2006年6月22日。ドイツ、ドルトムントの地。
この年に開催された、ドイツワールドカップ。
サッカー日本代表は絶体絶命の状況を迎えていた。
日本が迎えていたのはグループリーグ第3節。
対戦相手はブラジル。決勝トーナメント進出のためには2点差を付けて勝つことが最低条件という、あまりにも過酷な状況。
そんな試合で先制点を奪ったのは日本だった。
ブラジルの一瞬のスキを突き、裏へ飛び出した玉田圭司。彼が振り抜いた左足は、日本代表に、そして日本国民に歓喜をもたらした。
そのシュートが今も脳裏に焼き付いている、そんなサッカーファンも多いだろう。
あれから13年。
V・ファーレン長崎で、今もなお玉田はプレーを続けている。
[基本を徹底するメンタルの強さ]
J2リーグ第24節 鹿児島VS長崎。
雌雄を決する九州ダービー。
前半44分に玉田は追加点となるゴールを挙げた。
そのゴールをご覧いただきたい。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ (@J_League) July 27, 2019
🏆 明治安田生命J2リーグ 第24節
🆚 鹿児島vs長崎
🔢 0-2
⌚️ 44分
⚽️ 玉田 圭司(長崎)#Jリーグ#鹿児島対長崎
その他の動画はこちら👇https://t.co/JUEMOXumQp pic.twitter.com/Y4yxcYdoYl
長崎のチャンスのシーンで呉屋の放ったシュートをキーパーがセーブ。
こぼれ球を玉田が押し込んだという泥臭いゴールだ。
キーパーが弾いたこぼれ球に詰める。
サッカーでは当たり前のように言われることかもしれない。
しかし、その当たり前を愚直に続けるのは、決して容易ではない。
シュートのこぼれ球を狙う。
運良く自分のところに絶好のボールが転がってくる。
そんなおいしい場面は滅多に訪れない。
何十回繰り返しても、報われないことのほうが多い。
努力が報われないとき、人は往々にして無駄と思い、辛い努力から逃げたくなってしまうものだ。
それでも僅かな可能性を侮らず、ひたむきにやり抜く姿勢はプロフェッショナルという言葉を彷彿とさせる。
また技術面でも、飛び出してきたキーパーの股を抜く冷静さ、無理な体勢からそのアイディアを実行する確かなテクニックを見せている。
必要なことを黙々とやり続ける。
冷静に技術を発揮する。
強靭なメンタルと積み重ねた努力に裏打ちされた、最前線で戦い続ける男の生き様が伝わるプレーだ。
[変わるスタイル、変わらない精神]
かつての玉田はスピード豊かなドリブラーであった。
が、スピードは年齢に比例し低下してしまう。
ベテランと呼ばれる年齢の選手には避けて通れない問題だ。
それは玉田とて例外ではない。
39歳になったかつてのスピードスターは、技術でチームを助ける潤滑油へと進化を遂げていた。
定評のあった足元のテクニックを生かし、攻撃の起点やビルドアップの受け手として柔軟なポジショニングと的確な判断で、攻撃の要となっている。
大きくプレースタイルを変えた玉田の姿がそこにはあった。
ワールドカップという大舞台でブラジルから先制点を奪ったほどの選手が、生存戦略としてスタイルを変え、プレーを続ける。
決して簡単な挑戦ではなかったはずだ。
それでも玉田は果敢にチャレンジし、活躍を続けている。
挑戦する姿勢、そして愛される人懐っこい笑顔。
大事なものは、絶望的な状況でも諦めなかった2006年から何も変わらない。
生き残るためにスタイルを変え、挑む精神は決して変わらず。
玉田圭司は今もプロフェッショナルとして戦い、進化を続けている。
書き手