麹町中学校の工藤勇一さんと、桜ヶ丘中学校の西郷孝彦さんの対談本がとてもよかったのでご紹介します。
世田谷区立桜丘中学校の西郷孝彦氏
校則全廃、タブレットの持ち込み許可、チャイムの廃止……真のインクルーシブ教育のためにあらゆる問い直しと開放を行ってきた。
千代田区立麹町中学校の工藤勇一氏
宿題なし、定期テストなし、固定担任制の廃止……既存の学校教育の「常識」を覆してきた。
既存の学校教育の常識を覆してきたお二人の対談。
様々な問題を抱える現在の教育を、これからどのように変えていけば良いのか、考えさせられました。
そして、この教育が変われば、私がテーマにしているサッカーの文化もきっとよくなると思いました。
本書の一部を抜粋してご紹介します。
教えすぎると自律できなくなる
先生が手をかけ過ぎてしまうと、一時的に学力が上がったとしても、自律できなくなってしまうんです。自分でやることを見失って、受け身になってしまうから。そういう子どもは必ず人の文句を言うようになる。先生の教え方が悪い、環境が悪い、学校が悪いって。そして、将来、世の中に出てからも人のせいにしかしないから不幸になってしまう…
少年サッカーの現場でも、子どもに手をかけ過ぎてしまって、強いてしまった結果、自分でプレーを判断できないという問題が起こっています。試合中、コーチの顔色を伺いながら、指示通り忠実にプレーするために一生懸命やる子どもたち、今でもたくさんいます。
教えすぎて、自律できないという問題はサッカーだけではなく、あらゆるスポーツでも起こっています。つまりこれは日本の教育の問題だということです。
ここが変われば、指導も変わるはずです。本当は指導者が気がついて、変えなければいけない話ですが、なかなかそうはいかないのが現状です。
信じて向き合うこと
僕は、東京に来た当初、学校の環境を憂いていたわけです。つまり、人のせいにしていた。でも、とにかく子どもたちときちんと付き合おうと思って一生懸命やっているうちに、子どもたちが心を開いてくれた。そして、そういう僕の姿をみて、ほかの教員たちもだんだん信頼してくれるようになりました。そうなると、徐々に学校全体が変わって見えてくるんです。そこで気がつきました。結局、自分がやればいいだけの問題だって。上杉鷹山が「成らぬは人の為さぬなりけり」と言ったように、憂いてないで、自分がアクションを起こせばいいんだって。そこから自分の教員としての意識も大きく変わったような気がします。
教育が一気に変わることはないと思います。
国がこのままじゃダメだから、教育を変えなければといって変わるとは思えない。
私たちがおかしいことに気がついて、少しづつでも変えていくきっかけは作れると思います。
発信することは誰でもできる時代になりました。
このままではいけない。変えなければ。と思う人が増えれば少しづつ変わっていくと思います。
できることから少しづつ。

- 作者:工藤勇一/青砥瑞人
- 出版社:SBクリエイティブ
- 発売日: 2021年05月06日頃