大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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日本サッカーの未来へ向けてのヒントを探る。日系ブラジル人の通訳に聞いたサッカー文化を育むためにできること

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©KAGOSHIMA UNITED FC

J3鹿児島ユナイテッドFCでポルトガル語の通訳を勤めるダニーロさん。ブラジルと日本の文化を知るダニーロさんに日本サッカーの課題、未来についてお話を聞きました。日本サッカーがどのように発展していくべきか、改めて考えていきたいと思います。 

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プロフィール

アントニオ ダニーロ ヒデキ 上原

鹿児島ユナイテッドFC トップチーム通訳

生年月日|1989年8月9日

 

ダニーロさんの生い立ち

私は日系ブラジル人の母と、ブラジル人の父との間に生まれました。母が最初に日本に出稼ぎに出て、後から追いかけるように父は私を連れて来日したそうです。その時、私は1歳になるちょっと前だったと聞いています。

母と一緒に日本にやってきて、日本の保育園に入ってからはずっと日本の学校教育を受けてきました。 私がまだ小さい頃に両親が離婚してしまって、母子家庭になったので母は本当に大変だったと思います。

それでもボカジュニアーズの日本支部(ボカジャパン)のセレクションを受けたいというわがままを聞いてもらいましたし、さらにはアルゼンチン研修まで行かせてもらいました。家計的にも大きな出費だったと思います。母には感謝しかありません。

でも、母のおかげで自分に自信が持てるようになりました。

 

サッカー王国ブラジルへ

高校卒業後は、沖縄のレキオスFCで半年サッカーをした後に、チームの何人かの選手達とブラジルへサッカー留学したんです。約10ヶ月ブラジルにいて、一緒に行った日本人の選手に通訳をする機会があったのですが、それが人生はじめての通訳でした。

帰国してからは滋賀県の甲賀健康医療専門学校(現 ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校)に入学し、そこで2年間プレーしました。その後、就職してサッカーとは関係のない仕事をしていたのですが、たまたま仲間と参加した日系の南米コミュニティの1DAY大会で代理人の方に出会いました。その方にサッカークラブで通訳の仕事をしないかと誘われたのが通訳をはじめたきっかけですね。

それから2年後に鹿児島ユナイテッドにお誘いをいただいて、現在までお仕事させていただいてます。

日本とブラジル、文化の違いによるサッカーの違いについて

日本人とブラジル人は、まずリズム感が違いますよね。ブラジル人は小さい頃からサンバや音楽に慣れ親しんでいます。

あとはブラジル人は日本人と比べて時間にルーズな傾向があります。ブラジルがルーズというよりは、日本がとてもしっかりとしているという文化の違いだと感じます。

 これらがサッカーにどのように影響しているかという話ですよね。

サッカーはリズムが大事なんです。試合の流れにもリズムがありますが、ピッチにいる選手がそのリズムの変化を感じることが求められます。ブラジル人はこのような変化を感じる感覚を持っていると思います。

日本人はリズム感は秀でていませんが、ルーズさがなくきっちりとしていますよね。ブラジル人にはない勤勉さがサッカーでも優位に働くことはあると思います。

日本がブラジルに学ぶべきことの一つは、情熱だと思います。ブラジル人はサッカーに対しては信じられないほど情熱を注ぎ込みます。自分のすべてを投げ打ってでもという強い気持ちがあるんです。サッカーにかける情熱は日本も学べるところかもしれません。

ブラジルにはサッカー文化が溶け込んでいます。どんな街にも、小さい街でもサッカーが必ずあります。 ブラジルに行った時、街中でサッカーしていると、年齢性別関係なく、いろんな人が集まってきて一緒にプレーします。

ブラジルのストリートで出会った少女が恐ろしく上手かった 

ブラジルに行ったときに衝撃的な出来事がありました。ストリートサッカーでたまたま一緒にプレーした女の子がめちゃくちゃ上手かったんです。あまりにも上手いから、どこでプレーしてるの?って聞いたんです。すると「クラブではサッカーやってないわ。いつもみんなでこうやって遊んでるのよ」って言うんです。信じられなかったです。13〜15歳くらいの女の子でしたが、ゲームで股抜きされるし、ボールは奪えないし、こんなに上手い女の子がクラブにも入らずに街中に何人もいると思うとすごい国だなと思いました。

