まず自分を1番大切に扱い、家族、友人、日常を愛する感情豊かな愛すべきイタリア人の話
僕は2016年1月から2017年6月までの1年半、イタリアのUmbria州に位置するペルージャという街で過ごしました。
ペルージャはイタリアのちょうど真ん中に位置する街です。
北にはフィレンツェ、南にはローマと大都会で観光名所の街に挟まれていながら、とても落ち着いた静かで古い田舎街です。
僕はこの1年半でイタリアの文化とイタリア人が大好きになった。
イタリアの素晴らしい魅力を感じる中で、現代の日本に欠けているものが見えてきたのでそれを伝えられたらと思います。
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自分の人生という舞台で主役を演じること
イタリア人は粋である。
どういうことかというと、みんなが自分の人生という舞台で主役を演じているのです。 外で夕食を食べるときはシャツにジャケット。
サンダルなんて外で履けませんでした。
家の近くのピザ屋でビックリした出来事がありました。
50代くらいのカッコよくキメたおじさんが、20代くらいの4人組の女性グループの席に近づき、「やあ!調子はどうだい?一人で食べるピッツァより、君たちと食べるピッツァのほうが美味しいから僕もまぜてもらえない?」 という感じで声をかけあっさりと和に入り、冗談を言ってその場の皆を楽しませながら食事をしたのです。
自分にすごく自信があって人生を最高に楽しんでいると感じました。
立場がどうとか、年齢がどうだとか、そんな細かいことに囚われている日本で育った僕には凄く衝撃的でした。
このおじさんは「自分でいること、ありのままを自然に出して生きたほうが面白いぞ!」 と僕に語りかけているようでした。
イタリア人が粋なのはプライベートだけではありません。
仕事中でもそうです。
ゴミ収集のおじさんがサングラスをかけて音楽聴きながら仕事してたり、バスの運転手はサングラスをかけ、ピザ片手に、音楽かけながら運転してたりということもあります。
俺イケてるだろ!って雰囲気を醸し出しているのです。
スーパーでレジに並んでいる間に「店員がちょっとコーヒー買ってくるから待っててね!」と言ってコーヒーを買いに行って、コーヒー飲みながらレジに戻ってきたり。
日本で言う「ありがとうございました!」の代わりがウインクだったり。
このゆるさというか、人と人との関係、他人の行動、選択、自由をお互いがリスペクトしている感覚。
「〜しなきゃいけない」は存在しなくて、個人個人の「こうしたい!こうしよう!」があるのです。
そしてそれを互いにリスペクトしあっている。
それが小さい頃から普通の国で育てば、そういう大人になるのは当然です。
自分の仕事をすればなんでもオッケー!というスタイルなんです。
仕事でも日常生活でも「こうじゃなきゃダメ」はダサい。
ましてそれを他人に強要するのはもっとダサい。
「こうしよう」が各個人に存在して、それを選んでも選ばなくてもいいのだ。
そして一人の「こうしよう」が他の人の「なら俺はこうしよう」を生んでその場で新たな物語が出来てしまう。
「マニュアル」は存在しない。
何をしていても自分である事を彼らは忘れないのです。
自分である事が彼らの誇りなのです。
おしゃべり大好きイタリア人
イタリア人はとにかくおしゃべりが大好き。
朝のカフェ、道端、電車、バス、レストラン、家… どこでも隙があれば彼らのおしゃべりが始まる。
よくそんなに話題が見つかるなと感心するほどです。
話の内容は、お互いの調子を聞くことからはじまり、飼っている犬の話、仕事の話、恋人の話、サッカーでお互いが応援しているチームの話などあげればキリがない。
大きな声で、沢山笑いながら会話する。
どの世代も楽しそうに生き生きしているように僕の目には映った。
バスの運転手も最高です。
学校に行く途中、車内前方が騒がしかったので見てみると、運転手がお客と前日行われたナポリ対インテルの試合の話しで盛り上がっていました。
戦術がどうだこうだ、交代枠が良くなかった、相手の良さを消せてなかったなどと盛り上がっていたのです。
それだけならいいのですが、運転手が話に夢中になったせいで道を間違えたのです。
そしたらおばちゃんが「道が違うわよ!」 気づいた運転手はバスを止め後ろの車に向かい大声で「ごめん!道間違えたからバックしてー!」と一言。
そして2台の車がバックしてくれて、何事もなかったようにお客と話しを続けたのです。
もちろん乗客に謝りましたが、それで怒っている乗客は誰一人としていなかったのです。
笑っていたり、またサッカーの話かよと呆れていたくらいで、ぶつぶつ文句を言ってる乗客もいたけれど、それだけだったのです。
別の日は運転手のバスに彼女が乗ってきて、話しながら後ろのドアを開けっぱなしで運転。
おばちゃんが「ドア開いてるわよ!」と
すると運転手は「ごめんごめん!」と言ってドアを閉め、その後は何事もなかったかのように普通に運転。
