J1リーグ 第17節、柏レイソル対サンフレッチェ広島。
一点を先制された柏は、前半のアディショナルタイムに北爪健吾のゴールによって同点に追いついた。
このゴールは北爪にとってJ1初ゴールとなる記念すべきもの。
そのゴールから、皆様に是非知って欲しいことがある。
それが、
「疲れていても正確な技術を発揮する」
というプロ選手の能力だ。
北爪のゴールはまさにそれを体現した素晴らしいゴールだったので、順を追って解説していきたい。
実際のゴールの映像
まずは映像からご覧いただこう。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ (@J_League) 2020年9月19日
🏆 明治安田生命J1リーグ 第17節
🆚 柏vs広島
🔢 1-1
⌚️ 45+2分
⚽️ 北爪 健吾(柏)#Jリーグ#柏レイソルvsサンフレッチェ広島
その他の動画はこちら👇https://t.co/JUEMOXLYeZ pic.twitter.com/8yZYQxvtrl
ラストパスを出した江坂の視野の広さとキックの精度も素晴らしいが、ここでは北爪の動きに的を絞って解説したい。
北爪のスタート地点
このゴールは、柏がボールを奪ったシーンから始まる、カウンターによる得点だ。
ボールを奪った直後の様子がこちら。
自陣のペナルティエリア前にいる北爪。
ここから猛ダッシュを始める。
北爪の走った軌道
このとき、前線には左に江坂、中央にオルンガ、右に呉屋という状態でそれぞれ走り始めている。
ここからそれぞれがどんなコースを取ったか。
これがオルンガに縦パスが入った瞬間。
呉屋はオルンガをサポートするために寄り、江坂も同様の理由で前進を止めてパスコースを作りに行く。
その結果、各選手の配置はこうなる。
オルンガがDFを背負いながらボールを確保。
降りてきたところのスペースを呉屋が狙う。
左サイドのDFは江坂も相手にしなくてはいけないため、呉屋としては特に狙いたい。
そうやって人がずれていったときに空く場所。
それが呉屋の背中である。
もしかしたら呉屋はここまで計算していたのかもしれない。
いずれにせよ、北爪はここが空く事を察知してフルスプリントを続ける。
そのスペースと動きを見逃さなかった江坂はワンタッチで素晴らしいボールを北爪へ供給した。
長距離ダッシュからの完璧なファーストタッチ
このボールを受けるとき、北爪はインサイドでは無くインステップ、足の甲でファーストタッチをしている。
おそらくだが、左側からDFがプレスに来ているため右足の前に転がしたかったのだろう。
インサイドでは股関節を大きく開かなくてはいけないため、走りながら行うのは難しい。
インステップであれば、それに比べれば簡単だ。
だがあくまで比べれば、である。
そもそもインステップでトラップというのは高等技術だ。
インサイドは面でトラップできるのに対し、インステップではより点に近い。
ましてや左から来たボールを僅かに右に流すというトラップだ。
一般的なトラップとは、ボールの進行方向を変える、または運動エネルギーを0にする行為だ。
進行方向を変えるのであれば反射させれば良い。
だがこのシーンのトラップは、進行方向をそれほど変えずに勢いだけを減らさなくてはいけない。
止めすぎてもいけない、反射させてもいけない。
受け流すような絶妙なトラップを北爪は成功させた。
それも、ただ成功させただけではない。
スタート地点からトラップした位置。
概算だが、65mほどあるはずだ。
前半45分を戦い抜き、アディショナルタイムという一番しんどい時間帯に自陣ゴール前から全速力で65mを走り、難易度の高いトラップを成功させシュートを決める。
走りきれるという肉体のタフさ。
走ろうと決断する精神のタフさ。
疲れていても、長距離ダッシュした後でもブレない正確な技術。
北爪のJ1初ゴールは、J1という舞台にふさわしいプロフェッショナルであると見せつけるようなゴールである。
筆者ブログの紹介
筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter
筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。
その一つの集大成として、中高生に向けたブログ
「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」
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といった様々な方のご参考にもなればと思う。
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