大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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川崎フロンターレ の脇坂泰斗はなぜ「やべ」と言ったのか。パスミスから学ぶプロの凄さとは。

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Jリーグ第16節、川崎対広島での一幕が筆者の目を引いた。

 

 

それは脇坂泰斗がパスミスしたときに

 

「やべっ」

 

と言葉を発したシーンだ。

 

 

このパスミスから、選手もサポーターもよりサッカーを面白く深く見れるきっかけを筆者は提案したいと思う。

 

なぜ脇坂はこんな言葉を発したのか、筆者の考察を是非参考にして欲しい。

 

 

 

 

実際の映像

 

 

まずは映像から。

 

 

 

これは声援禁止の今だから見ることが出来た珍しいシーンだ。

 

 

ではなぜこんな声を発してしまったのか、分析してみたいと思う。

 

 

なおこれはあくまでも筆者の推測であるため、脇坂の脳内とは全く違う可能性がある。

あくまでも一説として読んでいただきたい。

 

 

 

脇坂が犯したミスとは

 

 

 

脇坂は、パスミスをしてボールを失った。

 

パスミスには、大きく分けて二種類のミスが存在する。

 

 

一つは技術的ミス。キックミスと呼ばれる物だ。

狙ったところに蹴れなかった、というミス。

 

 

 

そしてもう一つは、判断ミス。

狙ったところに蹴れたが狙い自体が間違っていたという場合だ。

 

 

もちろん両方が同時に起こる場合もある。

狙いも精度も欠いてしまうことも起こりえる。

 

この二つを区別できると、選手の考えや狙いが見えてよりサッカーが面白くなる。

 

 

では脇坂の犯したミスはどちらだったのだろうか。

 

 

筆者が映像を見た限りでは、精度のミスではないと感じた。

 

蹴る素振り、足の向きなどは意図したとおりに見える。

 

 

では何故ミスとなったのか。

それはパスコースの共有に問題があった。

 

 

 

パスコースを共有する能力

 

 

 

この場面、パスを受けようとした旗手は左足側へ走り出している。

これはDFから遠い側でパスを受けようという動きだ。

 

旗手の頭の中では、

「脇坂と斜めの関係を構築し、ワンタッチでもう一回もらおう」

というイメージが有ったはず。

 

 

おそらくは、このまま中央へ進出し逆サイドを含む展開を考えていたのだろう。

そして脇坂は入れ替わるようにサイドへと流れる。

 

 

f:id:gosurokachi:20200916193238p:plain

 

 

ここまでのおおよその流れは脇坂も把握しているはずだ。

 

だが脇坂の出したパスは、旗手と行き違ってしまった。

 

 

そのために、左側に膨らんでパスを受けようとしている。

 

これはより広いスペースでフリーになるためだ。

脇坂に近づくよりも、やや離れる形で動くことによりスペースを確保しつつプレーできる。

 

 

 

この状況で重要なことは、左足でボールをトラップすること。

 

 

矢印を加えた画像を用意したのでご覧いただきたい。

 

 

f:id:gosurokachi:20200916175746p:plain

 

 

赤い矢印が理想の体の向きだ。

この向きでプレーするためには、左足でトラップをしたい。

自分の左側にボールを置きながら前を向ける。

 

だが右足でトラップすることになれば、自分の右側にボールが来るため必然的に青い矢印の方向に体が向いてしまう。

 

無理矢理右側にボールを置きながら前を向くことも出来るが、それでは逆サイドへの展開がしにくい。

 

簡単に言えば、左足で受けて斜め前向きに進むのがこの局面ではベストだと筆者は思う。

 

 

だが脇坂は右足側にパスを出してしまった。

結果としてすれ違う形になり、相手ボールのスローインになってしまう。

 

普段の脇坂であれば、動きから察知するかセオリーに沿うかできちんと左足に出していたはずだ。

その信頼があるからこそ旗手は信頼して先に動いているのだと思う。

 

パスコースを察知する能力は、なかなか観戦している側には伝わりづらいこともあって言及されることが少ない。

 

だがこのようにミスのシーンを紐解くことで、地味だがとても重要な能力だと言うことが理解いただけると思う。

 

以前にこちらの記事(ギラヴァンツ北九州、町野修斗のシュートはなぜ誰も反応できなかったのか解説する - 大人になってから学ぶサッカーの本質とは)で、

 

精度よりも意志が大事な場面

 

という文面を書いた。

このシーンでも同じ事が言える。

 

重要だったのは精度よりも、「左足前のスペースにパスを出す」という判断である。

技術のみでサッカーを語るのが不健全である、という日本では軽視されがちなサッカーの一面が、ここから伺える。

 

 

 

 

どちらの足に出すか、という気遣い

 

 

 

 ボールを持っている選手にとって

 

「どちらの足に向けてパスを出すか」

 

ということは、プレーの中で大切になってくる。

相手が必死に守ろうとしてくるプレッシャーの中で、ここまで細部に気を使ってパスを交換しているのがプロ選手なのだ。

 

 

 

脇坂が右足を狙ったのか、左足を意識せずなんとなくパスを出したのか、左足を狙ったがミスしたのか、真相は分からない。

 

だがこのように、単純なミスに見えても原因はいくつも考えることが出来る。

 

逆に言えば、何気ないパス交換にもこれだけの障壁があり、彼らはそれを当たり前のようにクリアしていることがプロである所以とも言える。

 

ミスしなければ気付かないような、そんな選手同士の気遣い。

  

そんなところに着目して試合を見てみると面白いかもしれない。

 

 

単に以心伝心ではなく、お互い勝利のために追求している細部の共有。

「神は細部に宿る」という言葉を体現するJリーガー達。

 

それは日頃の練習と才能が生み出すプレーであり、まさしく職人芸だ。

 

 

 

 

筆者ブログの紹介 

筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter

筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。

その一つの集大成として、中高生に向けたブログ

 

「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」

 

reading-football.work

 

というサイトを運営している。

 

 

中高生に限らず、

 

・もっとサッカーを楽しみたい

・サッカーを深く知りたい

・選手がどんなことを考えているのか知りたい

・指導の参考にしたい

 

といった様々な方のご参考にもなればと思う。

 

 

もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。 

 

 

川崎フロンターレ365

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  • 作者:
  • 出版社:エス・アイ・ジェイ
  • 発売日: 2019年12月20日頃
川崎フロンターレが伝えるサッカーから学ぶ運動のきほん

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  • 作者:川崎フロンターレ
  • 出版社:ベースボール・マガジン社
  • 発売日: 2014年07月