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ギラヴァンツ北九州、町野修斗のシュートはなぜ誰も反応できなかったのか解説する

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J2リーグ、第12節。

 

北九州VS町田の一戦で、素晴らしいゴールが生まれた。

 

 

北九州の20歳の若手、町野修斗が前半28分に決めた先制点だ。

 

 

今回はこちらのゴールから、シュートに大切なポイントを切り取って解説していきたい。

GKが全く反応できなかった見事なシュート。

 

そこには反応できない理由があったのである。

 

 

ゴールの映像

 

 

まずは映像をご覧いただこう。

 

 

 

 

 

シュートスピードがあることで、目を引く派手なゴールとなっている。

ダイレクトボレーはシュートの中でも花形と言える華麗なプレーだ。

 

 

ではここにどんな要素が詰まっていたか見ていこう。

 

  

 

シュート前のポジショニング

 

 

クロスが入ってくる瞬間、町野の前にはスペースが空いている。

 

本来ならば飛び込みたいところだが、町野は入っていかなかった。

 

これは筆者の想像だが、ディサロ燦シルヴァーノがニアへ飛び込んでくるのを予想してスペースを空けておいたのではないだろうか。

 

その間に町野はディサロからのパス、あるいはこぼれ球に反応できるような準備をしている。

北九州の選手がもう一人同じような準備をしているところを見ると、チームとしてトレーニングしていた形なのかもしれない。

 

いずれにせよ、このポジショニングと準備のおかげで町野は万全の体勢でボールを迎え入れることとなる。

 

 

シュートに詰め込まれた技術

 

 

クロスが上がった直後。

クロスボールがディサロよりもマイナス気味に来たため、町野をマークしていたDFが下がりながら対処する形になっている。

 

クリアミスのような状態から町野の足下やや右側へボールがこぼれていく。

 

利き足である右足でシュートを打つには最適とも言える軌道のボール。

 

しかし当然ながら、DFもシュートコースを狭めるべく寄せてくる。

 

 

この時のDFの心理として、

「右足でのシュートのコースを消す」

という意識があったことは想像に難くない。

 

結果、町田のDFは右側からプレスをかけることを選択している。

 

理由としては、

 

「右側に動きながら打つシュートは左側へ打ちにくいという身体上の構造、ファーサイドへシュートを打つだろうという予測」

 

があっただろう。

 

 

それはGKも同じ。

 

シュートの瞬間、少しだけ右側に移動していることがうかがえる。

というか、この体勢では普通の選手ならばファーにしか打てないのだ。

 

 

目の前で右側のコースを切られた町野。

 

選択肢はただ一つ、左側に打つこと。

 

そんなのわかりきったことじゃないか、と思われるかもしれない。

 

 

 

だがプロ同士の戦いでもこれだけ割り切った対処をするほどに、二アサイドへのシュートは考えにくいのだ。

 

 

 

ここで、シュートが決まる瞬間の画像を見て欲しい。

 

 

f:id:gosurokachi:20200816215549p:plain

(引用・・・Jリーグ公式Twitterより)

 

 

 

少しわかりにくいが、決してシュートコースはギリギリに飛んでいない。

 

それでもGKが一切反応できなかったことが、判断が正解であったことをなにより物語っている。

 

 

あの状況、この体勢で二アサイドへシュートを打つことは、誰一人頭の中に無かったのだ。

 

只一人、町野修斗を除いて。

 

 

そしてこのシュート、技術的な難易度はとても高い。

 

遠くにあるボールを巻き込むように足をスイングしなくてはいけないため、バランスを崩しやすい。

町野は軸足に体重を残しすぎず、右足に重みを乗せながら振り回すことでこの難題を解決している。

 

卓越したボディバランスとキックの技術が成し遂げた素晴らしいシュートだ。

 

 

 

精度よりも意志が大事な場面

 

 

サッカーの「スーパープレイ」や「スゴ技」と言われ注目されるプレーの多くは、精度やフィジカル、テクニックが突出したプレーだ。

 

 

だが往々にしてサッカーには、精度よりも意志と駆け引きが重要になる場面がある。

 

多少トラップが大きくなってもボールを動かす方向が正しければ奪われなかったり、少し精度が落ちてもパスする相手がフリーならチャンスを作れたり。

 

ボール一個分の精度を突き詰めるのも大事だが、同様に正しい選択肢を選ぶことも重要なのだ。

 

それがゴールという顕著な結果に繋がったのが今回のゴールである。

 

もちろんシュートスピードも素晴らしい。

だが何より凄いのは、ニアサイドへ蹴るという守備陣の想定を超えたプレーを選択し実行できたことだ。

 

それを支えたのは、

「俺ならニアでも決められる」

と思える確かな技術と身体能力だと思う。

 

本人は無意識に打ったのかもしれない。

 

しかし無意識に選ぶプレーこそ、自分の積み重ねが反映される。

 

 

意識的に選択したのならその判断力に。

無意識ならば積み重ねた実力に。

 

どちらにおいても筆者は賞賛を送りたい。

 

 

見た目の派手さだけではなく、選手としての質の高さを見せたゴールだった。

 

 

  

筆者ブログの紹介 

筆者:山田有宇太 (@Grappler_yamayu) | Twitter

筆者はこのように、プレーを言語化する取り組みを現役時代から継続して行ってきた。

その一つの集大成として、中高生に向けたブログ

 

「読むサッカーの上達サイト~中学生、高校生へ向けて~」

 

reading-football.work

 

というサイトを運営している。

 

 

中高生に限らず、

 

・もっとサッカーを楽しみたい

・サッカーを深く知りたい

・選手がどんなことを考えているのか知りたい

・指導の参考にしたい

 

といった様々な方のご参考にもなればと思う。

 

 

もし興味があれば、こちらも覗いていただければ幸いだ。 

 

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