大人になってから学ぶサッカーの本質とは

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サッカーは「人間関係のスポーツ」──教育をサッカーを変えるために(吉村雅文コーチインタビュー)

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「サッカーは人間関係のスポーツです」という吉村先生の言葉が印象に残っている。

 

順天堂大学スポーツ健康科学研究科 教授であり、クリアソン新宿 アカデミーのヘッドオブエデュケーションを務める吉村雅文さんにお話を伺ってきました。

参考:https://criacao.co.jp/soccerclub/information/post-21529/

 

取材のきっかけは、たまたまご縁があって順天堂大学サッカー部OBのランチ会に同席させていただいたことでした。

その時、吉村先生が親子ほど年の離れた教え子たちと、まるで旧友のように楽しそうに語り合う様子にすっかり魅了されてしまいました。

教え子とこんな関係性を築けるコーチって素敵だなと。

 

「吉村さんが見ていらっしゃる育成年代は、いまどんな状況でしょうか?」と質問させていただくと、先生は「サッカーの習い事化が進み、子どもたちは受け身になり、自分で答えを生み出そうとする気持ちが薄れてきています」と話してくださいました。

その反応をきっかけに「吉村先生はどんなサッカー観をお持ちで、現代の教育や社会に対してどのように感じてらっしゃるのだろう」と強く興味を抱き、取材を申し込ませていただきました。

 

サッカーは人間関係のスポーツ

Q.  吉村先生はサッカーをどのように捉えて指導されてきたのでしょうか?

 

A. サッカーは“人間同士のやりとり”が本質にあると考えています。テクニックや技術と同様に大切なものだと考えています。特に小学生から中学生年代に「心の成長」に寄り添えないと、本当に重要なスキルは獲得できないと思っています。

 

Q.  順大サッカー部のOBの子たちが、「吉村先生はチームの中に能力が劣る選手をあえて入れるんです。当時は衝撃でした」と話してくれました。そこにはどんな意図があるのでしょうか?

 

A. サッカーは人間関係のスポーツです。チームとして有機的にプレーするための前提だと考えています。そのために補完し合う力を養う必要があります。特に育成年代はそのようにチームの中で人間関係を築き、補完し合うことを大切にできるように肌で感じて学んでもらうというのが一番の目的です。

 

Q. そのようなサッカー観はどのように育まれたのでしょうか?

 

A. オランダでサッカーはミスのスポーツだということを学びました。

「サッカーの試合でボールに触れる時間は90分のうち2分しかない、88分は人間関係の積み重ねだぞ」

そう言われて衝撃を受けました。サッカーは人との関係論であるというのを身を持って学べたことが大きいです。

それ以来、どうやったらサッカーにおいてコミュニケーションが深まるかを設計することを意識的にしています。

ミスが起こる前提の競技だからこそ、仲間同士のカバーやコミュニケーションが重要になります。
海外でサッカーを学ぶ機会を得るたびに感じるのは、体温を感じるコミュニケーションの重要性です。日本ではハグや握手などスキンシップが少ないので、そのようなコミュニケーション文化の違いもサッカーにおいて人間関係が深まりにくい要因の一つかもしれません。だからこそコミュニケーションは大事にしていきたいと思っています。

サッカーは自分たちで答えをつくっていくものです。

正解はひとつではないので「どうやったらコミュニケーションが深まるか」をチームで編み出していくことが大切です。

社会で生きていくうえで大切なことでもあります。

大学を卒業したら社会に出る子がほとんどです。なにを学んでそれをどう活かすのかは彼ら次第です。だからこそサッカーを通じて大切なことを伝えなければいけないし、サッカー以外の大切なことも伝えなければならないと思っています。

 

「教育・指導・スポーツ」が崩壊しかけている

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Q. 長く育成年代を見てこられて、社会の変化とともに子どもたちに変化はありますか?

 

A. 教育や指導の現場が崩壊しかけているように思います。子どもたち自らの強い好奇心や欲求というのが非常に弱くなってしまっていると感じることは多いですね。

大学でも卒論や課題の“コピペ提出”が増えてきています、主体的に学ぶ意欲、好奇心を探求する力の低下はネット社会の標準化の影響はあるのかもしれません。学びの中身が抜け落ちている子が多くなっている印象です。

ジュニアからユース年代を見ても、サッカーの習い事化が加速していると感じています。

「自分の興味」を持つ子が少なく、興味があっても「どうすればいいか」を簡単に大人に聞いてしまう。小学生でさえ、自主的にコートを使って遊ばない。「遊んでいいよ」と言われないと行動できなくなってきています。

指導者が答えを与えるのではなく、選手自身がトライ&エラーを通して関係性をつくる場を設計する必要があると思います。

これはサッカーの時間だけではなくて子どもたちの日常の課題でもあります。学校教育、家庭教育の課題でもあるのだと思います。

 

日本サッカーの構造的な課題

Q. サッカーと教育と社会は繋がっているということですよね。


A. サッカーが文化として根付いていかない要因でもあると思います。子どもたちにとってサッカーをする機会が学校や部活が根幹であるためチームやコーチを簡単に替えられないという問題もあると思います。

従順な選手が“いい選手”とされ、本当の意味での「優れた選手」が評価されにくい風潮もあります。

子どもの自己表現が育ちにくい理由は「習い事化」しているスポーツ環境、同調圧力が強く、ミスを恐れる文化などの影響もあるのではないでしょうか。

サッカー育成年代全体の傾向としてもクラブが乱立してクラブ同士が子どもを“取り合う”ビジネス化の側面も影響はあります。

サッカーが文化として根付いていかないと、本当の意味で世界トップのサッカー大国にはなり得ないと思います。

構造もより良くしていかないといけないですね。

いまが変えるチャンスでもある

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Q. 多くの課題があるわけですが、サッカーの育成年代に関わる大人にできることはなんでしょうか。

 

A. いまが変えるチャンスでもあると思います。エコロジカルアプローチなど、サッカーに取り入れていけると効果的な理論が入ってきています。これらを学び、研究しながら実践していますが、育成年代にとってとても有効なアプローチになるはずです。

まだ詳細はお話できませんが、制約主導アプローチで練習したチームとそうでないチームを比較研究する取り組みをして興味深い結果がでています。

現代社会を生きる我々が置かれている状況、課題を改めて捉え直すとサッカーというスポーツの本質である人間関係、コミュニケーションを中心に置いた育成指導は改めてとても重要だと思っています。

共に学び続けて、気付ける人を増やしていきたいですね。

 

エコロジカルアプローチとは、プレイヤー(選手)と環境との相互作用に注目し、「選手が自分と環境の情報をもとに最適な動きや戦術を自ら見つけていく」ことを重視する理論・指導法です。
コーチが細かい動作を一方的に教えるのではなく、課題(タスク)や環境の条件を工夫して設定することで、選手の意思決定や動きの学習を促します。選手は“どうすればうまくできるか”を実際の状況の中で試行錯誤し、自然なかたちで必要な能力を身につけていくのが特徴です。