COVID-19により開催が見送られていたJリーグ。
無観客、および厳重な感染対策の元にようやく再開することとなった。
今回はJ1の再開戦となった第2節、大阪ダービーから奥埜博亮選手のゴールを解説したいと思う。
再開する試合が因縁のダービーということで大いに注目されたこの試合。
選手達のモチベーションも最高潮だったことだろう。
豊富な運動量が評価される奥埜だが、このゴールは賢さ、技術、冷静な判断が生み出した素晴らしいゴールだった。
地味、と言われても納得してしまうこのゴールを細かく解説してみたいと思う。
ゴールシーン
まずは以下のツイートよりゴールシーンをご覧いただきたい。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ (@J_League) 2020年7月4日
🏆 明治安田生命J1リーグ 第2節
🆚 G大阪vsC大阪
🔢 0-1
⌚️ 45+2分
⚽️ 奥埜 博亮(C大阪)#Jリーグ#ガンバ大阪vsセレッソ大阪
その他の動画はこちら👇https://t.co/JUEMOXumQp pic.twitter.com/ZucwIejrIi
このゴールに至るまでの道程を、いくつかの段階に分けて解説していきたい。
クロスが上がるまで
まず注目してほしいのは清武のパスのコースとスピード。
守備にとって一番嫌なクロスとは、という問いは無限に答えがあるがそのうちの一つがワンタッチで上がってくるクロスだ。
クロスを上げる選手のドリブルもケアしなくてはいけない、中のマークも確認しなくてはいけないという状況において守備が一番欲しがるのは時間の猶予である。
その時間の猶予を削るべく、清武は何でも出来るようなパスを出している。
更に細かい話をすれば、清武は一瞬中へのスルーパスを匂わせている。
その結果、DFは丸橋のフリーランを恐れて一回体の向きを内側へ向けてしまった。
(引用・・・Jリーグ公式Twitter)
丸橋の前には広大なスペースが生まれているのが分かるだろう。
そしてこの間に奥埜は何をしていたか。
清武が丸橋にパスを出すまでは遠い方のCBに対応されている。
そして丸橋にボールが渡る直前、二人のCBの間から裏を取ろうとしている。
一人のCBは受け渡そうとマークを離し、一人のCBは裏を警戒しダッシュで下がる対応を取っている。
つまりこの動き一つで奥埜はCB二人をゴール前に釘付けにしたのだ。
ゴール前にいたのは奥埜ただ一人だが、この僅か4歩の奪取でCB二人をコントロールすることに成功した。
これはマークを受け渡したい心理、そしてCBの見える範囲外から走るという計算された駆け引きの成果だと言える。
結果、CBの前にぽっかりとスペースが出来、奥埜はマイナス気味のクロスを受けるべく裏取りを止めて動き直している。
クロス、そしてシュート
この動きに対して丸橋もギリギリまで顔を上げていたことで、CBが下がったスペースへのワンタッチクロスを選択した。
奥埜の動き直しに反応し、精度の高いクロスを上げた丸橋の技術と判断力は光るものがある。
そしてシュートの場面。
サッカーのセオリーの一つとして
「ワンタッチプレーはボールが来た方の足でする」
というものがあるのをご存じだろうか。
右から来たボールは右足で、左から来たボールは左足でプレーした方が精度が上がるというセオリーがある。
これはボールを迎え入れながら触れるという利点に基づいたものだが、少しでもナーバスになるとこのセオリーよりも利き足を優先してしまうことが起こる。
この場面、奥埜はキチッとセオリー通りに左足のインサイドで丁寧にシュートを放っている。
CBが消したニアへのシュートを避け、ファーへのシュート。
それも少しバウンドしながら向かってくるボールを抑えながらのシュートだ。
派手ではないが、こういった丁寧さがゴールを生んだと筆者は考えている。
奥埜の魅力「運動量」のもう一つの意味
冒頭で
「豊富な運動量が評価される」
と書いた。
運動量に定評があるということはスタミナがあるわけだが、このスタミナというのはただ走れる、だけではない。
このゴールが生まれたのは前半のアディショナルタイム。
当然だが、心身ともに疲弊しながらあとひと踏ん張り、という時間帯だ。
その状況でもクレバーな駆け引きと確実な技術を発揮した結果ゴールが生まれている。
スタミナがあるということは、きつい時間帯でもプレーの質が落ちないということへ繋がる。
誰だって疲れてきたら技術ミスも増えるし頭も回らなくなる。
奥埜はそうなってもおかしくない状況で、高いクオリティのプレーが維持できていたのだ。
ただ走行距離が長い、だけでは計れない価値がそこにはある。
筆者ブログの紹介
筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。
その一つの集大成として、中高生に向けたブログ
「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」
というサイトを運営している。
中高生に限らず、
・もっとサッカーを楽しみたい
・サッカーを深く知りたい
・選手がどんなことを考えているのか知りたい
・指導の参考にしたい
といった様々な方のご参考にもなればと思う。
もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。
- 作者:山口遼
- 出版社:ソル・メディア
- 発売日: 2020年06月01日頃