人間は築き上げた世界を壊したくないものだ。人間は本能的に不安定状態を嫌う。それは身体保全の自然な働きでもあるけれど、その働きは同時に人間の向上という道のフタにもなってしまう。だから、そういう思いからも自由になる必要がある。
武術を主とした身体技法の研究家である甲野 善紀氏の言葉だ。
私は既存の常識やルールというものに縛られてはいけないのだと感じている。
時代は常に変化している。働き方も、生き方も多様化している。
世の中のあらゆる常識がアップデートしているのを感じる。
つまり、我々は正解がない時代に生きているのだ。
サッカーにおいても同様だ。
世界のトップは科学技術を駆使して、よりロジカルに進化を遂げ、これまでの考え方は通用しなくなっている。
しかし、私は必ずしも世界のトレンドに追従するだけが良いとは思わない。
日本サッカーは独自に進化を遂げることができるのではないかとも思う。
フランス人やベルギー人、ブラジル人に最適なスタイルがあるように日本人にも最適なスタイルが必ずあるはずだ。
そしてそのスタイルで世界と渡り合う道を探っていく方が面白いと思う。
冒頭にご紹介した甲野 善紀氏の言葉、古武術の考え方を読んでいるとサッカーに活かせることが多分にあるということに気がつく。
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甲野氏の著書の一部をご紹介したい。
不利な状況が身体に革命を起こす
常識とは違う身体の使い方をすれば、「不利と思われる状況が実はそうじゃない」 ということが実感としてわかります。
以前、J1のサッカーチームに指導を頼まれて出かけたことがあるんですが、そのとき、スター級の選手から補欠の選手まで8人ほどの選手たちと競り合いをやったんです。
ところが誰一人として私を止められなかった。
常識のフレームワークにとらわれない身体の使い方をすれば、プロの有名なサッカー選手を相手にして、一見、相手に有利、こちらに不利と思われる状況でも相手を制することができるということです。
逆に言えば、それは彼らがプロとはいえ常識的なトレーニング以上のことをしていないという、ひとつの証明にもなっているんだと思います。
専門家だと、不利な状況に対して、すぐに「これは不利なことなんだ。もうできない」となってしまうんですが、そういう単純な反応は常識の世界の中にどっぷり漬かっているため、不利な状態になったらもう何もできないということを、条件反射的に学習してしまっているんですね。ですから、不利な状況を突破する動きができる身体になるには、固定観念に縛られない発想を育てる必要があるわけです。
技を本当に劇的に進化させようと思えば、相手側が圧倒的に有利な体勢でもそこから、相手をくずしたり、かわしたりという動きを工夫することが必要です。
不利な状況をいろいろな角度から検討して、根本的な発想の転換をする必要があるのです。
「人間は環境に適応する生き物ですから、甘やかされた環境では質の向上ははかれません。不利で不自由な条件設定をするということは、きびしい環境に身体を置くということです。
そういう環境に身体を適応させることで、はじめて常識を破る身体を出現させることが可能になるんだと思います。
参考書籍:賢い身体 バカな身体
常識を破る身体を作るには、頭の中を変える
世界からも学ぶべきことはもちろんたくさんあるけれど、同時に本質はどこにあるのかを考え続けなければならないのだと思う。
甲野氏の言うように、固定概念に捉われてはいけない。
正解はない。唯一できることは自分たちで答えをつくることなのだ。
正解するための発想から、答えを生み出すための発想へ変換する必要があるのだと思う。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…
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