長年育成年代を取材してきて感じる一番の問題は、“育成年代の指導環境がないがしろにされていること”です。
子どものうちに好奇心と主体性を育む最良の環境を与えることが大切なんだという認識を持った大人が少ないように思います。
たくさんの大会、たくさんの少年サッカーチームを見てきましたが、大人のエゴで運営されているのでは?と思わざるを得ないチームが実に多いのです。
子どもをサッカーゲームのように操作し(事細かくコーチが指示し続ける)、試合に勝利した時の勝因は全てコーチの采配になり、試合の敗因は全て子どもたちのプレーやマインドに帰結する。
そんなチームが実に多いです。
私が育成年代の指導に携わりはじめてからもう15年以上経ちますが、この問題はずーっと変わらない。
アルゼンチンの強豪クラブで指導経験のある飯沼さんの記事が大変興味深かったのでご紹介させていただきたい。
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指導者と子どもたちの距離が遠い日本
「日本の育成には余白が足りないんですよ。何でもかんでも詰め込みすぎて、子どもたちの可能性を狭めてしまう。これに尽きると思います」
日本人として初めて、アルゼンチン1部の強豪サッカーチーム・CAラヌースでコーチを3年間務めた飯沼直樹は、日本サッカーの育成事情についてこう断言する。
私が感じている問題点は、指導者と子どもたちの距離が遠いことなんです。
たとえばアルゼンチンでは、指導者は子どもと一緒に遊んだり、スキンシップの回数が多いんですね。加えて、指導者が自分たちの考えや答えを子どもたちに押し付けることはほとんどない。
日本では、指導者の言うことは絶対で、選手と指導者の間には明確な力関係がある。詰め込み型の指導方法で、“育てる”という意識に、余裕や遊び心がある指導者の数は少ないですね。サッカーのように瞬間的なひらめきや、自由なアイデアが明暗を分けるスポーツにおいて、余白は大事な要素というのがアルゼンチンの考え方です」
アルゼンチンではジュニアチームのスタッフが30人を超える…
アルゼンチンの1部クラブの場合、ジュニアチームのスタッフだけで30人を超えることも珍しくない。実際に飯沼のいたCAラヌースには、43人もの指導者が在籍していた。各カテゴリーのチーム数の多さにも関係するが、これはJリーグの10倍近い数字ともいえる。
なぜ、アルゼンチンではこれだけの数の指導者がいるのか?
1つは、選手が最も伸びると言われるジュニア世代に、できるだけ密な指導をするためだ。その姿勢が将来の子どもたちの可能性を広げているともいえる。
飯沼は言う。
「アルゼンチンでは補欠という概念がありません。そこが日本とは大きく異なります。試合に出なければ選手は上手くならない。それなら、チーム数を増やそうというシンプルな発想ですね。当然ですが、選手によって課題や伸び代は違うわけで、個々を細かくカバーすることは非常に大切です」
>>日本人「怪物」アスリートが生まれにくい背景 | スポーツ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
これはアルゼンチンに限らず、サッカー強国に共通しているけれど、育成年代に投資している金額が桁違いに多いということです。
そして、何より大人が育成年代の重要性に気づきアクションを起こしているということだと思います。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…