大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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サッカーをセンス良く伝えるために読んでおきたい記事3選(vol.28)

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サッカーをセンスよく伝えるために、私たちが理解しなければならないことはなにがあるでしょうか。

サッカーの本質とは何か、サッカー文化を育むために求められていることはなにかを考え続ける必要があると思っています。

サッカーの魅力を後世に伝えること、残すことが私たちサッカーを愛する大人の仕事なのだと思います。

日本という国で育まれる子供たち、サッカー以前に、この地球で生きていく上で大切なことはなんだろうかと今一度考えるタイミングなのかなと思います。

今回、三つの記事をご紹介させていただきますが、まず最初に紹介する記事ではサッカーの話ではありませんが、子供たちにサッカーを指導する前に私たちが考えるべきテーマになります。

大人に求められているのは、子どもを信じて、腹をくくれるかどうか

今、早期教育が全盛です。習い事をとにかくたくさんやらせる。手遅れにならないように、やらないよりやらせたほうがいい、と。

先日、保育園の運動会に呼ばれたんですが、驚きました。年長さんの障害物競走では、子どもたちが鉄棒で逆上がりしてから前に走っていくんです。保育園で逆上がりですよ。小学校の課題が、どんどん保育園に降りてきている。もう子どもたちの生きにくさはピークに達しているんじゃないかと思います。

大人たちは不安なんです。そして子育ての完璧さ、正しさを求めすぎているんです。それも、子どもに対して求めている。

だから子どもたちは弱音が吐けない。つらい感情を外に出せない。そして子どもたちはそのストレスを別の子にぶつける。そうやっていじめが再生産されていくんです。

遊びを通じて、私たちが提供したいのは「安心して失敗できる環境」です。「失敗したらダメだよ、ケガしたらたいへんだよ」という大人の不安が子どもの可能性を奪っていきます。「失敗するな、完璧にやれ」と求められるなかで、子どもたちはどんどん縮こまってしまいます。

近年、生きづらさを抱えている若者たちに出会うと「0か100かタイプ」の子が増えていることに私は気づきました。100%できないと自分が許せない。100%できないなら0と同じ。80、90の自分は許せないんですね。テストでも、90点確実に取れると思っても、たった1問解けなかったら、答案を全部消してしまうんです。苦しいだろうな、と思います。

本当は「できる力」も大事ですが「できない」ということを受けいれられる力も大事なんですね。「なんとかなるさ」と思える力。失敗するかもしれないけれど、そのあとまたカバーできる、と思える力。そういう力は、遊びのなかで育ちます。

遊びのなかで子どもは失敗します。木から落ちて骨折しちゃった。しょうがないじゃん。俺がやりたかったんだもん。「ケガと弁当自分持ち」。自分で責任を取るから、あんたのせいだって言わないから禁止にしないでね、という子どもの声を聴いてつくってきました。

www.huffingtonpost.jp

 

日本の育成年代に携わる大人の価値観をアップデートする必要がある

海外から見た日本の育成年代のスポーツ環境はかなり異質のようです。大会でよく見かける圧倒的大差の試合、力が歴然としている試合を子供たちが行わなければならないことに違和感を感じるようになることからなのかもしれません。

もしトーナメントすべての試合を10点差で勝って優勝したら、そのチームの監督はクラブに戻った後に親御さんや関係者から怒られますよ。「全然つまらない」「なんでそんな大会出たんだ!」と。逆に全試合大敗しても同じ。何が問題かというと、僅差の試合に出て、勝ったり負けたりを経験することがスポーツ本来の在り方であり、大味な試合ばかりでは子どもたちの能力は上がらないということです。

――いわゆるトーナメント制の弊害ですね。他にもどんな点が挙げられるでしょうか?

