日本野球界の偉大な指導者、野村克也さんの著書「指導者のエゴが才能をダメにする」の一部を抜粋してご紹介させていただきます。
日本のスポーツ指導文化の根源的な部分に言及されており、昔の価値観が未だにアップデートされていないということを改めて感じました。
日本の教育文化は未だに軍隊教育の名残がある
私が現役の頃、「指導」には暴力がつきものだった。当時は軍隊を経験した人たちが指導者となるケースが多かった。軍隊は生死を懸けた戦いの場所だ。とくに太平洋戦争を経験された人は、さぞかし苦労されたと思う。
そうしたなかでも特筆すべきことは、一般社会では例を見ないほどの「行き過ぎた上下関係」が、軍隊で行われていたことに尽きる。俗に言う「しごき」の類は、ここで体験したことを、戦後になって「教育」という名のもとに、一般社会に持ち込まれてしまったからに他ならない。
それは野球界とて例外ではなかった。南海時代の鶴岡監督も軍隊経験者だ。軍隊時代は、相当理不尽な仕打ちをされたこともあっただろう。 だが、それを野球の指導に持ち込んでしまったのだから、仕える側、つまり部下となる選手たちはたまったもんじゃない。 私は野球の世界で成功するしかない、という強烈なハングリー精神があったから、どうにか持ちこたえることができたが、そうでなければ「殴られるのが当たり前の世界にいて、いったい何が得られるというんだ?」と疑問を抱き、早々にユニフォームを脱いでいたかもしれない。
高校の部活動で未だに度々発生する行き過ぎた指導問題。
つい最近も、こんな事件がありました。
このような問題は、野村さんの著書にあるように、軍隊教育の名残があるように思えてならない。何十年も昔の価値観をベースに日本の教育は運用されているという事実を重く受け止める必要がある。
指導者が槍玉に上げられますが、その指導者を生み出した価値観、学校教育が古いままになっていることが大きな問題なのではないでしょうか。
素晴らしい教育や指導が、未だにマイノリティのままというのは、日本という国が教育というものを蔑ろにしてきたということでもあるのではないでしょうか。