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ベガルタ仙台、クエンカに学ぶDFの裏を取る駆け引きとは

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J1リーグ第17節、ガンバ大阪vsベガルタ仙台。
ベガルタ仙台の長沢駿が挙げた先制点は、クエンカがDFの裏を取った突破からアシストされたものだった。

今回はこのクエンカの裏を取る動きを取り上げたいと思う。よく解説や指導者の口から出てくる「ボールが無いところの動き」のお手本と言える素晴らしいプレーをぜひ見て欲しい。

 

 

実際のプレー映像

 

まずは映像をご覧いただきたい。

 

 

 

 

 

受ける前に何をしていたのか

 

 

クエンカは特殊な技能であるとか、スーパーな身体能力を活かしたのでは無い。

どんな動きをしたのか、まずはそこから見てみよう。

 

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この左端にいるのがクエンカだ。

このとき、クエンカは何一つ動く素振りを見せていない。

 

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味方の足下にボールが来るタイミングで、クエンカは寄りながら動く素振りを見せる。

 

 

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一歩だけ引く素振りを見せ、次の一歩で一気に反転する。

 

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結果、前に釣られたDFと入れ替わるように背後をつくことに成功した。

 

クエンカがしたことはたったこれだけだ。

 

 

なぜクエンカは裏をとれたのか

 

ではなぜクエンカは裏を取れたのか。

実はその片鱗は本文に既に書いている。

 

このとき、クエンカは何一つ動く素振りを見せていない。

 

これが答えだと筆者は考えている。

 

クエンカは引いて受ける素振りを全く見せなかった。そして突然動いた。DFの警戒不足というのもあるだろうが、反応せざるを得ないのもまた事実だ。

そして突然の動きに釣られたDFが前に出る瞬間に、クエンカは反転するのだがこの反転の素振りもほとんどない。上半身に素振りを見せず、下半身の筋力で反転しているように見えるのもその影響だ。

 

慌てて前に出た瞬間に後ろを取られれば、DFとしては対処のしようがない。

このようにDFを操る動きを、「矢印」と表現することもある。動く方向を指すことが多く、この場面で言えば「DFに前向きの矢印を作って逆を取る」という言い方をしたりもする。知っておくとサッカーを見るときに少し楽しさが増えるかもしれない。

 

 

絶対的なスピード、相対的なスピード

 

DFを振り切るには相手をスピードで上回ることが必要になる。一つは絶対的なスピードだ。単純な足の速さと言い換えてもいい。FC東京の永井はその第一人者ともいえる。

一方で相対的なスピードというものも存在する。これも筆者は種類があると考えているのだが、そのうち一つ目が緩急だ。直前まで動かない、あるいは緩やかな動きから急激に加速する。この落差によって相手を置き去りにすることが出来る。

そしてもう一つが自分とDFのスピードの差だ。自分が時速20kmでも、DFが時速10kmで反対方向に動いていればその差は30kmになる。自分より足が速い相手でも、相手が反対方向に動いていれば当然だが上回ることが出来る。

 

クエンカはこの両方を利用し、見事に裏を取ることが出来た。相手を見てプレーする、というのは決して簡単ではない。心理的な駆け引きのお手本と言えるこのプレー、見事である。

またクエンカの急な方向転換をしっかり見て最適なパスを出したパラも素晴らしいプレーだった。ボールから目を離すことが出来ない選手は、クエンカの寄ってくる動きに反応して足元へのパスを選択してしまうことが多いのだが、クエンカの動きを最後まで見て意図を汲み取り、そのうえで質の高いパスを送り込んでいる。この判断の柔軟性と精度もまた、称賛されるべき素晴らしいプレーだった。

 

出し手が受け手の意図を汲み取ったとき、そこには以心伝心ともいえるコンビネーションが実現する。それは規模の小さい奇跡だ、とすら筆者は思っている。そんなサッカーの魅力が詰まった1シーンであった。

筆者ブログの紹介 

筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter

筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。

その一つの集大成として、中高生に向けたブログ

 

「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」

 

reading-football.work

 

というサイトを運営している。

 

 

中高生に限らず、

 

・もっとサッカーを楽しみたい

・サッカーを深く知りたい

・選手がどんなことを考えているのか知りたい

・指導の参考にしたい

 

といった様々な方のご参考にもなればと思う。

 

もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。 

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