近年、サッカーの育成年代が直面する課題は複雑化しています。
特に社会環境の変化による問題が深刻化しているように思います。
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「ボール遊び禁止」公園の増加
子どもたちが自由に体を動かし、外で遊べる場所が減少しています。これにより、基礎的な運動能力を培う機会が限定的になっています。以前のように外遊びで遊びの中で多様な動きが養われる機会の減少です。 -
「サッカーの習い事化」
サッカーが特定のスクールやクラブに依存する習い事として位置づけられ、そこに費用をかけられない家庭では、子どもたちが運動する機会自体が限られるという現実があります。私の周りのサッカーのコーチたちも子どもたちの基礎的な運動能能力の低下を危惧するコメントが増えてきたように思います。-
先日、このように話してくれたコーチの言葉が印象的でした。「サッカーしかやらないから、他の運動が上手くできない子が多い。中長期的にサッカーでの可能性も広がりにくい。だからサッカーの時間で多様な動きを経験させないといけない」
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こうした状況下で、現代の子どもたちは以下のような身体的な課題にも直面しています。
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運動機会の減少
外で自由に体を動かす経験が乏しいため、運動能力が低下している。 -
姿勢の崩れ
スマートフォンを見る時間の増加や生活習慣の影響で姿勢が悪化している。 -
可動性の低下
柔軟性や関節の可動域が狭まり、動きが制限されるケースが増えている。
一方で、サッカー界では「より強く!より速く!」といったフィジカル面の向上が年々求められるようになっています。このギャップを埋めるためには、クラブと家庭が一体となって対応していく必要があります。
サッカークラブの視点:課題解決に向けた取り組み
1. 基礎運動能力を重視する育成プログラムの導入
子どもたちが多様な動きを経験できる環境を提供する必要がある。
鬼ごっこ、体操、縄跳びといった遊びの中で、自然に運動能力を育む時間を取り入れているクラブが増えています。それは子どもを取り巻く環境の変化に対応する上で正しいアプローチだと思います。エコロジカルアプローチを取り入れるとよいのではと思います。
2. 姿勢改善の指導
姿勢を正すことはパフォーマンス向上の鍵です。簡単なストレッチや体幹トレーニングを習慣化し、子どもたちが「正しい姿勢」を意識できるようサポートすることも大切です。
3. 可動性向上プログラム
定期的に柔軟性を測定し、個別に適したストレッチや動きの改善プランを提供すること。これは将来のケガ予防にもつながります。
参考記事:エコロジカルアプローチと、ストリートサッカー。ブラジルからいい選手が量産される理由 - 大人になってから学ぶサッカーの本質とは
親の視点:家庭で意識すべきこと
1. 運動機会の確保
家庭でできる小さな工夫が大切です。たとえば、近所の公園で遊ぶ、買い物を徒歩で行う、家族で運動する時間を設けるなど、日常の中で意識的に体を動かす機会を増やしましょう。親子で一緒に遊ぶのが理想です。サッカーでもなんでもいろんな運動で遊ぶことが子どもの運動能力向上には重要です。
2. 姿勢を意識した生活習慣
家庭でも姿勢に配慮した環境を整えることが重要です。スマホやタブレットを悪い姿勢で見る時間が増えているので、食事時や勉強時も含めて姿勢を正すよう促し、必要であればデジタル機器の使用時間を制限しても良いと思います。
参考記事:親子でサッカーを楽しみながら上手くなる9つのヒント。遊びながら上手くなる練習5選 - 大人になってから学ぶサッカーの本質とは
社会の視点
サッカーの視点
ストリートサッカーなどの遊びサッカーを思う存分やって原石の芽が出てくるのであって、その中から伸びてきたダイヤの原石を磨くのがエリート教育。
でも、ストリートサッカーも遊びサッカーもない状態で、最初から教育して、それをまた教育しようとしているのが今の日本サッカーの育成年代の課題だと感じます。
育成サッカーが商業に偏りすぎて、ダイヤの原石が育まれる土壌がほとんどないという見方もあるのではないかと思います。
環境設計の視点
これはサッカーに限った話ではなく、子どもを取り巻く環境をどうすかという視点です。子どもが自由に遊べる環境をつくっていくことが重要だと考えます。
「ボール遊び禁止」の公園ではなく「ボール遊び推奨」の公園をデザインすること。そしてスポーツを通じたコミュニケーションが育まれる機会を社会が、大人たちがどうデザインするかが問われているように思います。
このあたりの書籍はとても参考になりました。いずれ詳しくご紹介したいと思っています👇️
- 作者:木下勇/寺田光成/松本暢子/三輪律江/吉永真理
- 出版社:鹿島出版会
- 発売日: 2023年06月13日
- 作者:泉山 塁威/宋 俊煥/大藪 善久/矢野 拓洋/林 匡宏/村上 早紀子
- 出版社:学芸出版社
- 発売日: 2023年12月23日頃
一緒に考えていきましょう
サッカーの育成年代においては、社会の変化と向き合いながら、子どもたちの成長を支える必要があります。
「自由な運動機会の創出」と「フィジカルの基礎づくりの機会」を両立させることが、子どもたちにとって大切なポイントだと感じています。
サッカーが単なる競技ではなく、人生を豊かにする手段として位置づけられるよう、我々大人が子どもたちの環境をアップデートしていきましょう。
- 作者:
- 出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2021年12月23日