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ボンボネーラの熱狂を知って、サッカー文化の差を感じた話

ボカジャパンでアルゼンチンのボンボネーラに行った時の話です。これもサッカーに対する情熱の違いを伝えたいのですが、日本では考えられない熱量がスタジアム全体に溢れているんです。もう圧倒的に違います。ボンボネーラはピッチが近くて臨場感がすごいんです。コーナーキックでリケルメが蹴るときに、子供たちが金網に登る光景を見たときに、これがアルゼンチンという国のサッカーなのかとまさに文化の違いを感じました。本当にもうすごい雰囲気だったんです。 

 サッカー文化の違い、国民性の違いによってピッチでの表現は当然変わりますが、小さい頃から積み重ねているものがやはり違う。知らず知らずのうちに蓄積された日常のサッカー文化、その差は大きいと感じます。

感情の開放ができる国とできない国の違い

日本でもサポーターの熱量は感じます。しかし、日本とブラジルは比べるべきではないと思います。文化が違いますから、どちらが良いという話はあまり有意義ではないと思います。日本で素晴らしいと思うのは、サッカーをプレーしたことがない、あまりよくわかってない人でもプレーに感化されて喜べることだと思います。 当然、ブラジルやアルゼンチンと比べると感情の量、熱量は違います。国民性の差だと思うのですが、日本人はあまり感情を表に出さないですよね。それに比べて、ブラジル人やアルゼンチン人は感情を開放します。それがスタジアムの熱量の差だと思います。

日本の上下関係と、ブラジルの年上年下関係の違い

日本だと感情を解放しにくいというのはあります。ブラジル人はダイレクトに伝えることが普通のことなのでストレスを感じたことがありません。先輩後輩文化がないという違いも大きいと思います。ブラジルは日本とは違って上下関係がないです。こういうと語弊があるので補足させていただくと、ブラジルは年齢による差別がないということなんです。年上にも年下にもリスペクトを持って接するという前提があるから成り立っていると感じます。日本に欠けているのはそこかもしれません。先輩と後輩の関係でもリスペクトが双方にないとおかしなことになると思います。

日本がブラジルから学べること

例えば、ブラジル人はリラックスできて、余計な力が抜けているから素晴らしいプレーができる傾向があります。日本人の課題といえばそういうところなのかもしれません。あとは、どうやって力を出し切るかです。このような良い部分を取り入れていくことで、確実にサッカーは上手くなると思います。ただ、国民性の違いと文化の違いは大きいです。日常的にサンバと音楽に触れることで自然にサッカーに求められる動きが身についていく国と、そういうことを教えたり意識しないといけない国の差はやはりあるのではないでしょうか。

サッカーが上手い選手でサンバが踊れない選手はいない

ブラジル人でサンバが踊れない一流選手はいないと思います。サッカーが上手い選手はみんなグニャグニャしています。少なくとも堅い選手で良いプレーヤーを知りません。ブラジル人から学べることはいくつかあると思いますが、柔らかさの重要性は一つポイントになるかもしれません。

お母さんへ

 私のお母さんは陽気で、いつも笑っている人なんです。離婚もあったり、生活も苦しかったはずなのに、苦しさを一切見せませんでした。私が伸び伸びと生活できるように振る舞ってくれました。家計は苦しいのにやりたいことを後押しをしてくれました。勉強しなさいと言われたことはありません。スキンシップが多かったですし、愛情はたくさんもらいました。感受性が豊かで、あれしなさいこれしなさいと言われたことはありません。そんな母に感謝しています。そして、日本のサッカーをする子どもたちのお母さんたちにも、愛情をたくさん与えてあげて欲しいと思います。たくさん挑戦させてください。そして暖かく見守ってあげてください。そして最後に、鹿児島ユナイテッドFCの応援もして頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

 

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