大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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コンサドーレ札幌、ルーカス・フェルナンデスのゴール前の落ち着きから学ぶべきこと

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J1リーグ第三節。

 

鹿島対札幌の試合。

 

0-1でリードした札幌はアディショナルタイムに勝利を確実なものとする2点目を獲得した。

 

 

そのゴールは、ブラジル出身のテクニシャンであるルーカス・フェルナンデスが持ち前の技術を発揮して決めた見事なゴールだった。

 

だが、このゴールを

「テクニシャンの才能って凄い」

だけで終わらせるのは非常にもったいない。

  

そこで今回はこのゴールを通して、テクニシャンから学べることを浮き彫りにしていきたい。

 

 

ゴールの映像

 

 

実際の映像がこちら。

 

 

 

 

高い位置でボールを奪ってからのショートカウンター。

 

逆サイドから必死に走ってきたルーカス・フェルナンデスが横パスを受けてからドリブルでDFを交わしゴールを決めた、という流れだ。

 

 

このゴールをなるべく才能やセンスといった抽象的な言葉に頼らずに、言語化していきたい。

 

 

ファーストタッチ

 

 

まず筆者が注目したのはファーストタッチだ。

 

長い距離を走ってカウンターに参加した以上、身体的にはきつくなっている。

その中でも「コマイ!コマイ!」とボールを呼び込みながら走ってくるルーカス・フェルナンデス。

 

 

ボールの軌道、スピードを見て歩幅が合わないと判断した瞬間に、左足でスキップを踏み右足でファーストタッチできるように調整している。

 

その結果、右足のインサイドで丁寧にスピードを殺さずDFは奪えない位置へ転がすことに成功した。

 

もっと言えばそのままシュートを打てる状態に一発で持ち込めたため、この時点で守備に対して主導権を握ることとなる。

 

  

一人目のDFをかわす

 

 

上記したように、何でも出来る体勢を作り出したルーカス・フェルナンデス。

もちろん最優先になるのはシュートだ。

 

それが分かっているからこそ、DFも真っ先にシュートコースを消す。

それがフェイントでかわされるかもしれない、と分かっていてもボールへ詰めるしかないのだ。

 

 

結果としてキックフェイントで振り切ったのだが、この時にルーカス・フェルナンデスの左腕に注目して欲しい。

 

能力の高いDFは、決してボールだけを見たりしない。

下半身だけフェイントでも上半身は嘘をつかないことが多い。

 

その駆け引きに勝つべく、左腕を動かすことで更にシュートに対する警戒を強めさせた。

 

 

二人目のDFをかわす

 

 

見事に一人目のDFをかわしきった。

そしておそらくだが、このとき既に二人目のDFの位置も見えていたはずだ。

 

人間の目には「中心視野」と「間接視野」の二つの機能がある。

簡単に説明すれば、

「中心視野」は焦点を合わせクッキリと見る。

「間接視野」はぼやけながら広い範囲を見る。

という別々の役割を担っている。

 

そして優れたドリブラーは往々にして周辺視野を活用してプレーをしている。

 

ルーカス・フェルナンデスも一人目をかわすとき、そのDFとボールを注視しながらも二人目のDFの様子、その周辺の状況もなんとなく理解していたはずだ。

だからこそ二人目がスライディングでコースを消しに来るのを見越したかのように再びフェイントでいなしている。

 

 

そしてこのキックフェイント。

普通であれば、振り上げた左足でかわしたくなるところだが咄嗟に足を踏み換え右足でかわしている。

 

左足でかわす場合、ボールに触るのは足の外側、アウトサイドと呼ばれる部分だ。

アウトサイドは一瞬で方向を変えるのには適しているが、身体の構造上どうしてもボールが前側に転がりやすい。

その点内側、インサイドであればしっかりとボールを引っかけてコントロールすることが出来る。

 

 

また、ボールが僅かに右側に寄っていたことも大きな理由だろう。

右側に寄ったボールを左足のアウトサイドで扱うのは至難の業だ。

ボールの位置、DFとの距離、そしてもうカバーできるDFがいないこと。

 

これらが把握できていたからこそインサイドを使ったのではないだろうか。

 

 

本人がどう考えたのかは筆者には知る手段がない。

だが、辿ったプロセスはどれも合理的な判断だということがおわかりいただけるだろう。

 

その判断の元となったのは正確に周辺の状況を把握する眼と焦らないクールな頭脳だ。

 

  

GKとの駆け引き

  

 

さあ、残るはGKただ一人。

 

ここでもルーカス・フェルナンデスは素直にシュートを打たない。

何度かステップを踏み換えている。

 

 

GKというのは、いつでもセービング出来るような準備が必要とされる。

 

だがそれは人間である以上不可能。

だからこそシュートのタイミングを読み、最も瞬発力が発揮できる体勢を合わせてシュートを止めに行く。

 

 

ルーカス・フェルナンデスはそれを理解している。

GKが飛べないタイミングで打てば、ゴールが決まる可能性は格段に高い。

 

鹿島のGKは名手クォン・スンテ。

 1vs1の駆け引きに対して安易に体勢を崩すことなくギリギリまで待とうとしていた。

 

だがフェイントの瞬間、ほんの少しだけ左に体重を寄せてしまった。

  

 

 

f:id:gosurokachi:20200729120503p:plain

(引用・・・Jリーグ公式ツイッターより)

 

 

そしてルーカス・フェルナンデスの体を見て欲しい。

なんとボールを一切見ずにスンテを見つめている。

 

プロになるほどの選手であれば、足下にあるボールをほぼ見ずに蹴るという動作自体はおそらく可能だ。

 

だが、ゴール前という緊迫した場所でこれだけ目を離せるのは自信が無ければ出来ない。

 

 

スンテの動きを見たルーカス・フェルナンデスは、逆側へと冷静にシュートを流し込んだ。

 

このスンテの動きは全く批判できない。

そもそも1vs1という絶望的な状況でシュートを止めるには、片側にヤマを張ることは定石と言える。

その対応をルーカス・フェルナンデスが上回ったのだ。

 

 

技術ではない凄まじさ

 

 

動作一つ一つは、決して超絶技巧はない。

 

・走りながらの正確なファーストタッチ

・キックフェイント二回

・足下にあるボールから目を離す

 

どれも決して難しすぎる、真似出来ないようなものではない。

 

 

だがそれをゴール前、試合終了間際という局面でも平然とこなす体力とメンタル。

ボールに注視しながら周辺の状況を把握する、スポーツビジョンとも呼ばれる眼の能力。

 

これらを掛け合わせることでこのプレーは生まれた。

 

 

ルーカス・フェルナンデスのゴールはただのセンスでも発想力でも才能でも無い。

 

まさしく心技体が噛み合って生まれた、学ぶべき偉大なプレーだ。

 

筆者ブログの紹介 

 

筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。

その一つの集大成として、中高生に向けたブログ

 

「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」

 

reading-football.work

 

というサイトを運営している。

 

 

中高生に限らず、

 

・もっとサッカーを楽しみたい

・サッカーを深く知りたい

・選手がどんなことを考えているのか知りたい

・指導の参考にしたい

 

といった様々な方のご参考にもなればと思う。

 

 

もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。

 

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