おばちゃんはぶつぶつ文句言ってたけれど、問題にならないのがイタリア。
このような出来事は日常よくあること。
すぐ言い合いになるけど失敗にすごく寛容です。
ちなみにこのおばちゃんが運転手に文句を言っていたとしたら、運転手もなにかおばちゃんに言い返していたと思います。
それがイタリア人なのです。
僕たちはロボットではないので間違えて当然、イタリア人はそれを皆理解しているように感じます。
たまにやり過ぎだと思うこともあるのだけれど…。
日本はミスは許さない、失敗はいけないものだとする空気感が強い。それゆえ人間らしさが奪われてしまっているように感じます。
イタリアでは嫌々挨拶をする人なんていないし、挨拶しなさい!って子供に怒ってる人も見たことがありません。
それは楽しそうに挨拶している大人を子供が見て真似したくなるからなのだと思います。
そして人はそれぞれ独自の考え方があるという前提があってコミュニケーションが行われているのです。
相手の気持ち、何を考えてるかを勝手にこっちが決めつけて行動するものじゃない、それを引き出すため、伝えるために言葉、会話が存在するんだよ!と。
自分の意見は必ず主張する。
それで分かり合えなければ、それは仕方がない。
彼らは自分を失うなんてことは絶対にしません。
喋る能力、伝える能力は日本人に一番欠けているのではないかと感じます。
そして実はとても大切なことなのではないかと思うのです。
自分とその周りをなにより大切にする
イタリア人はまず自分、次に家族、恋人、友人を大切にする。
そんなイタリア人は自分が本当に嫌なことは絶対にしません。
嫌なことはやらないといっても、自分がやりたいことをやる時に出てくる嫌だけどしなくてはいけないことはする。
自分で意味付けできないものは絶対にしない。
周りの目があるからやろうという感覚はありません。
いつでも判断基準は自分のなかにあるイタリア人。
そして、自分に近しい人に最大限の愛を送るのが僕の知るイタリア人です。
ちょっと歴史の話をすると、イタリアはローマ時代から内乱が多く、国内にいくつかのグループが存在していました。
その後も国の方針が想像以上に右往左往、戦争でも奪っては奪われて、勝っては負けて、、、の歴史。
このような国のアイデンティティから外の人、自分の知らない人には警戒心を自然と持つようになったのでしょう。
それがイタリアのサッカー文化を育んだ一つの要因でもあるのだと思います。
彼らは自分の街のクラブを愛し応援します。
サッカーでの街ごとの争いはかなり白熱します。
勝てばより優れた街となり、負ければ劣った街となるのです。
まさに街の威信をかけた代理戦争。
彼らにとって自分の街は特別。
むしろ、国より自分の街を大切にすると言っても大袈裟ではない気がします。
2016-17シーズンのヨーロッパチャンピオンズリーグの決勝がレアルマドリー対ユベントスだったのは記憶に新しいですが、ユベントスはトリノ以外のイタリア人に嫌われているので、トリノのイタリア人もしくは、ユベントスのファン以外はレアルの優勝を喜んだらしい。 という具合に自分の周りに愛情を注ぐのです。
大事な事があって電話しても、今彼女と一緒だから!と言って電話を切ったり、頼まれごとがあってもお母さんの誕生日だから無理!や彼女とデートだから無理!と普通に断る。
日本人にもこの「No!」と言える力が必要だと感じます。
人前であろうが家族とキスの挨拶を交わし、ハグをする。
これはもちろん友人間でも行われます。
チームメイトが練習終わりに、「マンマに電話するから待ってて!」「チャオ マンマ!練習終わった!今帰るね!愛してるよ」 コーチが練習終わりに彼女へのボイスメッセージで「チャオ アモーレ!今日君に会えるのがたまらなく嬉しいよ!愛してる キスを送るよ!」こんな感じでなのです。
以前友達が元彼氏と喧嘩した時には、数日後家に薔薇の花と手紙が送られてきたと言っていました。
自分の感情、気持ちは必ず伝える。こういうイタリア人を見て人としてのあり方、人間力で負けてると感じました。
家族を人前で堂々と大切にするイタリア人と家族を堂々と大切にするのを恥ずかしがる日本人。
もう一度自分の大切なもの、本当の自分を見直してはどうでしょうか。
イタリア人の輪に入るためには自分から行かないといけません。
仲間だと示さなきゃいけない。
しかし、一度輪に入ると家族同然に愛情を注いでくれる。
そんなどこまでも粋なイタリア人、 イタリアが僕は大好きになりました。
僕がイタリアで見つけた幸せのカケラ。
日本人が幸せに生きるためのヒントがイタリアにはあるのかもしれません。
ライタープロフィール
佐藤 靖晟 21歳
高校卒業後イタリアに渡り1シーズン半、今年からスペインに移籍してプレー。
サッカーの本質を追求する旅はつづく…
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