トップダウンではなく選手主導のボトムアップで結果を出して注目された堀越高校サッカー部。
取材された加部さんの著書「毎日の部活が高校生活一番の宝物」 堀越高校サッカー部のボトムアップ物語をご紹介させてください。
著書の一部を引用させていただいて、選手主導にすることで生まれる懸念について少し考えてみたいと思います。
選手主導の懸念
「選手主導ということで、保護者の方々からは様々な指摘が出てきていました。選手がメンバーを決めれば、当然主観が入るかもしれないし、当事者の人間関係も影響してくる。選ばれない側からは、基準が曖昧だという声もありました。そこで我々スタッフは改めてサッカー部の理念を明確に打ち出して行こうという話をしました。我々はこういう目的で活動をしている。学校の中ではどういう立ち位置で、将来どんなことを目指していくのか。サッカーをするだけではなく、スポーツマンとして活躍し社会に貢献できる人間作りも視野に入れていく。会社での経営方針に近いものを整理して明らかにした。その上で今度は監督が考えるプレーモデルを選手たちに提案することになりました。」
サッカーというチームスポーツにおいて、選手主導でボトムアップを取り入れるというと、素晴らしい!これぞ育成の本質!とポジティブに捉える方も多くいて、それはその通りではあるのですが、実際にやるとなると難しい問題がいくつかあります。
私もサッカーコーチになりたての頃、自由にやらせようと子供たちに対話を促し、そこから自分達のやりたいようにプレーさせるというのをやっていました。
しかし、自由にやるとはどういうことか?という問いに直面し、子供たちとそこから向き合い、自分達の中から出てくるものをどうやってプレーで表現するか?という難問にも向き合わなければならないことに気がつくわけです。
その中で、未成熟な子供たちが主体でつくっていくということは、チームスポーツの中で大切なものを蔑ろにしてしまったり、見落としてしまうことは当然出てくるわけです。
ここは上手く大人がサポートしなければならないところですし、ボトムアップが機能するための構造を設計してあげる必要がでてきます。どのようにそれを設計すれば良いのか、というのも正解があるわけではないのでとても難しいのですが、堀越高校がこの課題に向き合い結果を出してきた「プレーモデルの提示」はとても興味深いです。
プレーモデルとは何か
>表現したいサッカーがあり、それを実現するためのトレーニングがある。こういうトレーニングをしてきたから、こんな試合になるというプロセス…
↑著書より引用
プレーモデルに関してはこちらの本も非常に参考になります👇
「キャプテンが変わると、そのキャプテンの好きなサッカーに染まっていく。でも毎年あまりにコロコロ変わると選手たちが戸惑います。やはり基準となるものがあり、それを毎年ブラッシュアップしていく方が、選手たちにも判り易いだろうと考えたんです」
プレーモデルの提示は、想像以上に円滑な活動を促進した。プレーモデルという完成形がイメージとして共有されているから、必然的に課題も明確になりトレーニングのメニューも定まり易くなった。 「まず表現したいサッカーがあり、それを実現するためのトレーニングがある。こういうトレーニングをしてきたから、こんな試合になるというプロセスをしっかり作っていきたかったんです。」
ここをしっかりと作りこむことが成功の鍵になる気がしました。
指導者の的確な指示を凌駕する可能性がある
選手たちに任せ切ることでパフォーマンスを深め切れない可能性もある。しかし彼らが共有し蓄積して来た経験値は、指導者が発する「的確な」指示を凌駕することもある…
ボトムアップの魅力ってこれに尽きると思うんです。
自分たちで気づき、築く面白さを体感することで、大きく成長できるのがポイントだと思います。
これを機能させるために、プレーモデルを構築し、指導者やスタッフ、保護者が適切なサポートをしていく必要があります。
ボトムアップにおいて参考になる書籍はいくつかありますので、あわせてこちらの本もぜひ読んでみてください。
子どもの「自立」を育てるスポーツコーチング ボトムアップ理論5ステップ
- 作者:畑 喜美夫/All Days Sports
- 出版社:池田書店
- 発売日: 2018年07月10日頃