングとドンピシャで被っているんですよね。それだけ、親が離婚するということは、子供にとってはかなり大きな出来事だと思います。

 

-親の離婚は子供にとっては大きな出来事ですよね。丸山さんにとって、当時のどのような経験が辛かったですか?-

今でも鮮明に覚えているのは、小学校6年生の時の出来事です。卒業アルバムを作るので、約3万円を学校に持ってきてください、という日がありました。ですが、そのちょうど数日前に、父親の会社が別の会社と合併することになりました。当時はお父さんがリストラされる可能性もあったので、小学校6年生の僕は「お父さんの会社が合併する。お金ない。やばい。」と、子供ながらに親の心配をしていました。そのような状況のお父さんに3万円払って欲しい、なんて頼めません。なのでプリントを親に渡さず、先生にも卒業アルバムは要らないと伝えていました。1万円程のスパイクを「すごく高価もの」だと思っていた年齢だったので、3万円の卒業アルバムだなんて、小学生にしたら相当高価なものですよね。

そうしたらある放課後、当時の担任先生がニコニコしながら近づいて来て「お父さんに電話して、卒業アルバムのことを言っておきました」と僕に言ってきたんです。お金の心配をしていた僕があたふたしながら家帰ると、案の定父親が激怒しており「学校から電話があったぞ。プリントもらったら渡すって約束だよな!」と怒鳴られ、思いっきり殴られた経験があります。

もちろん、タダ貰えるなら欲しいですよ。けど、お父さんのことを思ってなるべく負担をかけたくなくて。それなのに、先生にもお父さんにも分かってもらえないのは辛かったです。大人にはわからないけど、子供が親に気を遣っている場面ってたくさんあるんですよね。

みんなが塾とかに行き始めるタイミングでも、自分だけ塾に行けないこともあったし、欲しいものがあっても「スパイクとか買ってもらっているから、言いにくいなあ」とか思ったりするんです。買ってくれないだろうと分かっていても、とりあえず言ってみる、とかもできないんですよね。欲しい物や、やりたいことがあったとしても、親の大変な状況を見ているので、口に出すことができない子供は多くいると思います。

 

-子供が親に遠慮せずにサッカーを続けてほしい、という想いからのプログラムなんですね。-

僕がこのプログラムを開始したのは、親御さんのためではないということを初めに伝えておきます。あくまでも、親に気を遣った結果、サッカーを辞めてしまう子供たちのためにこのプログラムがあります。僕は、一人親二人親家庭関係なく、子供がやりたいことに対して親はお金を払える、と思っています。

ただ、払ってもらった時には子供がとても気を遣うんです。その気持ちを感じながら、楽しんでサッカーを続けるのって結構しんどいんです。そういった選手が、伸び伸び仲間と楽しみながら、サッカーをする場を用意したいです。

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-仲間と一生懸命取り組めることがあるだけでも、精神的に救われますよね。-

僕自身、何度も横道にそれそうになりましたが、サッカーに対しては一生懸命取り組んでいました。もし僕がサッカーを続けていなかったら、詐欺師とかになっていたかもしれません。正直、何か打ち込めるものがあれば、勉強でも他のスポーツでも、ゲームでも何でもいいと思っています。

ただひとり親の子供の場合、経済的な問題などで、打ち込めるものの選択肢が少ないことが多い印象です。となると、必然的に暇な時間に悪さをすることにもつながってしまう可能性もありますよね。僕自身、親の帰りが遅かったので、夜に出歩いて、ゲーセンに行ったり、暗い所で遊んだりしていました。それが「夜にみんなで集まってサッカーしようぜ」に変われば、毎日仲間と切磋琢磨できるじゃないですか。真剣に取り組めるものがあることって、人生を生きる上でとても大切なことだと思うんです。

なのに最近の日本では、サッカーが高所得者の遊びのように見えることが多くて少し悲しくなることがあります。ボール一つあれば、個人の立場など関係なく遊べるのがサッカーですよね。なのに、プレーできる人を大人の都合で選ぶのは、スポーツという観点から外れているのではないかと疑問に思います。時代の変化もあるので仕方のないことなのかもしれませんが、サッカーが商業的なものになっている違和感はすごくありますね。

それに加えて、ボールを蹴ったらダメな公園とかあるじゃないですか。公園は遊ぶと所なのに、そこでもボール遊びを禁止されてしまったら、ますますすることがなくなってしまいます。なので、スポーツクラブがそういった子供たちの受け皿になり、どんな子でも楽しくスポーツに打ち込める環境、を作る必要があると思っています。

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-入団した選手に伝えたいこと、はありますか?-

ひとり親家庭の選手は無料でチームに入団できるのですが、入る選手にコミットしてもらうことを2つ決めています。

まず一つ目は、しっかりとした理由がある場合を除いて、練習や試合には参加すること、です。「タダだし今日は練習休んじゃおう」とかはフェアではないのでなしにします。その選手がお金を払わない代わりに、他の人が月謝を負担しています。もちろん、辞めたくなったら、その時には辞めても問題ありません。

二つ目は、ひとり親家庭のプログラムで入団した選手には、タダでサッカーしていること、を友達に言う必要はないですが、理解していてほしいです。タダでサッカーできる環境を当たり前だと思って欲しくなくて、普通はお金がかかるんだよ、っていうのを理解した上で入団してほしいですね。この二つだけは、しっかり守ってもらおうと思っています。

 

-今後ロボスFCでは、どのような選手を育てていきたいですか?-

プロを目指すとかではなく「誰とサッカーをしても混ざれる選手」が増えてほしいという想いがあります。 大人に混じってプレーできたり、外国人とのゲームに混ざれたり、海外に行っても問題なくプレー出来たり。僕は特別に上手い選手ではありませんでしたが、周りがめちゃめちゃうまくても、めちゃめちゃ下手でも同じようなプレーができます。自分で言うのもなんですが、それはサッカーというゲームの中で、自分を出せる状況を作るのが上手いんだと思います。そういう状況を作ることができれば、おじさんとプレーしても、小学生とプレーしても同じようにサッカーを楽しめます。

尖ったテーマを掲げるのも良いと思いますが、尖ったことをしすぎると、他のサッカーに適応できなくなってしまいます。尖ったスタイルが一スタイルとしてあるのは全然いいと思うのですが、何かに特化しすぎてしまうと、実はそれってサッカーではなくなってしまうと思います。競技を続けていくためにはサッカーの普遍的な能力が必要だし、サッカーというゲームの本質を理解する必要があります。

なのでロボスでは、サッカーを楽しく長く、誰とプレーしても自分を表現できるやつ、が育っていく環境を作りたいです。将来的には、野球チームなんかも作りたいなと思っています(笑)。これからは、サッカー界がざわつくような面白いこと、もどんどん仕掛けていこうと思っています。

 

 

自身の原体験から語られた丸山さんの言葉には、サッカーというスポーツを子供たちに思い切り楽しんで欲しい、という熱い想いが伝わりました。
このような指導者の下でプレーする、ロボスFCの子供たちは幸せ者だと思います。

是非、これからのロボスFCに注目してください。
ひとり親家庭サポートプログラムの詳細については、以下からご覧いただけます。

lobosfc.yokohama