 トーナメント形式の戦いは毎試合負けられない状況に置かれるため、たくさんの補欠選手を抱えざるを得ません。ピッチャーでもGKでも2番手以降を使えず、彼らが成長する仕組みがありません。コーチ(指導者)としても、“いろいろな選手をやりくりして勝つ”という戦略をまったく勉強しないまま、上手い選手を出すという作戦に行きついてしまう。これは作戦とは言えないですし、勝てたのは(良い指導をしたのではなく)良い選手を集めたからです。

すべて大人のせいなのですが、子どもたちがそこまでして日本一を目指す必要がどこにあるのか?と思います。勝利ばかりを追求する結果、育成が疎かになり、試合に出られる選手が少なくなるのであれば、ユーススポーツとしては意味を成していない。

 アメリカでは、高校野球の大会もアイスホッケーの12歳までの大会も、州大会までしかありません(高校野球は州によって別地区と対戦する例はあり)。ちなみにアイスホッケーは8歳以下の大会では優勝が決まる大会すら開催を禁止しています。練習試合のような形式をとって、試合の勝敗をつけない仕組みになっています。なぜかと言うと、その歳の子どもたちはどちらが勝ったのかを覚えていないからだそうです。

 これは大会を運営する人間がまず変わらないといけない問題だと思います。 

number.bunshun.jp

 

日本との決定的な差は「リズム」

14歳から指導者を志し、スペイン代表のヘッドコーチも経験したロベルト・モレノ氏のインタビューがとても興味深いものでした。

稲若 レアル・マドリーのカンテラ責任者と話している際に、「日本人がどんなにうまくてもレアル・マドリーでプレーできないのは大きな1つの問題がある。それはプレーのリズムだ。そこが明らかに違う。そこが変わらない限り、どれだけ技術がある選手でもプレーすることは難しい」と話していたのが印象に残っています。

モレノ 分かりやすい例でいうならエイバルの乾だろう。彼の技術はスペインの中でも非常に高い評価を得ている。そんな乾でも、リーガに適応するには時間を要した。理由は単純な走る速さや運動量、パススピードの話ではなく、頭のスイッチの切り替えの速さの問題だといえる。そして、これは幼少期から積み重ねられてきたものでもあるんだ。 久保やピピが違和感なくプレー出来ているのは、その速いリズムを持っているから。どれだけ技術レベルが高い外国人選手でも、バルセロナやレアルのユースのテンポにアジャストし、生き残っていくのは難しい。慣れる時間も必要だし、環境に適応するセンスも必要となってくるんだ。

 

稲若 このリズムやテンポは本質的でもあり、指導の中で選手に植えつけるのが難しい部分でもあります。それをトレーニングで伝える術はあるのでしょうか。

モレノ トレーニングの方法に正解はないし、答えにたどり着くまでに継続した努力が必要でもある。ダイエットに成功しても、リバウンドしたら意味はないからね(笑)。インビジブル・トレーニングの概念でいっても、準備面をいかにできるかも関係してくるだろうね。

 私から言える明らかなことは、単純にヨーロッパのコピーをしてはいけないということだ。その国にはその国のサッカースタイルがあるし、文化や民族性がある。大切なのはこの文化を大切にしながら、優れた理論を自国の文化に落とし込むという姿勢だ。イニエスタが日本でスクールを始めたのも、そういった部分を日本に伝えたかったという面もあるのだろう。イニエスタは本当に日本人を高く評価しているが、その分もったいない、と感じている部分もある。大きな枠でいうなら、その1つがリズムでもあるんだ。

 ただ、この概念を浸透させるには時間が必要となる。日本人は技術が高く、運動量もあり、走るスピードも速い。つまり素養は充分にある。実際にイニエスタが我々に日本人のことをよく話すから、スペインでの日本人に対する見方は変わってきた。そして3年ほど前から乾の活躍や久保の存在もあって、日本人の評価は高まっていることは紛れもない事実だ。レベルの高い指導者が増えてきてリズムが早くなれば、本当の意味での欧州トップクラブで活躍する選手が増えてきても何ら不思議はないはずだよ。

「単純にヨーロッパのコピーをしてはいけないということだ。その国にはその国のサッカースタイルがあるし、文化や民族性がある。大切なのはこの文化を大切にしながら、優れた理論を自国の文化に落とし込むという姿勢」

我々が追求するべきは、このように日本という国の特性を踏まえたフットボールなのだと思います。日本人とはなんなのか、もっと学び、考えなければならない。

number.bunshun.jp

  

 サッカーの本質を追求する旅はつづく…

 

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