サッカーは国によってスタイルが異なる。
南米でもアルゼンチンとブラジルはプレースタイルも違えば、選手個々の特徴も全く異なるのだけれど、そのサッカースタイルの違いについて考えてみたい。
ブラジルにはシザースという伝統的なフェイントがある。
ロビーニョやロナウジーニョ、ネイマールといったドリブラーはシザースを巧みに使う。
しかし、メッシやアグエロ、ダレッサンドロ、リケルメなどドリブルを得意とする選手がシザースを使うところを見たことがない。彼らは足の裏を巧みに使いボールを操るのが特徴だ。メッシは足の裏のテクニックよりもボディフェイントが凄すぎるのだが。
なぜアルゼンチンの選手はシザースしないのか?
ブラジルとアルゼンチンという南米の2つのサッカー大国、物理的な距離は近いのだが、サッカー文化は驚くほど異なる。
なぜアルゼンチンの選手はシザースをしないのだろうか… 『サッカー「観戦力」が高まる』という面白い書籍があるのだが、この本にはこんなことが書かれていた。
シザースはボールを体の前にさらす形でフェイントをするのでブラジル人に比べて体格が小さいアルゼンチン人は、そもそもこのスポットにボールを置く選手が少ない。
また、シザースでまたぐ間はボールに触らないので、ドリブルのスピードが落ちるのもデメリットとなる。アルゼンチン人といえばバビーフットボールというフットサルよりも小さなコートにたくさんの子供が入り混じって行うサッカーが有名だ。
少年時代にそのような狭いピッチで次から次へと敵が襲いかかってくる環境を経験しているので、シザースをしている暇すらもないのだろう。そのような中で生まれてくるアルゼンチンの選手は、細かいタッチとボディフェイクで密集地帯をスラロームするドリブルを得意としている。
--中略--
フェイントはただ単に種類が多ければいいというものではなく、実は選手たちは、自分のスタイルや体格に合ったものをセレクトして使い分けている。
【引用書籍】
サッカーをプレーする環境が文化を育んでいるということがわかる。
スペースのない狭いピッチ、Cancha(カンチャ)と呼ばれる荒れたボコボコのピッチでは自分の身体からボールを離さないようなテクニックが求められる。
そんな環境下ではアルゼンチン人のような足の裏を使ったボールコントロール、細かいボディフェイクが磨かれる。
サンバの陽気な音楽で育ったブラジル人は、自分の内にある感覚を表現することが身体に染み込んでいる。そして表現されるプレーはダンスに近いリズミカルなものになる。ロビーニョ、ロナウジーニョ、ネイマールはいつも音楽とともに生きている。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…