あるサッカー少年が味わった地獄
あるサッカー少年の父が、悲痛な思いを認めた一通の手紙がある。
その一部を抜粋させていただいた。
「私は定年退職を目前にした今、ほとんど遺書のつもりで、この手紙を書いています。過ぎたこととして、もうお忘れの方々も多いでしょう。しかし、次男のAは、まだ苦しんでいます。こちらの病院では“もうこの段階では手術は無意味。筋トレ等によるリハビリで歪みを是正していくことを勧める”とおっしゃいます。しかし、本人は通院するにも、車の後部座席に寝かせて移送しなければならないほど深刻な症状です。“上半身を起こしているだけでもしんどい。左肩を上にして横たわっていることしかできないのに、筋トレなんて無理だ。まだ本当に症状を理解されていない”と言います。
親はいつ突然死ぬかわかりません。なんとかして外出ができるようになり、社会人としての役割や職業を得て、1人でも生きていけるようにしていくことが、私たち親の最後の仕事です。関係者の皆様には、ご自分が職業人として関わった一ヶ所、一ヶ所に真摯な点検をし、苦しみを分かち合って欲しいと思います。そして出口に向けて、一緒に歩いて欲しいと思います。または、少なくとも見守って欲しいです」
2年前、父は次男Aの症状や闘病の過程を詳細に記した手紙を、出身校の校長、クラス担任、サッカー部監督、コーチ、さらにはジュニアユース時代のJクラブ関係者、主治医などに送った、しかしJクラブの関係者からの見舞いの電話が入った以外は、どこからも反応がなかった。
この書籍には衝撃的な事実が多数記されている。
育成年代の指導者が犯した罪、そしてそれがもたらした犠牲…
実はこれらは過去の話ではなく、今現在も育成年代で起きていることなのです。
この本の著書、加部さんのお話を直接聞く機会に恵まれましたが当事者への取材時の話は衝撃の連続でした。
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上の引用の続きを書いておきたい。
父は語る。
「小学校一年生からサッカーを始め、サッカーが好きで好きで、どうにも止まらない子でした。練習から帰り、部屋で休んでいるときはサッカーゲーム、たまには本でも読めよ、と言えば、サッカー雑誌を読んでいました」
少年はピッチ上でも卓越した才能を見せ、U-12のナショナルトレセンのメンバーに選ばれる。中学生になるとJクラブのジュニアユースに選抜され、JFA(日本協会)が実施するエリートプログラムの常連になっていた。ジュニアユースに選抜され、Jクラブのアカデミーでは、効率的なトレーニングを重ねてサッカーの楽しさを満喫した。ユース昇格は逃したが、いくつかの高校から勧誘され、その中から全国選手権の常連高校を選択し、親元を離れて寮生活を送る決断をする。
ところがここから運命は、思いもよらぬ方向へと暗転していくのだ。
ここから先はぜひ、本書を読んで欲しい。
成長期の少年が怪我を負って試合に出され、 ろくなリハビリも受けれずに軍隊のような練習をさせられる。「怪我をして練習を休む=サボり」という空気感。次第に心も体も歪んでいく…
本書には、このような話(事実)が赤裸裸に綴られている。
育成年代に一石を投じる内容です。
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日本は育成年代の文化を変えなければならない
昔はこんなにヤワじゃなかった…と言う指導者がいるけれど、時代は変わり、価値観も変わっている。サッカーの本質とは?などと考えたこともない根性論で塗り固められた発想からの脱却、部活制度そのもののあり方を疑うことのできる柔らかさが求められている。
育成年代を変えるということは、未来を変えるということです。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…
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