
子どものサッカーに関わっていると、時々、ふと立ち止まりたくなる瞬間があります。
「この子はなんでサッカーをしてるんだろう?」
「勝たせたいと思ってるのは、もしかして大人のほうじゃないか?」
そんな問いが、心の奥からじわりと湧いてくることがあるんです。
うまくなりたい。勝ちたい。目立ちたい。
その気持ちは、もちろん大切にしたい。
だけど、それだけで終わってしまうのなら、あまりにももったいない。
サッカーは、もっと深いものだと思っています。
そして、だからこそ、僕は「人との関係性を育てたい」と思いながらサッカーに関わってきました。
若い頃、バックパック一つで中南米を旅したことがあります。
スペイン語も英語もたいして話せない。
でも、広場でボールを蹴っている子どもたちに近づいていって、自然とその輪に入っていけた。
名前も、言葉も、うまく通じないのに。
ボール一つで、笑い合えて、チームになれて、友だちになれた。
そのとき僕は、本当に実感したんです。
サッカーは「技術」や「ルール」じゃない。まず「人とつながる力」なんだって。
日本に戻ってからも、知らない人と公園でボールを蹴るだけで、会話が生まれた。
気づけば一緒にご飯を食べていたり、次の週も集まっていたり。
サッカーがあったから、僕はずっと人とつながってこれた。
それって、きっと子どもたちにも必要な経験なんじゃないかと思うんです。
でも、実際の少年サッカーの現場では、勝利を最優先するあまりに、子どもたちの「らしさ」が置き去りにされてしまう場面も少なくありません。
勝つために怒られないプレーを選ぶようになる。
ミスを恐れて声が出せなくなる。
味方の失敗を責めてしまう。
それって、本当に育てたい姿なんだろうか?
サッカーは、人生そのものだと思っています。
うまくいく日もあれば、うまくいかない日もある。
思った通りに進む試合なんて、ひとつもない。
でも、仲間と協力して、声をかけ合って、時には譲り、時には託す。
失敗を笑い飛ばして、次に向かう。
そんなふうにして生きていくための「練習」なんじゃないかと思うんです。
だから僕は、子どもたちに「サッカーを教える」のではなく、
サッカーを通して「人との関わり方」を育てたいと思っています。
技術はもちろん大切。
でもその先にあるのは、「自分を表現する勇気」や「仲間を信じる心」、
「勝ち負けに一喜一憂しすぎず、自分らしくプレーすることの楽しさ」。
そんな力を育てるために、僕はこのスポーツを選んできたんだと思います。
サッカーをしていなかったら出会えなかった人が、人生に何人いただろう。
サッカーをしていなかったら気づけなかった自分の弱さや強さが、どれほどあっただろう。
サッカーが人生のすべてじゃない。
でも、人生の大切なことはサッカーが教えてくれた。
だから今は、ただ勝つだけじゃなく、
「人としてどう成長するか」を一緒に考えるサッカーをしていきたい。
子どもたちが将来、社会の中でぶつかる壁に対して、
「サッカーやっててよかった」って思えるような経験を、今ここで一緒に育てていけたらいいな。
- 作者:A・P・マリーニョ+笠野英弘
- 出版社:東邦出版
- 発売日: 2019年04月25日頃