今日ご紹介するのは、サッカーに携わる人だけでなく、ビジネスマンや教育者、子育て中の人など全ての人に読んでほしい本です。
指示命令のない自律自走型のチームづくり、子どもへの関わり方などについてのヒントにあふれている秀逸な1冊です。

- 作者:菊原志郎/仲山進也
- 出版社:徳間書店
- 発売日: 2019年11月30日頃
この本では、15歳でプロ契約し、20歳の時に日本代表に選出、現在は指導者として活躍する菊原志郎氏の実践に基づいた視点が、楽天大学学長であり、人材育成のプロフェッショナルである仲山進也氏のロジカルな視点で整理されていきます。
なかでも興味深かったのは、第2章「強いチームを育む組織文化」の「チームの成長ステージ」です。
「強いチームを育む組織文化」の「チームの成長ステージ」
著者の仲山氏は、チームの成長をイモムシがサナギになりチョウになるイメージに重ね、論理的に解説してくれます。
チームは、リーダーの指示命令で動くグループ期(イモムシ)で始まり、試行錯誤し、成功体験を繰り返していく、混沌とした、いわゆるカオス状態(サナギ)を経て、調和し自律したチーム(チョウ)に成長していきます。
周りに合わせる他律と同調の「グループ期」から「カオス期」に突入できた場合は、選手は言いたいことを言い合えるようになりますが、そのため、衝突も起こります。
この「わちゃわちゃした時期(試行錯誤と小さな成功体験)」を経ることこそが、サナギが蝶に「変態」するために必要なようです。
最終形態の蝶になると、個性を生かした役割分担が確立され、ピッチ内で起こった問題も選手間で解決され修正されていきます。「選手だけで自走するチーム」の誕生です。
少し想像してみてください。
あなたのチームでは、選手たちは誰もが自由に意見をぶつけあえる状態ですか?
選手たちは、指導者や、上手い選手の顔色を見てはいないでしょうか?
息子の所属するサッカーチームでも、最初の頃は、お互いが様子をうかがい、遠慮しあっていました。
コーチや目立つ選手の指示を聞き、言われたことをする、受け身の、いわゆる「グループ期(イモムシ)」だったのだと思います。
コーチは、イモムシをサナギに、そしてチョウへと導くため、様々な仕掛けを用意したようでした。
ある時期は、選手が決めたメニューで選手だけで練習し、選手だけでミーティング。
コーチはピッチにいるものの、じっと見守るだけ。どんなプレーであっても、どんなミーティングであっても全く口を挟みません。
大切にしたのは「選手同士の」コミュニケーションでした。
ある時期は、サッカー以外の活動を取り入れました。そこでは、サッカーの上手い下手は関係ありません。全ての選手が臆することなく発言できます。
なぜ「サッカー以外の取り組み」なのか。
気分転換や遊んでいるわけではないようです。
本書の中でも、サッカー的なヒエラルキーが関係しない分野での取り組みが紹介されていましたが、サッカーに関してのディスカッションとなると、往々にしてチームの中心となる選手のみが発言し、そうでない選手が発言しづらいことがあります。
そのため、サッカー以外の取組というのは、チームづくりで全員が発言できる環境を作るために重要な役割を果たすようです。
息子のチームは、今、「ここでは、思っていることを言ってもいいんだ」という心理的安全が確立されつつあり、カオス期をむかえています。
意見がぶつかり合うこともあり、うまくいかないこともありますが、チームの課題を他人事ではなく自分の課題として試行錯誤できるようになり、やりたいサッカーに向かって、息があっていくのを傍から見ても感じるようになりました。
ある日の練習のことです。
コーチ不在の時間帯がありました。
コーチはあえてなんの指示も出していなかったようですが、選手たちは、当たり前のようにウォーミングアップのメニューを行ない、ゲームをはじめました。
大人のいないその空間。選手それぞれが声をかけ、熱く、素晴らしい時間でした。途中途中で、自分達でミーティングをし、各自で課題を出し合います。そしてその課題を修正するため、再びゲームが始まりました。
大人の目があるないではなく、自走するチームとして成長していく姿がそこにはありました。
チームの成長の鍵は、グループ期からカオス期にすすむ、ということ。
グループ期からカオス期に進むには、思っていることを言っても非難、攻撃されない、という心理的安全が保証されることが必要ですが、絶対的な指導者や主力選手の顔色を見ながらプレーする組織になってしまっている場合や、指示・指示・指示…で選手の主体的な判断が奪われてしまっている場合は、「カオス期」に進めず、自走するチームへ成長することは難しいのかもしれません。
「個を伸ばす指導者・保護者」と「個をつぶす指導者・保護者」の違い
この本の第6章
「個を伸ばす指導者・保護者」と
「個をつぶす指導者・保護者」の違い
についても一読の価値があります。
ここで、菊原氏は大人の「評価しない」という態度の大切さ、「有益な失敗」の大事さについて語っています。
「自分で考えて動ける人」を育てる方法について、非常に多くの示唆に富むこの本には、まだまだご紹介したい箇所が随所に見られます。
きっとみなさんのチームづくりや育成の一助となるのではないかと思います。
プロフィール
サッカー少年の子どもを持つ母
子どもたちをもっと笑顔にするためには大人が変わらないといけない…
本には大人が変わるヒントがたくさん散りばめられています。
大人の心を育む本をご紹介していきます。
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- 作者:幸野健一
- 出版社:徳間書店
- 発売日: 2020年07月02日頃