ベトナムのハノイへサッカーの取材旅行に行ってきました。
経済発展と共に、アジアサッカーは急激に成長しているという話は至るところで耳にしてきました。
その中でも、ベトナムサッカーは注目すべきだと多くのサッカー関係者は言います。日本を超えるサッカー人気があり、近い将来日本を上回るポテンシャルがあるというのです。
そんなベトナムサッカーを体感する取材になったのですが、現地ハノイでベトナムサッカーに携わる井上寛太さんにお話を伺うことができました。
井上さんはU-16日本代表経験があり、酒井高徳選手や原口元気選手、宇佐美選手と共にプレーしていたという実力者で、Jリーグを経てヨーロッパ6カ国でプレー経験がある異色の経歴の持ち主です。
現在はベトナムのハノイでサッカースクールを運営し、ベトナムの子どもたちと駐在の日本の子どもたちにサッカーを指導されています。
海外での経験を経て、ベトナムでサッカーを指導する井上さんは、日本サッカーをどのように見ているのか、サッカーの本質に迫るインタビューになりました。
プロフィール
U-16日本代表では宇佐美選手や酒井高徳選手、原口元気選手らと共にプレー、その後、立命館大学、社会人チームを経て、Jリーグの長野バルセイロでプロデビュー。そして単身ヨーロッパへ。欧州リーグ6カ国を渡り歩き、2017年に現役引退。現在はベトナムのハノイでサッカースクールを運営。
日本サッカーの課題とは
ー海外でプレーされた経験を踏まえて、日本サッカーの課題はどんなところにあると考えていますか?
日本は、本当の意味で戦える選手が少ないと思います。本当の意味で人生をかけてサッカーしている選手はほとんどいないですね。
僕も実際そうでしたし、海外のサッカー環境に飛び込んでから、なおさら痛感させられました。
日本は経済的に豊かなだけに、別にサッカーがダメでも色んな就職先もあるし、大学にも進学出来るし、そういう環境とか保険がいっぱいあるから、心のどこかで妥協してしまう。特に育成年代などは、1試合1試合または、1日1日の生活を死に物狂いで過ごせていないと感じます。
ヨーロッパもそうですが、ベトナム代表の選手などは、貧困地域から成り上がってる選手が多いです。みんなこの貧困生活から抜け出したい。サッカーで成功しなかったら何にもない。という中で戦っているので、サッカーにおいても生活においても、ハングリーです。常に考えて、常に自分をアピールするし、常に誰よりも目立とうとします。
日本人は器用なので細かな技術は秀でていますが、自分を目立たせる技術、何としてでも試合に勝つ技術、この辺が劣っている思います。
ーサッカーにおいて、日本の良いところと悪いところってどんなところだと思いますか?
色んな国に住みましたが、日本の学校教育は他国と比べてかなり良いものだな。と感じました。みんな挨拶は出来るし、順番を守るし、人の心を思いやれるし、他人を優先させてあげられるし、協調性はあるし、素晴らしいです。
規律の中で過ごすのに適した民族という感じですね。
ただサッカーにおいては、その日本教育の文化が、規律の中だけでしかプレー出来ない。規律を作っているボスの顔色を伺いながらプレーする。ピッチでの表現力が乏しい。などのパフォーマンスに繋がっているのだと思います。いわゆる、自分の意思があるプレーではなく、やらされている選手がほとんどですね。
多分、ヨーロッパとか南米、ベトナムでもやらされている子どもはいないと思います。みんな、そのままの心を表現するんです。
道徳心や規律心が強い日本人は、素晴らしい人間性を持っているが故に、野球などの規律スポーツは強いですが、サッカーという個性をチームの中で表現するスポーツにおいては、ハンディキャップがあると感じています。
日本の教育とベトナムの教育の違い
ー日本とベトナムの教育はどんな違いがありますか?
ベトナムでは子どもたちの感覚をとても大事にするように感じます。トップダウンではありますが、そのトップはみんな感覚で育ってきてるので、指導も良い意味で適当です。
今のA代表は、韓国人監督で非常に規律を大事にして組織的に戦っていますが、育成は全体最適というよりも個別最適で感覚的な指導だと思います。よく言えば余白のある指導ですが、実際は指導力がないのです。サッカーの本質を知る良い指導者が増えれば、どんどんレベルアップすると思います。
取材時にTwitterでこんなメモをしていました。
子供たちのマインドが開放されてるか、制御されてるかはとても大事で、日本の子供たちは後者が圧倒的に多いと、国内外で指導経験のある方が言っておりました。トレーニング方法とかメソッドとかよりもまずここ。自分からやる子か、やらされる子かで伸び率が圧倒的に違う。
— Kei Imai (@Keivivito) 2019年11月15日
これは井上さんの話を聞きながらつぶやいたのですが、
このマインドが開放されているかどうかは、サッカーだけにとどまらず、これからの世の中を生きていく上でも重要だと思うのです。
日本の教育文化を変えていかないといけない。そう思いましたし、その為に学び、発信し続けなければと思いました。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…