私は小学1年生のとき、サッカーに出会いました。
それまで、運動は好きだったけれどスポーツクラブに入ったことはなく、放課後は友達とおしゃべりしたり、鬼ごっこをしたりしていました。
ある日、公園で楽しそうにサッカーをしている大人たちの横で友達と遊んでいたら、ボールが足元に転がってきました。
ボールを拾って、サッカーをしていたひとりのお兄さんに渡した時、そのお兄さんが私たちに声をかけてきました。
「一緒にサッカーする?」と。
私は最初は戸惑いました。サッカーなんてやったこともないし、ルールもわからないし、ボールを蹴ったこともないし…でも、お兄さんたちの「おお、一緒にやろうやろう!」という陽気な誘いと、友達も「やってみようよ」と言ってくれたので、勇気を出してお兄さんたちのサッカーに加わりました。
最初は初めてのサッカー体験だったのでドキドキしていましたが、ボールに触れる度に、お兄さんたちが盛り上げてくれて、いつの間にか夢中で楽しんでいました。
お兄さんたちはすごく上手で、ボールをパスしたりドリブルしたりシュートしたり自由自在で、何より楽しそうにサッカーをしていました。
そして、忘れられない瞬間がありました。それは、私が初めてゴールを決めたときです。お兄さんがパスを出してくれて、私は思い切ってボールを蹴りました。すると、ボールはキーパーの手をすり抜けてゴールに吸い込まれました。
私は信じられない気持ちで目を見張りました。そして、お兄さんたちが「やったね!」「すごいじゃん!」と言ってハイタッチしにきてくれました。
そのときの嬉しさと感動は今でも忘れません。
その日から私はサッカーにのめり込みました。毎日公園に行って友達と一緒にサッカーをしました。
お父さんとお母さんに「サッカーやりたい」と言って、サッカークラブに入れてもらいました。父は高校までサッカーをやっていて、サッカーが大好きだったので喜んでチームを探してくれました。
放課後はサッカーで遊び、週末は父とサッカーを楽しむ日々。サッカーは私の人生を変えてくれました。
自信がついたし、友達も増えたし、夢も持つようになりました。私はいつかプロのサッカー選手になりたいと思って頑張りました。その夢は叶わなかったけれど、大切な友達、たくさんの友情と愛情をサッカーからもらいました。
サッカー選手になる夢は叶わなかったけれど、サッカーは私にとって最高の遊びであり、最高のコミュニケーションの一つです。
今思い返すと、あのお兄さんたちはサッカーという最高の遊びを伝えたいという衝動を抑えられず、私たちを巻き込んだんだろなと思います。
だって、サッカーを好きにさせるってすごく楽しいから。
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この物語は、教え子の一人の女の子からインスピレーションを得て書いた実話に基づいた話です。
彼女は今や学校の先生になり、子どもたちの好奇心を育む最高の先生になるでしょう。
彼女がサッカーを始めたきっかけ、その原体験は子どもたちに連綿と受け継がれていく。そうなったら最高だなと思います。

- 作者:下田哲朗/アデマール・ペレイラ・マリーニョ
- 出版社:東邦出版
- 発売日: 2010年06月